黒の時代
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昔、一回だけやくそくを破っちゃったことがあった。
オサムにきょかされた人としか話しちゃダメなのに、話かけられたらムシしないとダメなのに、反応しちゃって、とってもおこられた。
その日はオサムがかいぎでそばにいなくて、たいくつだったから本部のろうかをさんぽしていた。
オサムにあたらしいふくを前日に買ってもらって、ごきげんだった。
だからろうかの曲がり角で自分よりもずっとおおきな男の人にぶつかっちゃって、鼻がとっても痛かった。
「うっ、」
「うぉっ、なんだァ?」
おとこの人はなにがぶつかったのかも分かっていなかったんだろう。びっくりしながらわたしを見てる。
「いたい。」
「わりーな、つーかなんでこんなとこにガキがいんだよ。」
「……さいきん、オサムにひろってもらった。」
「ぁあ゙?太宰にだァ?」
「うん。あなたはなんでここにいるの?」
「俺もまぁ、色々会ってここにいんだよ。」
「せつめいがてきとう……。わたしはちゃんと話したのに。」
「うるせぇ。ガキには早い話なんだよ。チビ。」
「あなたがおおきいんだよ。」
「手前良い奴だな。」
さっきまでオサムの名前だしたらいやそうなかおしてたのに、大きいって言ったとたん手のひらを返してだっこまでしてくれた。
おぉー……高くて安定感のあるだっこだ。
「んで?手前の拾ったガキ放ったらかしで何やってんだよ、あの木偶は。」
「オサムはかいぎがあるって言ってた。」
「ってことはそれまで手前は一人ってことか?」
「うん。」とうなずけばおとこの人はびみょうなかおをした。
「よし。あの木偶が帰るまで俺が遊んでやる。」
「けっこうです。」
「なんでだよ!」
「オサムに『なまえに話しかけた上に触れようとするやつは十中八九ロリコンだから、そういう怪しい奴は足を重点的に壊してから逃げてこい。殺すと面倒だからそれは最終手段ね。』って言われてる。」
「どんな教育してんだあの木偶!!危なすぎんだろ!!」
おとこの人は一通りおこりながらさけんだ後、いちおうれいせいになった。
「……あー、俺は中原中也だ。」
「チューヤ?」
「そうそう。んで、一応あの木偶……太宰の相棒だ。」
「オサムのしりあい?」
「そうだ。」
「……なら、だいじょうぶ。」
そう言えばチューヤはあきれたかおをした。
「おいおい、あの木偶の名前で警戒解くのかよ。」
「オサム、わたしを助けてくれた。だから、オサムのあいぼうなら、だいじょうぶ。」
「……そーかよ。」
わたしの言葉にチューヤはまだあきれたかおをしていたけど、ちょっとだけ表情がやわらかくなって、あたまもなでてくれた。
「……なまえ?」
「!オサム。」
しばらくチューヤとあそんでいると、オサムがむかえに来てくれた。それがうれしくて、オサムの元に走ってとびつきたかったけど、チューヤと手をつないでるからみうごきが取れない。
「チューヤ、はなして。」
「痛てぇからペチペチ腕殴んじゃねぇ。」
「……随分と仲良くなったようだね。」
「ぁあ?手前がこいつ放ったらかしにしとくからだろうが。ガキなんだから拾ってきたんならちゃんと面倒見てやれ。」
オサムはたまに見せるそこの見えないまっくらな目で一度わたしと目をあわせるが、すぐにそらしてしまった。
「どうだろうね。私、約束も守れない厚顔無恥な子を拾った覚えはないし。」
オサムはチューヤにちかよる。オサムはおこっていた。むずかしくてまだ言葉のいみはよく分からないが、それでもほめられてはいないことはオサムのふんいきからよく分かった。
「それじゃぁまたねー。」とオサムは歩きだす。いつもは手をつないでいっしょにかえるのに、今日はまるでそこにおいていくようにオサムはチューヤとは反対方向のいつものへやへ向かった。
わたしはうしろからチューヤの心配そうなしせんを受けながらも、なみだをぐっとこらえておいていかれないように、すてられないように必死であとをおった。
「オサム、」
「…………」
「オサム、」
「…………」
「…………オサム、」
まるでそれしか言葉を知らないようにわたしは名前をよびつづけた。
だけどオサムはいちどもはんのうしてくれなくて、まるでわたしがここにいないかのようにすごしている。
「……オサム、ごめっ、ごめんっなさ、!」
なにがわるかったのか、何となく理解しているのにそれしか言えないことばをいいながらこらえていたなみだがながれてしまう。
「……なんで私が怒ったのか分かってる?」
「……!このあいだ、このあいだオサムときょかされた人としか話しちゃダメってやくそくしたのに、やぶったから……、ごめんっ、なさ、い、!」
オサムはやっとわたしのことばにこたえてくれて、そのチャンスをのがさないようになみだでぐしゃぐしゃになりながらもひとつずつ話していく。
「そう、じゃぁ約束を覚えてるなら破ったらどうなるか、ってことも覚えてるよね?」
「!」
すてられる、
そのじじつをことばにできなくてもオサムには伝わったようで、仮面みたいなえがおでオサムはわらった。
「ごめんなさ、い……おねがい、します、すてないで……!」
「そうだねぇ。でも私、誰にでも尻尾振るような犬は嫌いだし。」
「オサム、だけ。オサムしか、いらない。」
オサムにすてられたら生きていけない。
それはたとえばなしなんかじゃなくて本当のことだと思う。
だって今オサムにすてられそうなだけでわたしはこんなにもくるしい。いきがしにくい。だからきっと、オサムがいなくなってしまえば生きていけない。
それをそのまま伝えれば、今度はオサムは満足気にわらった。
「へぇ……。じゃぁしつけ直してあげよう。君がそうは言っても一時はよりにもよってチューヤなんかに擦り寄ったのだから。それ相応の罰を君に与えよう。」
「それを、受けたら、オサムといっしょにいられる……?」
「あぁ、ずっと一緒だ」
オサムのいつものそこの見えないまっくらな目に、どろどろとした少しおそろしい感情が見えた気がした。
オサムにきょかされた人としか話しちゃダメなのに、話かけられたらムシしないとダメなのに、反応しちゃって、とってもおこられた。
その日はオサムがかいぎでそばにいなくて、たいくつだったから本部のろうかをさんぽしていた。
オサムにあたらしいふくを前日に買ってもらって、ごきげんだった。
だからろうかの曲がり角で自分よりもずっとおおきな男の人にぶつかっちゃって、鼻がとっても痛かった。
「うっ、」
「うぉっ、なんだァ?」
おとこの人はなにがぶつかったのかも分かっていなかったんだろう。びっくりしながらわたしを見てる。
「いたい。」
「わりーな、つーかなんでこんなとこにガキがいんだよ。」
「……さいきん、オサムにひろってもらった。」
「ぁあ゙?太宰にだァ?」
「うん。あなたはなんでここにいるの?」
「俺もまぁ、色々会ってここにいんだよ。」
「せつめいがてきとう……。わたしはちゃんと話したのに。」
「うるせぇ。ガキには早い話なんだよ。チビ。」
「あなたがおおきいんだよ。」
「手前良い奴だな。」
さっきまでオサムの名前だしたらいやそうなかおしてたのに、大きいって言ったとたん手のひらを返してだっこまでしてくれた。
おぉー……高くて安定感のあるだっこだ。
「んで?手前の拾ったガキ放ったらかしで何やってんだよ、あの木偶は。」
「オサムはかいぎがあるって言ってた。」
「ってことはそれまで手前は一人ってことか?」
「うん。」とうなずけばおとこの人はびみょうなかおをした。
「よし。あの木偶が帰るまで俺が遊んでやる。」
「けっこうです。」
「なんでだよ!」
「オサムに『なまえに話しかけた上に触れようとするやつは十中八九ロリコンだから、そういう怪しい奴は足を重点的に壊してから逃げてこい。殺すと面倒だからそれは最終手段ね。』って言われてる。」
「どんな教育してんだあの木偶!!危なすぎんだろ!!」
おとこの人は一通りおこりながらさけんだ後、いちおうれいせいになった。
「……あー、俺は中原中也だ。」
「チューヤ?」
「そうそう。んで、一応あの木偶……太宰の相棒だ。」
「オサムのしりあい?」
「そうだ。」
「……なら、だいじょうぶ。」
そう言えばチューヤはあきれたかおをした。
「おいおい、あの木偶の名前で警戒解くのかよ。」
「オサム、わたしを助けてくれた。だから、オサムのあいぼうなら、だいじょうぶ。」
「……そーかよ。」
わたしの言葉にチューヤはまだあきれたかおをしていたけど、ちょっとだけ表情がやわらかくなって、あたまもなでてくれた。
「……なまえ?」
「!オサム。」
しばらくチューヤとあそんでいると、オサムがむかえに来てくれた。それがうれしくて、オサムの元に走ってとびつきたかったけど、チューヤと手をつないでるからみうごきが取れない。
「チューヤ、はなして。」
「痛てぇからペチペチ腕殴んじゃねぇ。」
「……随分と仲良くなったようだね。」
「ぁあ?手前がこいつ放ったらかしにしとくからだろうが。ガキなんだから拾ってきたんならちゃんと面倒見てやれ。」
オサムはたまに見せるそこの見えないまっくらな目で一度わたしと目をあわせるが、すぐにそらしてしまった。
「どうだろうね。私、約束も守れない厚顔無恥な子を拾った覚えはないし。」
オサムはチューヤにちかよる。オサムはおこっていた。むずかしくてまだ言葉のいみはよく分からないが、それでもほめられてはいないことはオサムのふんいきからよく分かった。
「それじゃぁまたねー。」とオサムは歩きだす。いつもは手をつないでいっしょにかえるのに、今日はまるでそこにおいていくようにオサムはチューヤとは反対方向のいつものへやへ向かった。
わたしはうしろからチューヤの心配そうなしせんを受けながらも、なみだをぐっとこらえておいていかれないように、すてられないように必死であとをおった。
「オサム、」
「…………」
「オサム、」
「…………」
「…………オサム、」
まるでそれしか言葉を知らないようにわたしは名前をよびつづけた。
だけどオサムはいちどもはんのうしてくれなくて、まるでわたしがここにいないかのようにすごしている。
「……オサム、ごめっ、ごめんっなさ、!」
なにがわるかったのか、何となく理解しているのにそれしか言えないことばをいいながらこらえていたなみだがながれてしまう。
「……なんで私が怒ったのか分かってる?」
「……!このあいだ、このあいだオサムときょかされた人としか話しちゃダメってやくそくしたのに、やぶったから……、ごめんっ、なさ、い、!」
オサムはやっとわたしのことばにこたえてくれて、そのチャンスをのがさないようになみだでぐしゃぐしゃになりながらもひとつずつ話していく。
「そう、じゃぁ約束を覚えてるなら破ったらどうなるか、ってことも覚えてるよね?」
「!」
すてられる、
そのじじつをことばにできなくてもオサムには伝わったようで、仮面みたいなえがおでオサムはわらった。
「ごめんなさ、い……おねがい、します、すてないで……!」
「そうだねぇ。でも私、誰にでも尻尾振るような犬は嫌いだし。」
「オサム、だけ。オサムしか、いらない。」
オサムにすてられたら生きていけない。
それはたとえばなしなんかじゃなくて本当のことだと思う。
だって今オサムにすてられそうなだけでわたしはこんなにもくるしい。いきがしにくい。だからきっと、オサムがいなくなってしまえば生きていけない。
それをそのまま伝えれば、今度はオサムは満足気にわらった。
「へぇ……。じゃぁしつけ直してあげよう。君がそうは言っても一時はよりにもよってチューヤなんかに擦り寄ったのだから。それ相応の罰を君に与えよう。」
「それを、受けたら、オサムといっしょにいられる……?」
「あぁ、ずっと一緒だ」
オサムのいつものそこの見えないまっくらな目に、どろどろとした少しおそろしい感情が見えた気がした。