ミーティア越境編
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「…………」
「………………」
小生の生家でもある屋敷。その大広間に、里の大人達がずらりと並んでいる。昨夜の放火についての会合為だ。
しかし、その会合に紫音が来ない。目撃者であり、タンジーが放火魔だと喧伝した事もあり、紫音が来なければ始まらないのだが。
「……件の娘はどうした?」
クラベル先生はいる。紫音と同室にしたカラマもいる。タンジーも……、小生の父に近い場所で既に腰を落ち着かせている。
……何故タンジーが普通に座っているのだろうか。昨夜は確かに捕らえられて連行された。小生含め、あの場にいた全員それを見送ったのだが……。それが、拘束されもせず、さも当然と言った様子だ。
そんなタンジーが、ふぅ、と息を吐きながら首を傾げた。
「迷っているのやも……」
「おっ……、恐れながら! 紫音は……、あの者は、指定の時間よりも先に案内役が部屋から連れ出しました!!」
「まあ、カラマ! それはつまり、彼女は案内役を撒いて逃げたと言っているようなものですわ!! そうなのですか? 貴女、あの娘に随分肩入れしているものね?」
「そ、そんなつもりは……!!」
「カラマ、落ち着きなさい。ペースに乗せられていますよ」
紫音へ手助けをするつもりが、タンジーの悪い手癖に絡め取られたカラマが一撃必殺を受けた顔で俯いた。
部屋の空気感は、タンジーに同情的。そんな中で下手な事を言えば、タンジーの流れに持って行かれてしまう。発言は慎重にするべきだ。
「……何か聞こえますね?」
その時、父に寄り添っていた母がのんびりと首を傾げた。
何が、と誰かが問うより早く、ざわめく部屋を視線で黙らせた父が耳を澄ませる。……静かになったからよく分かる。少し離れた場所で、軽い足音があちらこちらと走り回っている音が聞こえた。
「……あらあら。本当に迷っている様子ね」
「…………!」
待つ事数分。扉を開け閉めする音が近付いてきた。その後、すぐに大広間の扉が開け放たれる。
「こぉこだぁー! よし間に合った!!」
紫音が腕にラクシアを抱いて……、何故か頭に木屑が少々乗った状態で姿を現した。ぐるりと部屋を見渡すと、クラベル先生と並んで座る小生を見付けて満面の笑みを浮かべている。
「間に合っておらんぞ」
「いやぁ、ごめんなさいね!!」
「紫音、お前っ……。案内役はどうした!? 指定の時間よりも早く出ておいて何故迷っているんだ!!」
「それなんですけど……。ここで待機しててくださいって小部屋に案内されまして。何と! そのまま忘れ去られたみたいで」
「忘れ去られた……。なるほど、それで?」
「てっきり近くの部屋で待機兼逃走防止なのかなって思ったからしばらく大人しくしてたんですけど。それにしたって人が集まる様子も無いなー、おかしいなーって思って。部屋を出ようとしたら建付が悪いのか開かないしで、扉壊して出て来ちゃいましたごめんなさい!!」
「まあ大変。それで木屑が髪の毛に付いているのね」
「え。……わぁホントだ」
こっちへいらっしゃい、と手招きする母に、素直に従う紫音を横目に、父が再び部屋にいる者達を睥睨した。
「カラマ、そこな娘を案内した者はこの中にいるか」
「……は。タンジー様の付き人をしている者でした」
父の問いに、カラマはタンジーの傍らに控える付き人に視線を向ける。ざっ、と音が聞こえる様な勢いで、全員の視線がそちらに向けられた。
意図せず話題に上った付き人が戦く様子を気にした風も無く、タンジーは穏やかな笑みを浮かべたまま。
「あらあら。案内先を間違えてしまったのね」
「そうっ……、です……」
「誰にだって間違いはありますからね!」
うんうん、と頷く紫音に、付き人が安堵のせいかため息を吐いた。
「……でも、わざわざ案内してもらわなくても、カラマさんと一緒に行くから心配無かったんですけどねー。カラマさんもそう言ってたのに、どうして連れ出されたんでしょう」
「……そうだ。案内せよと指示を受けたと言って頑として譲らなかった。校長はハッサク様が、紫音はわたしがこの部屋に連れてくる事になっていたと言うのに」
「……タンジーに付いているあなた。……誰に指示されたの?」
紫音の髪の毛を調えてやった母が、全員の視線に晒されたまま動けなくなっている付き人に微笑みかける。氷を溶かすその笑みに、その者は震えながら皆の前に飛び出してきた。
「申し訳ございませんっ!!」
「ふふふ。私は誰の指示なのかと聞いているの。謝罪は結構です」
「もっ……、申し訳……!!」
「ふぅ……、仕方がありません。誰か、その子を連れて行きなさい」
「た、助けてください……」
タンジー様。声にならない助けを求めながら、付き人は部屋の外へ連行された。その間、自分の付き人が疑われていると言うのに、タンジーは無言のまま俯いている。姿が見えなくなってから、ようやく顔を上げたタンジーの目尻には涙が反射していた。
「申し訳ございません……。わたくしの監督不行届ですわ……」
涙を浮かべたタンジーに、父は鷹揚に頷く。それに対して、小生は頬の内側を噛み切りたい程の悔しさを感じていた。
実の子である小生よりも、里に留まり続けたタンジーの方が信もある。何の手札も無く「タンジーからの指示だろう事は明白なのでは」と異を唱えた所で、証拠が何一つ無いのだ。
「……今の人、タンジー様さんを見ながら助けてくださいって言ってませんでした?」
「もちろん、助けてやりたいのは山々です……。しかし、わたくしに出来るのは精々罰を軽くして欲しいと懇願するくらいですもの……。あの子にも悪いとは思っていますわ」
「うわぁ……」
現に、手を挙げて疑問を呈した紫音の言葉を受けて尚、タンジーは目の前で堂々と尻尾切りをやって見せた。思わず顔をしかめた小生の隣で、クラベル先生も俯いた。
「付き人の管理責任についての話は後だ。どちらにせよ、放火を疑われている者から話を聞かぬまま処罰を決める訳にはいかない。不在であったならば、捜索するまでの話。到着すればそれで今は良しとする。……娘よ」
「紫音です」
「……紫音。中央に座れ」
「それでは失礼しますー」
大広間の中央に一つ置かれた座布団。言われるがまま素直に腰を下ろした紫音は、父と正面から向き合う形になる。
「さて。娘よ」
「紫音です」
「……んんっ。紫音、お前には昨夜屋敷に放火した疑いが掛けられている。何か申開きはあるか?」
「無いです」
「罪を認めますのね!」
緩く首を振った紫音の返答に、間髪入れずタンジーが立ち上がる。震える手で指を刺されても、紫音は動じる様子は無い。
「私はやってないので。……タンジー様さんに聞く事ですよ、それ」
「……やっていないと断言する理由を問おう」
「そもそも私は、ハッサクさんに手紙を届ける為にパルデアから来ました。お屋敷を燃やす事は仕事内容に入ってません」
「パルデアから! 遠い所ご苦労様。……けれど、どうして配達を頼まなかったのです?」
「それは、紫音さんに配達を依頼した私がお答えしても?」
父と母から交互に問われ。敵意を隠さない視線に晒されている紫音を見かねて、クラベル先生が静かに手を挙げた。
「聞かせてもらおう」
「では失礼して。……半月程前に、ハッサク先生からお手紙が届きました。突然の辞職に混乱する生徒を案じる事も無く、淡々と無事を報せるだけの短いお手紙です。ハッサク先生からの手紙にしてはおかしいと思いました。宛先は手書き、しかし本文はパソコンで出力された物だったので余計に」
「中身がすり替えられていますですね。小生は一人の時間を見計らい、全て手書きで認めましたから」
「やはりそうでしたか……。手紙を受け取ったからには、返事を出さなくてはいけません。大切な手紙ですから、確実にハッサク先生にお渡ししたい。……そこで、お一人でジョウト地方へ突進しようとしていた紫音さんにロックオンしたのです」
「一人でジョウトへ……?」
話の流れを遮るつもりは毛頭無かったのだが、聞こえた言葉に驚きが勝った小生がクラベル先生を見やる。
「ジニア先生から助けの要請がありました。ハッサク先生を探す為に、本当に一人で飛び出してしまうと。いよいよ行方不明になってしまいかねないので、お仕事を任せて所在をはっきりさせる事にしたのです」
「ちなみに、真っ先にジョウトを選んだ理由はドラゴンジムリーダーとカラマさんの服が似てたからです! 一発で正解を引き当てられてよかったです!」
「イブキか。なるほど、良い助けをしたらしい。火を放つ理由は確かに無いな」
クラベル先生の話に納得した父が頷いた。完全に紫音を疑っていた場の空気も、やんわりと変わり始めている。
その事を察したのだろう。タンジーが手を変えてきた。
「侵入者だと勘違いして、わたくしがバトルをしましたの。ほのお技を使う際の掟を知らぬのですもの。燃やしてしまったとしてもおかしくありませんわ!」
「え。私の手持ちポケモン、誰もほのお技覚えてませんけど」
「ポケモンは入れ替えられますもの! 今の手持ちポケモンなんて証拠になりません」
「一理ある。反証はあるか?」
「……地方を跨ぐポケモンは、健康診断とか予防接種を受けないといけないって習ったんですけど。その為の申請メール見せれば良いですか?」
「そんなルール! 破ってしまえば無いと同じです!!」
「タンジー。今はその子の反証を聞く時です。里の中で起きた事柄ですもの。外の子にも公平で無くてはいけません」
「奥様っ……」
「用意が出来たら見せよ」
「ロトム、カイン先生にお願いする時に送ったメールを出してくれる?」
「ロトー!」
紫音の懐から、スマホロトムが滑り出た。……見れば、小生が買い与えた物よりも一回り大きくなっている。
「……スマホが替わっている……?」
「紫音さんが一時的に所在不明になった一因です。スマホを海に落としてしまったそうで……。連絡先の交換をうっかり忘れてしまい、誰の連絡先も入っていないまっさらな状態になったのです」
「しかし、スマホに入っているロトムによる浮力が……」
「何が起きたかは、紫音さんが話してくれるはずですよ。今は、あちらに集中しましょう」
クラベル先生に促されて、小生は疑問を持ちながらも話題の中心へと意識を戻した。……そこでは、紫音が何故か床に横たわっていた。……十数秒目を離した隙に何が!?
「ちょっと待ってください。足が痺れて……、回復まで三十秒くらい……」
「あら大変」
「ろ、ロトム……。先に行ってて……。画面見せてあげて……」
「ロトト……。ロト!!」
「こうしてポケモンと協力出来る様になるとは……。いやはや科学の力とは素晴らしいものだ」
ロトムに先行させた紫音が、どうにか起き上がろうと蠢いている。上半身は問題無いのだろうが、膝から下の感覚が無いらしい。膝を立てようとして手で位置を調整していた。
「……こほんっ。……紫音、大丈夫ですか?」
「ハッサクさん……! 足がゴムみたいになってます!!」
「肩を貸しましょう。そのまま……、頑張れ頑張れ」
「ぬふぁ〜! 紫音が立った!!」
「はい、立ちましたですね。次は歩きますよ」
肩を貸して、腰に手を回す。痺れのせいで歩行もままならない紫音の歩調に合わせて、小生は己の両親の前に進み出た。
「はい、着きましたよ」
「た、辿り着いた……! ありがとうございます!!」
「……このまま横に控えても?」
「ハッサク様はこの問題の関係者ではありません。お掛けくださいましね」
父に問い掛けたと言うのに、タンジーが首を振る。それだけに留まらず、タンジーは小生が支える紫音を半ば無理やり歩かせた。
「いたた……!」
「わたくしも拝見しましたわ。ほのお技を覚えていないのは確か。ですが、スマホロトムの力を借りれば、忘れオヤジの力を借りずとも技を忘れさせる事が出来ます。このジヘッド!! ほのお技を覚えられます!!」
紫音を突き出したタンジーは高らかに宣言した。
ジヘッド。小生がプレゼントしたモノズが進化した様だ。
強さと共に、扱いの難しさもレベルアップするジヘッド。ドラゴンタイプのポケモン故に、ジョウト地方から、里から出た事が無い者もその存在を知っている。
小生がプレゼントしたポケモンが、紫音の足枷になる日が来るとは予想だにしなかった。
「……ジヘッド。覚えられるのは、ほのおの牙とにほんばれだな」
「ジヘッドー。呼ばれてるよ、おいで」
「ジァ?」
「へァ」
双頭のドラゴンポケモンが、皆の前に出てきた。見知らぬ空気、緊張感で張り詰めた雰囲気に、周囲を探っていたジヘッドの頭が仲良く同時に左右に振れて……、思い切りぶつかった。
「じぅ……」
「へぅ……」
「ジヘッドー!!」
慌てて駆け寄る紫音に笑顔で応える様子から、大きな事故では無いようだ。ホッと安堵した小生を他所に、紫音は疑われているジヘッドを抱き締める。
「この子、少し前に口の中を火傷したせいで、ほのおの牙使えないんです」
「何を言い出すかと思えば……」
「それに、ほのおの牙は直接攻撃です」
「ですが、その牙を建物に突き立てれば燃えるは道理です」
「それだと、私がジヘッドに建物燃やすように指示をして、それが成功するまでタンジー様さんぼーっと見てた事になりますけど。いいんですかそれで」
「あまりに予想外の指示でしたもの。驚いて……」
「……屋敷全体に火が回るまで呆然としていたと?」
「そうですっ……!」
紫音とタンジーの応酬をしばらく黙って見守っていた父が、ゆっくりと手を挙げた。その行動に、タンジーが慌てて口を噤む。
紫音やクラベル先生は、そのハンドサインが分からない。誰が言葉を発していようが、"これより父が発言する故に黙れ"という合図なのだ。
父が投げ掛けた疑問に、タンジーは手助けを受けたとばかりに頷く。しかし、その答えを聞くやいなや、父は大きく息を吸い込んだ。
「嘘を申すな!!!」
大広間の空気が震える。威嚇が込められた怒声に、その場にいたほぼ里の者がすくみ上がった。
正面から怒声を浴びたタンジーは言わずもがな。その影に隠れて耳を押さえている紫音も、恐る恐る様子を伺っている。
「ルギア騒ぎの最中、空に昇る竜巻を見たのだが。炎を巻いて空へと昇っていく竜巻だ。……ほのおの牙ではその竜巻は作れぬ。ならば、あの竜巻は何だと言うのだ! その場にいたのだろう。答えよ、タンジー!!」
小生も目撃した空へ昇る炎の竜巻。あれを父も目撃したのだ。
件の現象を発生させるのなら、使用されたのはほのおの牙では無いという証明に他ならない。紫音の他の手持ちは、水タイプや氷タイプだ。ルギアは飛行・エスパータイプだが、海を棲家にするポケモンが覚えられるほのお技は"にほんばれ"が精々だろう。
つまり、放火は紫音の仕業では無いと父は言っているのだ。
「あ、あれは……、あれはっ……」
「答えられんか。お前の小さき物事を大にする性は把握していたが。今回の件は明確な捏造であり欺瞞だ。分かっておろうな!!」
「わたっ、わたくしは……」
「タンジー様さんの代わりに私がお答えしましょう! 竜巻の上手なコントロールを覚えておくと、火炎放射くらいなら巻き取ってお返ししたり出来るので便利ですよ! 特殊攻撃技なら、水や氷でもできると思います!!」
「ほぉ。実演して見せよ、と言ったら?」
「ドラゴンタイプ相手だと嫌がる子なので、タイプは変わるけど私の手持ちポケモン二匹でよければ!」
「良かろう。中央を更に広く」
父がそう言うと、元々空いていた大広間の中央が更に広くなった。
その中心に立った紫音は、二つのモンスターボールを手に持っている。
「おいで! カロン、ユミョン!!」
ポフン、と軽快な音と共に、カロンとモスノウのユミョンが姿を現した。どちらもジョウト地方には馴染みの無いポケモンだ。ドラゴンポケモンではないにせよ、ほほぉ、と興味深い視線が注がれる。
「ユミョン、吹雪! カロンはその後に竜巻!!」
「ススァ……!」
「ぽぉお」
空気が一気に冷え込んだ。己目掛けて吹き荒ぶ風雪を前に、カロンは軽く尾を振った直後、強く振り抜いた尾で竜巻を作り出す。
吹雪とぶつかった竜巻が、風を巻き込んで更に大きくなっていく。上が無い室内であるが故に、その威力を逃す場所が無いのだ。
「ユミョン、凍える風。カロンは冷凍ビームお願い。凍らせるつもりで慎重にね!!」
最早、竜巻とは言えない威力になったそれを前に慌てる事も無く、紫音は追加で指示を出した。
指示を受けたポケモンが、氷タイプの技を竜巻にぶつけるとどうだろうか。あれほど暴れていた竜巻が、床と天井を繋ぐ巨大な氷柱に姿を変えたのだ。
「綺麗に出来ましたぁ〜! ……こほんっ。竜巻のパワーを閉じ込めた事になってるので、解放するのはここに人がいなくなってからにします!」
「……なるほど。これは天井さえ無ければ空に昇る」
キンッ、と空気を凍らせる氷柱に手を触れて、父がしみじみと呟いた。
「……紫音だったか。お前は無罪は推定ながら確実になった訳だ。……そこで、お前が始めに言った言葉を確認したい」
「……始めに言った言葉……?」
「申開きの有無はタンジーに問え、と言ったろう」
「わたくしが罪を犯した証拠なんてありませんのに! そこな小娘を信用するのですか?」
「少なくとも、先程まで欺瞞を語っていたタンジーよりは遥かに信用出来よう」
「証拠は無いです。見たってだけじゃダメなんですよね?」
「そうさな」
「じゃあいいですー。私がやってないって分かってもらえれば、後はそっちの問題だし何なら興味無いので」
髪の毛を弄びながら、紫音はつまらない、と言わんばかりの表情をしている。命拾いした形になったタンジーが安堵した様子を見て、小生は手を挙げた。
ここまで紫音を虚仮にしたのだ。傷が浅いまま終わらせて良いと思えなかった。
「……証拠はあります」
「ほお?」
証拠が必要ならば、ちょうど良い物が手元にある。小生が立ち上がると、タンジーはいよいよ青褪めた。
「そんなっ、証拠なんてどこの誰が……」
「小生です」
「は……」
「小生のスマホで、昨夜の映像を記録しています」
「ハッサク様……」
懇願する声を無視して、小生は懐からスマホを取り出した。
「昨夜も言ったはずです。竜の大切なものに手を出せばどうなるか理解しているはずだ、と」
「……あれ? ハッサクさんのスマホ何か記憶と違う様な……?」
「……それを、里の皆の前に引っ張り出しての追求。小生、てっきりタンジーとの再会は捕らえられた姿だと思っていたのですが。……こんな騒ぎにならなければ、映像を父に渡すだけで済ませるつもりだったのですよ」
紫音が何やら小生のスマホを気にしている。一人首を傾げるだけで、疑問をこちらに投げ掛ける事はしない。話の腰を折るからと、遠慮している……、という様子は無い。いつもの様に、思考が口から漏れているのだろう。
「放火犯はタンジー自身。紫音を貶める為の、大掛かりな自作自演です」
「わ、わたくしは悪くありませんわ!!」
小生の証言に、タンジーは泣き崩れた。それが真実か演技かは、この光景を見ている全員、最早どうでも良い事であった。
「そんな事より何でハッサクさんのスマホも変わってるんですか!?」
特にその思いが顕著なのか、それとも自分の中では答えを導き出せなかったのか。紫音が全く違う疑問をぶつけるものだから、全員が思わず彼女を見やってしまったのは仕方のない事かも知れない。
「それっ、それは、今聞くべき事ではないだろうこの馬鹿ーーー!!!」
カラマの代弁に、ほぼ全員が頷いたのは言うまでもなかった。