ミーティア越境編
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一つ。叶えたい目的を達成する為に、何より体力を付けるべし。
「もうむりれひゅ……」
「……目標達成のレベルを下げて成功率も下げるか、もうちょっと頑張って成功率キープを目指すか。選ぶのは紫音ちゃんだよ? どうする?」
「ビワちゃんがチア姿になって頑張れ♡ って言ってくれたら頑張れる気がする」
「元気だね! よし、頑張ろ!」
「んぁ〜!!」
二つ。戦力増強と言うより、スムーズなレッツゴー戦法の為に、目が見えない状態のモノズの進化を目指すべし。
「…………」
『……………………』
「頭増えたね」
『ややだだままだだ目目がが見見ええなないいままままだだああ!!』
『わぁ、ジヘッド? が喋るとエコーが掛かってるみたい』
「……ねぇ、モノズが進化すると目が見えるようになるって言わなかった?」
「最終進化すると、だね。ただ、悪とドラゴンの最終進化だから、かなりの暴れん坊になるかもだけど……」
『わわたたししももははややくく、みみんんななののおおかかおおがが見見ててみみたたいい!!』
「……頭同士は仲が悪いはずなのに、何故かもう首が絡んでる……。普通とは違う意味で大丈夫かなこのジヘッド……」
そして三つ。レッツゴー戦法に何より大切な、タイプ相性を学ぶべし。
「ねぇこれ、ドラゴンタイプだけ勉強すれば良いのでは?」
「究極言えばそうだよ。諦めるのダッサイけどね」
「ダサ……」
「ダサいって断言してやるよ。そこに辿り着くまでの道ではドラゴンタイプ以外も出るでしょ。もちろん、車で移動すれば話は別だけどさ……。向こうは空飛ぶタクシーも無いし、ジムバッジが無いと空も飛べないって聞くし。紫音、徒歩以外の移動手段用意してるワケ?」
「ご用意してません!」
「何でそこ元気に答えるんだよ」
最後の四つ。チーム・シェダルのSTC、難易度ルナティックをクリアすべし。
『だぁーッ! そこの伝説ポケモン何度目だよ! STCで弾き飛ばすな! まとめて潰すな!!』
『しょおーがねぇだろ。一か所にまとまってんだから三匹まとめてポイするのがお得だろ』
『オレのチームメイトのポケモンまとめてポイすんじゃねぇ! おい紫音! この調子だとそいつ出禁にすっぞ!!』
『まぁ〜、こわ〜い』
『怖いっつったか!? 待ってろオレがそっち行ってそのナマイキな根性潰してやる!』
『わぁー! ボス落ち着いて!! 普通のバトルになると余計にタイプ相性不利ですってー!!』
『オレの炎が水程度で消えるかー!!』
『いや俺水タイプじゃねぇけど。まぁ〜元気なこって』
この調子だ。他の三つは何とか頑張ってはいるんだけど……。STCに関してはジャックが一番の問題だった。紫音の言う事は聞くんだけど、こっちの方が早いっていう理由でルールを守らない。出入り禁止だって言われるのも時間の問題……。
『ねぇ、ジャック』
『おう、何だよラクシア』
スピーカーからわあわあと言い争ってる声を聞きながら、僕はジャックの脚をちょいちょいとつつく。こんな言い争いが響く中、大きなジャックに僕が声を掛けても気付いてもらえないからね。長い首を曲げて僕に顔を近付けたジャックに、改めてお話をする。
『僕達はね、ジョウト地方に行かなくちゃいけないの』
『話は聞いてるけどよ……。ニンゲンは電話があるじゃねぇか』
『誰が電話しても通じないの。ジャックは会った事無いけど、ハッサクはそんな事するニンゲンじゃない。だから、紫音は直接探しに行く事にしたの』
『……じゃあこんな事してねぇで行けば良いだろ』
『僕もよく分からないんだけど……。今は旅をしてる訳じゃないから、何をするにもキョカが必要なんだって』
『……ふぅん? 俺としては紫音を海に捨てたボーマンダに痛い目合わせれば良いんだけどな』
『あっ、それ! 僕の分も残しておいてね!!』
紫音をユーカイしたボーマンダの話を聞いて、あの時の事を思い出した。僕の脚じゃ絶対に追い付けない空の向こうに連れて行かれた紫音。追い掛けたニャッコも燃やされたし。……うーん、またムカムカしてきた!!
『とにかく! STCの特訓はレッツゴー戦法に慣れるのが一番の目的だから、みんなの分残しといてって事!!』
『……うーん、なるほどな。そりゃあまとめてぶっ飛ばす俺が悪い。強過ぎてごめん』
『……メロコにそれ言っちゃダメだよ』
生意気でも、ジャックはちゃんと話せば分かってくれる。素直に謝るけど、生意気オーラが全然隠せてない。そりゃあ伝説だからね、強いのは仕方ないけど。強過ぎてごめん、なんて聞いたメロコはすっごく怒りそうだなぁ……。
*
*
「今日も元気に死んでいるでござるなぁ」
イージーから始まったSTCチャレンジ。何日か前にノーマルを突破して迎えた今日の難易度はハード。それをクリアして干からびてる紫音に僕とカロンで水をかけていると、シュウメイがやって来た。
「一応、難易度は着実に上がってはいるぜ。常にギリギリでクリアではあるが」
「……カーズ様は言った……、勝てば良かろうなのだ、と……」
「誰だよそれ」
ネルケもうちわで扇いでくれているけど、中々紫音が復活しない。難易度が上がれば倒すポケモンの目標も増えて走る量も増える。紫音の体力作りが間に合ってないんだ。
『このペースで大丈夫なん……? 早割で買ったとは言え、ジョウト行きチケットなんて安くないでしょ。無駄にならない?』
「その声はボタンちゃん……?」
『そ。今日はシュウメイにお使い頼んだ』
「ほぁ。お使いお疲れ様です」
ちょっと回復した紫音がのそのそと起き上がる。お使いって何だろう、と首を傾げる僕達の前に、シュウメイが見た事の無い機械を置いた。
『紫音、マッピングの予定どうなってる?』
「ホッピング?」
『跳ねてどうする。……地図制作だよ。攻略の基本では?』
「ダンジョンは隅々まで探索してアイテムを探すものでは?」
『まぁ、そういう楽しみ方する人もいるけど。今回は効率の話』
「……なるほど、確かに」
『ミズゴロウはレーダーの役割が出来るとは言え、探知で頑張ってもらった方がバトルも早いと思う訳』
電話の向こうからボタンが言う。
僕のレーダーに引っ掛かる。引っ掛かったらすぐにそのポケモンを倒す為にレッツゴーする。
確かに、そっちに集中していたら行き止まりがあるかどうかなんて分からない。
「と、言う訳で我が持って来たコレの出番でござる」
「何これ」
『紫音のスマホロトムと通信。うちが開発したアプリをダウンロードしてもらう』
「そうするとどうなるの?」
『サーチした場所の簡単なマップが作れる。物は試し、とりあえずこれ持ってチーム・シェダルのアジトの端っこに行ってもらいたいんだけど……、偵察役を決めておきたい』
つんつん、と脚で触ってみた。四角い機械の上によく分からない棒が何本か刺さってる。それにも触ろうとしたら、紫音に話の途中でそっと止められた。
「偵察……。ジョウト地方に野生で棲息してるニャッコが一番目立たないかなって思うよ」
『お呼びー?』
「確かに、紫音の手持ちでジョウト地方とパルデア地方に共通しているのはハネッコ系統だからな」
名前を呼ばれたニャッコが、ぴょいんと飛び出してきた。真面目なお話をしている紫音の周りを飛びながら、何の用事なのかを気にしている。
「ニャッコ、この機械を持ってもらいたい」
『うん。……うにゃー』
「落ちるか……。オルティガ殿に軽量化の発注をかけねば」
紫音の周りを飛んでいたニャッコは、シュウメイに渡された機械を持つとふわふわと地面に降りてきた。地面に着地する前に何とか元の高さまで戻ったけど、その代わりに頭に咲いている花はぶんぶん回っている。
『重いー』
「うーん、とりあえず機械預かっていい?」
『そだね。話の間は紫音預かってて』
不満そうなニャッコは、それでも機械を持ったまま頑張って飛んでいる。紫音が手を差し出すと、とても嬉しそうに機械を離した。慌ててキャッチした紫音をよそに、ニャッコはいつもの位置……、紫音の頭に着地した。
『ポポッコには重いかぁ……。そこはまたオルティガと改良するとして。ロトムと通信出来る距離も実地で確認したいから、とりあえずニャッコに紫音のスマホロトム持たせてみようか』
『んー?』
ふんふん、と紫音の髪の毛で遊んでいたニャッコは、ボタンの話を聞いていたのかいないのか、目の前に飛び出してきたスマホロトムに動きを止める。不思議そうな顔のまま、ニャッコはとりあえずロトムを抱き締めた。
「我のブロロロームなら、一瞬の後にチーム・シェダルの端まで行けるでござる」
「毒タイプだよね? ニャッコ大丈夫かな……?」
「毒を撒くのは口からでござる。ボディは鋼、問題ござらぬ」
「なるほど。……ニャッコ、ブロロロームとドライブしてきてくれない?」
『いーよー』
「ブロロローム、仕事を任せたい」
『ブルルォン! イイぜぇヒマしてた所なんだよ!!』
気合十分のブロロロームの背中にニャッコが乗る。機械は紫音が持ったまま。この機械がどこまで届くかを調べるのが一つ。本当なら、途中で実際にどういうマップが出来るのか僕達に見てもらいたかったみたいだけど。それは改良待ちになった。
『オオッシャアー! 行くぜ行くぜェ!!』
『行ってきまーす』
ブロロロームの背中に、紫音のスマホを持ったニャッコが乗る。……ん? ニャッコ両手でスマホ持ってるな……、って気付いた次の瞬間だった。
『ブルルォーン!!』
元気良く声を上げたブロロロームが走り出した。……ニャッコを振り落として。
『あうー』
ブロロロームの背中があった場所から進むどころか、風に煽られてちょっと後ろに下がった場所にぽとっと落ちた。ブロロロームはもう攻撃どころか声も届かない遠い所まで行ってしまった。
「ぶ、ブロロローム! 戻れ! 肝心のニャッコが乗っておら……、ブロロローム!!」
『………………ねえ、落ちたよー』
大慌てでブロロロームを追い掛けるシュウメイを眺めていたニャッコは、ゆっくりと、ゆーっくりと僕達を振り返る。持ったままのスマホに入ってるロトムも困った顔をしてるのに、ニャッコはいつも通りのんびりしたまま。
『……ふはっ』
「んふっ……、あははは!!」
元気に爆走するブロロローム。ぶつからないようにそれを避けるトレーナー達。ブロロロームを止めようと大慌てのシュウメイ。そんな賑やかな様子を気にしないニャッコのマイペースさに、僕だけじゃなくて皆が噴き出した。
『間の取り方完璧では?』
「こいつは大物だな」
「やっぱりニャッコ才能あるよ!!」
「ゆーっくり振り返ってぽにゃー、って何だよそれっ……!!」
「申し訳ないっ……! ブロロロームの元気が有り余って……、……皆で震えていかがした?」
そんな時、シュウメイがブロロロームを連れて戻ってきた。まだブルブル走る為の元気が余ってるブロロロームはちょっと不満そうだけど、シュウメイの隣で大人しくブルブル言ってる。
「ボタンちゃん、今の撮ってない?」
『撮ってないー! 今のは口で説明しても面白くないやつなのに!!』
ボタンの答えに紫音が叫ぶ。ニャッコにもう一回やって、って頼めばやってくれるだろうけど、さっきみたいに面白い事になるのか分からない……。
「ふんッ……」
そんな時だった。メロコがふふんっ、と笑った気がした。その近くにふわふわ浮いているのはメロコのスマホロトム。お揃いの澄ました顔をしてる。
「何だメロコ、その意味有りげな笑顔」
「うるせぇネルケ。校長って呼ぶぞ」
「止めてください」
「紫音のポケモンだからな。絶対何か起きるだろって思って撮ってた」
そう言って、メロコがシュウメイにスマホを差し出した。スマホからは、ブロロロームが『ブルルォーン』って叫ぶ声が聞こえる。シュウメイが画面を見つめた数秒後、僕達の笑い声と一緒にシュウメイも笑い出した。
「ニャッコ……。ポケウッドでも素晴らしい演技を披露できる才能があるのやも……!」
『天才。グループ共有よろ』
「あっ! 私にも送って!!」
「いいぜ。校長もいるか?」
「校長は知らねぇがオレは欲しい」
『ねー、自分、いつまでロトム持ってたらいいのー?』
大盛り上がりの紫音達。その周りをふよふよ飛びながら、ニャッコが不満そうだ。それはそう。ロトム持ったままだと、紫音の髪の毛で遊べないからね。
中にロトムがいるし、手を離せば自分で紫音のポケットに戻りそうだけど。持ってて、って言われたから素直に持ったままだ。
『紫音ー』
「あうぇ」
待ちくたびれたニャッコが、紫音のほっぺたにスマホをぐいぐいと押し付け始めた。そんな事されたら、さすがにスマホの存在を思い出す訳で。
「刺さっ……、刺さってる刺さってる」
痛そう。慌ててロトムを預かった紫音は、刺されて赤くなったほっぺたを撫でてる。僕のひんやりした脚でちょっと冷やして上げることにした。
「メロコちゃんが撮ってくれたこの映像も、ハッサクさんに見てもらいたいなぁ……。毎日話したい事が増えるから、忘れないか不安になるよ」
「分かる、分かるぞ……。我は通話ができる故まだマシだが、やはり顔を見て話したいと思ってしまう」
「うぇへ……、……へへ……。……話したい事いっぱいあるのに……」
『……紫音……』
皆がいてくれて楽しいのに寂しいなぁ。そう呟いた紫音に、メロコもシュウメイも顔を見合わせる。ネルケは困ったようにサングラスを外して背中を向けた。
「……ジョウト地方、だったな。STCのルナティッククリアして校長にも勝てたら……、ドラゴン使いが集まる里について教えてやるよ。……恐らく、いえ間違いなく、ハッサク先生はそこにいるでしょう」
『ん? 何か条件増えたような……』
「ネルケぇ……」
「おぅ。校長も手が無くて困ってるって話だしな。直接行った方が早いのは確かだ」
「うぅっ、校長先生が書類偽造していいんですか……?」
「それは言うな」
ズビっと鼻を鳴らした紫音に、サングラスを戻したネルケが振り返る。
『紫音、その代わりにやる事増えてるけど良いの?』
僕の疑問は紫音に通じない。ただでさえ予約したヒコーキに乗る日が近付いてきてるのに、あと何個ミッションが残ってるのか分からないんだけどなぁ〜!
「じゃあペース上げねぇとな。ビワ姉にも伝えとく」
『ミッションリスト更新。うちらも調整しないとだ』
……そっか。紫音だけじゃなくって、皆が頑張るんだ……。急に忙しくなったメロコやボタンの声を聞きながら、僕は紫音を見上げた。
『頑張ろうね!』
「……? ……頑張れって言った? とりあえず走る皆に置いて行かれない体力作り頑張るよ……」
『うん!』
紫音も頑張る。僕も頑張る。僕が頑張った分は紫音がゴホービくれるけど、紫音が頑張った分のゴホービはきのみじゃ足りない。だから、その分のゴホービはハッサクに貰わなきゃ!!