初恋騒乱編
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「お前は可愛いなぁ」
それがカレの口癖だった。可愛い。そう聞こえたら俺の事。当然と言うか、それが事実だった。
ずっと一緒にいて、これからもずっと一緒にいるんだと思っていたけど、いつの間にかカレの隣で並んで歩くのが難しくなった。気付いたら、"可愛い"より"心配するな"って言われる事が増えた。
「何がなんでも絶対治してやるからな!」
治さなくていい。一緒にいてまた"可愛い"って言ってくれよ。そう言いたくても、俺の口は小さい「にゃ」って言うのがやっとだ。
皆お前が元気になるのを待ってる、って言うけど、カレが言う皆って誰なんだろう。時々会いに来るオットトって人かな。頭がぼんやりしてよく分からない。
「喜べ! もっと金が入る仕事をする事になったぞ! 金があれば、お前を治療する為にもっと大きな病院にちゃんと通える!!」
『うぇえ……、振り回さないでくれぇ……』
「おっと、急に揺らしてすまん。嬉しくてな」
そんな時だった。大きな仕事が決まったとか何とかで、カレが久し振りに俺に笑い掛けた。ここ最近、ずっと難しい顔をしていたから、何だか俺も嬉しくなった。持ち上げられてグラグラするくらい、何て事無いくらい嬉しかった。
『いや……、かまわないけどさぁ……。いっしょにいられるのか?』
「だからな、しばらくシンオウに行く事になった! すぐ戻って来るからな!」
『……また?』
でも、その嬉しい気持ちはあっという間に小さくなる。俺の治療の為に金がいる。その金の為に、またどこかに行ってしまう。……動けない俺を置き去りにして。
『いくなよぉ……』
「何だぁ、甘えただなぁ! 可愛い奴め!!」
指を噛んで引き留めようとしたけど、今の俺じゃあ噛み付く事も出来ない。血も出ない程に弱いアピールじゃあ、何にも伝えられなかった。
甘えていると思われて、カレが満足するまで撫で回されて。もちろん嫌じゃ無いけど、撫でられたい訳じゃなかったのに。
ただ見送るしか出来ない俺は、毎日知らないポケモンシッターに世話を焼かれる日々に戻った。カレは時々帰ってくるけど、その度に知らないポケモンも一緒だった。
『やだよぉ、森に帰りたい……!』
『痛い! 痛い!!』
知らないポケモン達は、皆怖がっていた。怖がっている声が俺のいる綺麗な部屋にまで聞こえてくる。ふわふわのクッションの上で丸くなって耳を塞いでも、その声はカレがまた仕事に行くまで無くならない。
何の仕事をしているのだろう。今まで撫でられるのはとても嬉しくて幸せな事だったのに、今はその手が俺に近付くのが怖かった。
『……もうやめろよ。わるいこと、してるんだろ……?』
にゃあにゃあ。必死に鳴いてカレを止めようとしたけど、カレにはどう伝わったのか、俺を見もせずにスマホを睨みながら大きなため息を吐く。
「……はぁ、再生数も寄付も伸び悩んできたか……。そろそろコンテンツとしても寿命かな」
コンテンツ。寿命。その言葉がどんな意味なのかは分からなかったけど、元気を出せよと伝えたくて軋む身体を引きずってカレの足元に近付いた。
「しょうがねぇか」
ひょいっと片手で首を掴まれた俺は宙ぶらりん。プラプラ揺れながら向かう先からは、耳を塞いでもずっと聞こえてくる苦痛の声が待っていた。
──嫌な金属音を響かせるケージの一つに入れられても、しばらく俺は自分の状況が理解出来ない。
『なん……、……え……?』
「稼げねぇならもういいや。バカな奴ら。治る訳ねぇだろって。病気じゃねぇんだから」
「あ、ここにいた。なぁ兄貴ぃ、そう言えば、ジュナイパーみたいなポケモン見掛けたぜぇ」
「そりゃお前ジュナイパーだろ」
「でもよぉ、笠みたいなの被っててぇ……」
「……ふぅん……? じゃあジュナイパーじゃねぇか……」
「レンジャーが連れてたのを思い出した」
「オットト、あのなぁ……。レンジャーから盗める訳あるか!」
「いってぇ! でもよぉ……」
カレらは何を言っているんだろう。俺はどうしてこんな所に閉じ込められたんだろう。
いつもの暖かい場所で日向ぼっこしたい。こんな冷たくて暗い場所は嫌だ。
『こ、ここから出して……!』
「うるせぇ黙ってろ」
ガシャン!! 誰かのケージが蹴られたらすごい音がした。俺がいたケージが蹴られた訳じゃないけど凄く怖い。狭いケージの中で出来るだけカレから離れるのがやっとだ。
どうしてこんな事するの。今まであんなに可愛いって言ってくれたのに。病気になった俺は、もう可愛くない……?
「アニッキ、止めなさい。あまり怯えの感情を植え付けては、売れた後にクレームが来ます」
「コレぇ売れるかねぇ? こんなエネコみたいな愛嬌だけのポケモンなんて捨てるくらいいるでしょ」
「それはそうなのですが……。ポケモンは丈夫ですからね。掛け合わせて新種を作ったり出来ない代わりに、センス良く耳や尻尾を付け替えたりしてくれる所があります。耐えられなかったとしても剥製にしたりとやりようはありますから問題にならないかと。エネコは愛嬌のある姿ですし、仮に怯えて売り物にならない様ならそこに売りましょう」
もう訳が分からなかった。ケージの限界まで後退りした俺に気付いたのか、カレが近付いてくる。わざと音を立ててケージを掴んたカレは、いつもみたいにニコニコしている。あんなに大好きだったのに、信じられないくらい怖い顔に見えて俺は動けなくなった。
「いーこだから、大人しくしてろよぉ? ケガでもしたら、商品価値下がっちまうからな」
「──あびぇっ、水……!?」
「どうしたミツリヨ。いつもの気取った態度はどこに──」
ドアの近くでお喋りしてた誰かが吹っ飛んだ。それに巻き込まれたカレも一緒に飛んでいく。何故かくっいたまま離れなくなったみたいで、壁の近くで二人で仲良く遊んでる。
「兄貴ぃ!? ミツリヨ、早く兄貴から離れろよ兄貴が起き上がれねぇだろぉ」
「濡れた服が凍って貼り付いてんだよ! オットト、お前が剥がせ」
「ええ……、凍ってんならちべたいから嫌だよ」
「バカ野郎! いいから早くしろ、寒いんだよ!!」
「分かったよぉ……。ぬぇっ」
オットトも転んだ。いつの間にか、硬い床が水でゆらゆら揺れていた。水でいっぱいになった床に顔から飛び込んだオットトの後ろ、暗い部屋の入り口に知らない人が大きなポケモンと一緒に立っている。冷たい空気は、そこから流れてきていた。
一歩近付いてくると、足元の水はパキパキと氷になっていく。
『ひぇ……』
誰が漏らした声だろう。
思わず隣のケージにいる奴と手を握ったから、もしかしたら俺の悲鳴だったかも知れない。そのくらい怖かった。
「兄貴ぃ、ちべてぇよぉ! 体が床と一緒になっちまったぁ!!」
「お前はお前でっ、どっどうにかしろ!」
「助けてくれよぉ兄貴ぃ!!」
「うううるせぇ!! おい、ミツリヨ。おまっ、お前の腕なら俺のモンスターボールに届くだろ!? ポケモン出せ、何でもいい」
「わわわ分かりましたよ、めっ、めめ、命令される覚えはありませんが一つ貸しですからね!!」
寒い中、震える腕で何とかモンスターボールを持った。俺以外にもポケモンがいたんだ、とショックを受けた俺の目の前で、モンスターボールが水鉄砲で手から弾き飛ばされる。
壁にぶつかって、跳ね返ったモンスターボールが侵入者の足元まで転がった。もちろん、ボールは水浸し。濡れたボールはそのままピキピキと凍り付いた。
「……おや、失礼。何か踏んでしまった様で」
「……テメェー!!」
「パルデアリーグから派遣されて参りました。四天王がハッサクと申しますです。……少々お話よろしいでしょうか」
ハッサクって言った男は、近くにいたオットトに声を掛ける。床に寝ているオットトはハッサクに見下ろされてすっかり怖がっていた。
「ひひぃ〜! あ、あにぎぃ!?」
「氷に張り付いた手を無理に剥がすと、酷い事になりますですよ。まずは落ち着いて話をしましょう」
「あうあっ、ああ……」
優しすぎて怖いくらい。閉じ込められてるはずのケージが、今は守ってくれてると思うくらいに怖い。ちょっと離れた場所にいる俺でもそう思うんだから、オットトはきっともっと怖い。
「ううあうあう……! あにっ、兄貴……」
「ひぃっ!?」
逃げようとして、オットトが力いっぱい腕を持ち上げた。服をベリベリと床に残して、何とか立ち上がったオットトがカレの所に駆け寄る。……駆け寄ろうとして、床と一緒になっていた靴が動かなくてまた転んだ。今度は顔まで床と一緒になってる。
「小生はお話を聞きたいだけなのですが……」
「だっ、誰だよテメェ! 不法侵入だぞ!!」
「先程名乗ったはずです。四天王がハッサク。お前達の逮捕は小生のお仕事ではありませんが……、そのお手伝いをして欲しいと頼まれていますです。大人しく従ってくれるのならば、小生もその様に対応しますですよ」
「人をキンキンに冷やしといて何言ってんだ!!」
「アニッキ、そう取り乱してはいけません。ハッサクさん、でしたか。我々を逮捕? きちんと依頼を受けてきちんと仕事をこなす我々を悪だと?」
「はい」
カレを宥めながら、ミツリヨが冷静に聞いた。悪い事はしていない。そう堂々と言うミツリヨに、ハッサクはすぐに頷いた。
「そうですか……。……マルノーム、好きな物を好きに食べていいですよ。許可します!!」
『んぁ〜。……え? 食べていいの?』
『……え』
ミツリヨがマルノームを呼ぶと、マルノームが近くにあったデデンネのケージ前で口を開ける。真っ暗で何も見えない口。ケージの中で逃げ回っても逃げられない。
「ラクシアはケージを! セグレイブ、氷のつぶて!!」
『おっけー! ちょっと痛いけど我慢して!!』
『わっ……、ワァーン!!』
『あ〜……、んべっ、ちめてっ!』
マルノームの口の中に氷が突き刺さった。ぺっぺ、と氷を吐き出すマルノームは、すっかり食欲を失くしてしまったらしい。そのまま何も食べずにボールに引っ込んでしまった。
「チッ、ミツリヨはポケモンまで役立たずかよ!」
「何も出来ずに氷漬けにされたアニッキや転がっているだけのオットトより遥かにマシでしょう!!」
「はぁ〜!? お前が下手こいてボールをふっ飛ばされたせいで何も出来ねぇんだろ!? 反省しやがれ!!」
「人のせいにしないでもらえます!?」
「元はと言えばオメーが一番に水浸しで吹っ飛んで来たのが始まりだろうが! 俺は巻き込まれたんだよ忘れんなこのボケ!!」
「いっ……、言わせておけばあれこれそれやれと!! 金もまともに稼げないお前達のフォローは誰がやっていると思っている! このミツリヨですよ!? それを忘れて良くもまぁ好き勝手な事を言えますね!?」
「はぁ〜あ! そうは言いますがねぇ、指示にちゃあんと従ってんのにな〜にやっても上手く行かねぇ!! ミツリヨさんはマネジメント下手くそなんですねぇじゃあしょあがねぇよなぁ!!」
「コイツ……!」
「楽して稼げるってオハナシでしたよねぇ? その結果がこれなんですけどどう思われますぅ? ……聞いてんだよミツリヨさぁん。答えろや」
「はいはい、そこまでにしましょう。不毛な言い合いは疲れるだけですよ」
氷漬けになっていたオットトを氷から剥がしたハッサクが、二人の喧嘩を止めた。誰のせいだ、とカレが睨んでも気にせずに、オットトを部屋の外に連れ出している。
「落ち着きましたか? そろそろお話を聞きたいのですが」
「……失礼。逮捕する為にいらしたと言うお話でしたね。我々は逮捕されるいわれはありません。一度にたくさんのポケモンを躾ける事は出来ませんからね。ここは、躾を待つポケモンをケージに入れておく部屋なのです」
さっきまであんなに言い争っていたのに、落ち着いたミツリヨが穏やかに話し始めた。……相変わらずカレとくっついたままだけど、氷が少しずつ溶けてきているのか、さっきより顔に余裕がある。
「なるほど、確かにたくさんのポケモンがいますね。……ですが、その問題はケージではなくモンスターボールに入ってもらえば済むのでは?」
「ええ。ですが、ボールに入るのを嫌がる子が多く……。仕方なくこういったケージに入れるという手を採用しているのです」
「ずいぶん入りたがらない子が多いですね」
「ええ、少々やんちゃな子が多くて……」
「……ところで、入らないとは言え、彼らの為のボールがあるのでは? それはどこに?」
「…………拒否された際に壊されてしまいました」
「拒否されたにも関わらず無理やり閉じ込めていると?」
「売り物に我々のIDが記録されると余計な面倒が起きますからねぇ! スコヴィラン、たねマシンガン!!」
「セグレイブ、氷のつぶてで打ち返しなさい!」
完全に氷から開放されたミツリヨが新しいポケモンを出した。カレの方も、自由になった瞬間床に転がっているボール目掛けて走る。
「油断したなぁ四天王さん! こっちは二人いるんだぜ!!」
「四天王を相手取れる者が二人しかいない、の間違いでは? 三人いれば変わったかも知れませんが……」
「エクスレッグ! であい──」
「小生は、既に二匹のポケモンを場に出しているのですよ」
『チェッストー!!』
『うぎょわー!?』
『どうだ見たか! このくらい痛くないんだぞ! ……そうだ今紫音いないんだ……。あっち行けっ!!』
うわぁ、痛そう。
飛び出そうとしたエクスレッグ目掛けて、気合の声と一緒にミズゴロウの頭突きが炸裂した。頭突きを決めたミズゴロウも、おでこが痛いのか脚で自分のおでこを撫でている。その横で目を回しているエクスレッグは、そのまま水鉄砲……、あれハイドロポンプかな。とりあえず部屋の外に退場して行った。
「エクスレッグ!?」
「さすがの身のこなしですね。……さて、そちらは今一度マルノームを出しても構いませんよ。このままだと、正直消化不良です」
「マルノーム!! ヘドロばくだん!!」
『任せて! 洗い流してあげる!!』
『え〜っと、なんだったかな……』
『……そこでド忘れなの!?』
首を傾げるマルノーム。セグレイブの肩に乗り移ってハイドロポンプでヘドロばくだんを押し返そうとしたミズゴロウは、その様子に肩から転がり落ちた。床に落っこちる前に上手に尻尾で拾い上げられたミズゴロウは、そのままハッサクの肩に飛び乗った。
「……セグレイブ、終わらせてあげましょう。囚われたポケモンもいますから、被害は少なめに。威力は控えめに」
『まさかとは思うけど、ここできょけんとつげきじゃないよなぁ!?』
「きょけ……」
『はいそれダメー! ここ狭いし絶対檻の山崩れるから却下』
「むっ……。……やり過ぎ判定が入りましたか。ここはつらら落としにしましょう」
ミズゴロウが脚でハッサクのほっぺたを叩く。不満そうに何か呟いて、ハッサクは指示を変えた。
一気に温度が下がった部屋の中で、大きなつららが何個も作られる。マルノームの頭の上目掛けて落ちていくそれが、床にもぶつかった。砕けた欠片が、ミツリヨにも襲い掛かる。
『もうやだぁ〜!!』
「ひぃ!? 何なんだ、ラクして金を稼ぎたいって思って何が悪い!!」
ひぇ〜、と逃げていくマルノーム。残ったのは、壁に追い詰められたミツリヨだけだ。
「そう思う事が悪いとは誰も言っていませんですよ。楽をして稼ぐ。魅惑的ですよね。ですが、その稼ぎ方は何かしらの危険と隣り合わせです。そしてお前達は、危険を冒してでも楽をして稼ぐという選択をした。その結果、人生を棒に振るという結末に行き当たったのです」
「ご高説どうも大変身に染みるお話でした!!」
「それは結構。よく覚えておきなさい。そんな美味しい話がある訳無いでしょう。お前達の様な人間に!!」
「その説教を止めろと言っているんですよ!!」
ミツリヨが立ち上がって、力いっぱいケージを蹴り飛ばした。さっきみたいに凄い音がする。一度カレが蹴ったからか、今度は音と一緒にぐらぐらと地震みたいに揺れ始めた。
「ほぉら、受け止めてあげないと助けに来たポケモン達が怪我しちゃいますよ!」
「……なるほど。小生、決めました」
「何を……」
ずらりと大きなポケモンが並んでいた。カイリューやセグレイブが取りこぼしたケージは、ミズゴロウや小さなリンゴみたいな翼で飛んでいるポケモンがキャッチしていく。俺も見た事が無いポケモンにキャッチされて優しく床に降ろされた。
逃げるはずだったミツリヨは、完全にドラゴンポケモンに囲まれている。
「ゆ、許し……」
「悪い子には、お尻ペンペンをするべきだと相場が決まっていますです。三人の中では、どうやらお前が上の立場の様なので、お前から選ばせてあげましょう。誰にペンペンされたいですか?」
「ミズゴロウで」
『……え? 僕?』
カレが逃げない様にじろじろと睨み付けていたミズゴロウが、自分が呼ばれた事に気が付いて振り返る。何の用、とばかりに駆け寄ってきたミズゴロウを抱き上げたハッサクが、冷たい声で否定した。
「彼は大切な人から借り受けている子なので却下します。そうですね……、セグレイブか、カイリューか……、オノノクスの三択にしましょう」
名前を呼ばれた三匹がミツリヨに迫る。……三匹とも特に大きいドラゴンタイプだ。
「さぁ、お好きなポケモンをどうぞ」
「ゆ、ゆるひてくだひゃ……」
「おや。気を失ってしまいましたか」
残念そうに呟く声が聞こえる。
「さて、では……」
ゆっくりとこっちを振り返る。……え、ミツリヨ達をふっ飛ばしたから、次は俺達の番って事!?
「……ラクシア、小柄な君から話をした方が良さそうです。アップリュー、お前も頼みますです」
思わずケージの隅っこに逃げる。それを見て、ハッサクは困ったみたいにミズゴロウを見下ろした。
「怖がらせている小生はいない方がいいでしょう。他の部屋を閉じ込められているポケモンがいないか見て回ってきます。もし見落としがあったなら呼んでください」
そう言って、ハッサクとドラゴンポケモン達は部屋から出て行った。ひんやりした空気も少しずつ温かくなってきた。
『……あのな、俺はアニッキと一緒にいられて、しあわせ、だったんだよ……』
『……ごめんね。壊しちゃって……』
『ううん、良いんだよ。あいつ、悪い事してる気はしてたから……。大好きだったけど、あいつは俺の事どうでも良かったんだ……っ!!』
『大丈夫。ちゃんと大事にしてくれる人の所に行けるよ。今度は怖くない人が見付けてくれるよ』
そう笑うミズゴロウに、俺は泣きながら頷くのがやっとだった。