太宰治
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私には優秀な妹がいる。
本人は優秀ではないと思っているようだが、(というより、私が思い込ませたのだが、)妹は元から頭の出来は悪くないし、見た目もいい。一聞けば十どころか百も千も覚えるような器用さも持つのにそれに驕らず、謙虚で人のことを立てるのが上手い、世にいう“いい女”というやつだった。
そんな妹の自分とは違う小さい手を引き、誰にも奪われないように護っているうちに自分の中に家族愛とは別の何かがあると気付くのは早かった。
その“何か”は恋というにはあまりにも黒く澱んでいて、どちらかといえば依存や執着に近い、人から見れば狂った愛情なんだと思う。
妹___なまえを見ると、普段はまるで何処かに置いてきたかのように動かない心が黒く醜悪な何かを巻き付けたように苦しくなる。
その社会の汚さも男の欲も知らない白く純真な肌を私の色に染めあげ、少し強く押せば簡単に折れてしまいそうな華奢なその身に私の印を残したくなる。
けれど今それをすればきっとなまえは優しいから許してくれるだろうけれど、私と同じようにこの薄昏い感情に溺れてはくれないだろうから、今は良い“お兄ちゃん”を演じるんだ。
そうすればなまえは賢いけどいい子だから、大好きな“お兄ちゃん”の言うことは聞いてくれるよね?
なまえは一人が嫌いだった。
だからそれを利用してできる限り私の傍を離さないようにした。
もし、なまえが私の知らないところで私の知らない男と楽しそうに話していたら、男を拷問してなまえを監禁してしまうだろうから。
きっとなまえと一日中一緒ならそれもたのしいだろうが、なまえには怯えられたくも嫌われたくも無いのでできるだけ自分の内に潜む狂気は身を潜めた。
今では無い、今では無い。
ゆっくり、できる限りの速度でなまえが私以外誰も見ないように、誰の手も取らないように、しなくてはならない。
「なまえ……おいで。」
今日もこの醜悪な想いをひた隠し、できる限りの甘い声でなまえを寝台へ誘い込む。
呼べば私以外の奴には見せないような蕾が花開く笑顔を向けるから、私の内にまた邪な想いが産まれる。
私はそんな想いを内側に押しとどめるように、なまえを何処にも逃がさないように抱き込めばそこでやっと満足感が産まれた。
「なまえ」
前はこうやって抱き締めるだけで欲は満たされたのに、日に日に押しとどめる欲はデカく、おぞましいものへ変わっていく。
だから私はそれを悟られず、堕としていくためにゆっくりと距離を縮めていた。
今日はそろそろ次のステップへ進もうか、等と考えながら神に愛されるために造られたような端正な顔立ちに近寄り、私は妹の口を奪った。
あんまり性急に事を運ぶと不審がられるだろうから、長く触れるだけの接吻。
いつも私が傍にいたから恐らくまだ誰も奪えなかったであろう妹の紅く色付いた柔らかい唇を私が奪っていると思うと触れるだけの接吻なのに酷く興奮した。
「兄さん……?」
なまえは当たり前だが驚いているようで、困惑の声を上げる。きっとこのまま雄としての顔を見せれば距離を取られてしまうだろうから、私はまた仮面を被りいつも通り、良いお兄ちゃんのフリをした。
そうすれば、これはただの愛情表現で兄妹でやってもなんの問題もないんだよ。と言うだけで可愛くて可哀想ななまえはそれを信じるだろうから。
あぁ、でも。
男女としてのそれに興奮してしまった私は仮面を被りきれているだろうか。
「……いいかい、なまえ。これは一種の愛情表現。私達がしても普通のことだよ。」
洗脳するように耳元でいえば困惑するなまえの気配がした。
けれどなまえは困惑はすれど、嫌がる素振りは無かった。
「これからは毎日しようね。」
だから私の内を満たすためになんでもない、普通のことのようにいえばいい子のなまえはこくりと一つ頷いた。
それからは毎日私達は接吻し、時には穢い蝿が寄ってこないよう、なまえに接吻印を付けた。はっきり言ってしまえば真っ白な罪なんて知らないような肌に、私の色を落とすのはかなり興奮してしまった。
身体が大人に近付けば近付く程、妹の女性特有の甘い匂いにやられ、子供の時には沸かなかった感情が溢れてくる。
「なまえ、これは私以外にはしてはいけないよ?」
「?愛情表現として友人、恋人にはしていいんじゃないの?」
愛情表現とは言ったが、なまえの女らしい紅く色付いた唇が私以外の誰かに触れること等赦せるはずもなく、私は妹の想いを利用した。
「……これは自分の一番大切な人にだけする行為なんだ。君の一番大切な人は私だろう?」
「うん。」
なまえが今この時点で私には家族愛しか抱いていないことは知っていた。だから私はそれを利用して決して男も女もなまえに触れさせないようにした。
「なら他の人にはしてはいけないよ。」
分かった、といい子に返事をするなまえ。
私はいい子だね。と満足気に笑い、首元に罪の証を落とした。
「手前の愛は異常だ。」
ある日の任務の待機時間、今最も幹部に近い立場にある私に対し、恐れずに敵意を込めて言ったのは私が最も嫌いな男、中原中也だった。
「……いきなり何?脈略が無さすぎるんだけど。それとも話の流れというものも考えられない程君の頭はポンコツになっちゃったのかな?」
「誰の頭がポンコツだ。この唐変木が!!……この間、手前が任務で居ねぇ時こっちに混ざってた手前の書類を執務室まで届けに行ったんだよ。」
「へぇ……」と軽く相打ちをしながらもいつの間に来てたんだと疑う。
気付かなかった。恐らく私と中也が仲が悪いことをなまえは知っているから争いごとをあまり好まないなまえは黙っていたのだろう。
「相変わらずなまえは手前の妹とは思えねぇほど性格も良かったし、気遣いも出来たいい女だった。」
「なぁーに人の妹に発情してんの?ちゅうやくんは万年発情期なのかな?」
「誰が万年発情期だ。殺すぞ!……で、気付いた。彼奴の首元に接吻印がついてることに。」
中也の言葉に口は歪んだ笑みを浮かべそうになったが必死にこらえた。きっとここで悟られれば、なまえに気がある中也は無理にでもなまえを攫うだろうから。
ばらすならなまえが私以外、誰も見れなくなったくらいがいい。私以外、誰の手も取れなくなったくらいがいい。そうして人の大切な宝物を奪おうとする奴は私と同じように狂ってしまったなまえを見て絶望すればいい。
仄暗い感情が私の内を支配する。
けれど私は歪んだ感情を抑えて、いつものようにおどけた。
「へぇー、何かに噛み付かれてしまったのかな?可哀想に。あの白く純粋無垢のような肌に穢れた色を落とされるとは。」
「おどけてんじゃねぇ。アレやったのは手前だろ。」
鋭く力強い視線が私を睨みつける。
あぁー、めんどくさい。確かに接吻印を落としたのは私だが何が問題だと言うのだろう。
私は なまえを一生離す気はないし、なまえだって私との男女の戯れ事を嫌がる素振りもない。ならば君が入ってくる問題ではないだろう?たとえ君がなまえのことを一人の女性として好いていたとしても、私は君に、というより誰にもあの子を渡すつもりは無い。何か問題でも?
と思ったことをそのままいえば私は中也に一発殴りつけられた。それも結構重い拳で。
「……手前の身勝手で醜悪なその澱んだ想いは、いつか手前自身も……なまえも、殺すだろうよ。」
殴られた頬を抑え、中也の言葉を聞けば思わずわらいが込み上げた。
「ふふっ、ふふふふふふ、ふふふふふふふふふ、」
「……何が可笑しい。」
「いーや?何もおかしくないさ。君の言うことは正しい。しかし、ただ一つ間違っているとすれば、君は私がなまえを殺すことを決定事項のように言ったことだ。私はなまえを殺さない。」
なまえが私だけを見ている限りはね。
そう付け足せば矢張り中也は顔を顰めた。
ある会合の日。
地位や権力に擦り寄る男を適当にあしらい、金や容姿目当てに擦り寄る女には適当な言葉を投げ掛け、なまえとは違う匂いに不快さを感じ、密かに眉を顰める。
組織に負債にならないよう当たり障り無い言葉を返し、「どうか娘を婚約者に……」と娘を使って縁を繋げようとする奴に飽き飽きする。
あー、帰りたい。馬鹿は嫌いだ。話が通じないし進まない。ここにいるのは馬鹿ばっかりだ。私が妹だけに寵愛しているのは噂で知ってるはずだし。
私はなまえ以外娶る気は無いし、なまえ以外の女ははっきり言ってどうでもいい。それなのにワンチャンあると思うなんて、馬鹿な奴。
そんな馬鹿な奴の相手をするのも飽きてきて、会合も終盤だしポートマフィアの顔としての役目は中也に全て押し付け、自分は使われていない人気のない控え室へと入った。
椅子に会合での苛立ちをぶつけるようにドカッと座り、深く溜息を吐く。
森さんも、今日の会合には中也も姐さんも来てるんだから私まで連れてこなくたっていいのに。嫌がらせも大概にして欲しい。
「おや、ポートマフィアの太宰殿ではありませんか。」
今度首領の幼女趣味を顕にした写真、組織にばらまいてやる。と企んでいれば部屋に誰かが入ってきた。確かこいつは最近大きくなり始めた財閥の跡取りだ。
「あぁ、___殿。何か私に御用でも?」
「いえいえ、ポートマフィアの五代幹部に最も近いといわれる貴方様に覚えていて頂けるなんて、それだけで私めは満足でございます。」
男は狐のように目を細め、笑いながらどうでもいい今後とやらの話を勝手に一人でペラペラと話していく。あぁ、これじゃぁせっかく控え室で休みに来たのに意味が無い。
「___ところで太宰殿。貴殿には容姿端麗、才色兼備な貴殿によく似た妹がいるとか。」
どうでもいい、と思っていた私の心は妹の話となり、黒く澱み始める。そんな言葉じゃ表せないほど、あの子は美しいが褒めてしまえば男の興味が宿ってしまうのであえて謙遜した。
「……いえ、褒めすぎですよ。」
「またまた。お噂はかねがね聞いております。その美しさを前にすれば敵わないとばかりに月は隠れ、花は閉じていき、気品良し、見た目よし、の素晴らしさだとか。」
「……」
「そこで、お話があるのです。組織の政略結婚だと思い、どうか私に妹殿を譲ってはくれないだろうか。私はいずれ財閥のトップとなる男、不自由はさせ____」
バンッ、と聞き慣れた音が部屋に鳴り響く。
右手には黒く光る重く硬いものが握られており、その先端からは硝煙の臭い。あぁ、我慢できずに撃ったのか。と悟った。
この男の言うこと全てに腹が立った。
確かになまえは人々は惑わし、魅了するかのような美しさがある。けれどそれを穢らわしい男の欲を孕んだ目で見られることに苛まれた。私からなまえを奪おうとする行為に頭が沸騰するような怒りを覚えた。
「……」
男のせいでかかってしまった返り血を拭い、近くの硝子で自身の顔を見る。
「……ふふっ、ふふふふふ、」
硝子に映ったのはなまえへの依存と執着に狂った私。口は歪に歪められ、不自然なわらいが不気味さを増す。
私となまえが似ている?そんなのはただの勘違いさ。きっと中也辺りに言ったら呆れられる。私となまえはちっとも似ていない。
だってあの子はまだ私のように狂いきってはいないのだから。
なまえが他の物に興味を持たないように、なまえの目に私以外の人間が映らないように、この狭く閉じられた空間から出したくなかった。
「太宰なまえ、先日の任務により重傷を負い死亡。報告は以上です。」
だから私は先日の会合にはずっと考えていた計画を実行した。
計画___それはなまえを書類上で死なせ、部屋から出さないようにする計画。
私は仕事で執務室を何日か空けることはあるが幸い私の執務室は一週間は何もしなくても生活できるし、なまえも部下も執務室から出るな、入るな、と言っておけば誰も出入りするものはなく、完璧に社会上でなまえは姿を消すことになる。
だから私は自身の醜悪な欲を尊重し、誰も乗り越えられないような壁を作った。
中也なんかはなまえを一人の女性として愛していたから信じられないという顔で呆然としている。
「と、太宰君は言ってるがどう思う?中也君。」
「信じられませんね。太宰の木偶が何かやったようにしか思えません。」
私を睨み付ける中也は敵意に溢れている。
きっと野性的勘の鋭い中也は本能で私がなまえを隠したことに気付いているのだろう。
どう?中也。人間になった君が初めて愛した女性は君の最も嫌いな男によって隠される。
可哀想に、と自然と口から言葉は出るのにそれに伴う同情心や憐れみは欠片も感じなかった。だって今の私はなまえを独占できることに対する愉悦に浸っていたから。君に対する想いなんて何も無かった。
私の醜悪な心を現すかのように口元は歪に嗤った。
自分のなまえに対する想いが家族愛とは違うものだと悟った時から、この愛が醜悪なものだと気付いた時から、少しづつ、少しづつ私の色に染めていたなまえ。
今日はその計画の最終段階だった。
前日に中也のバイクに爆弾をしかけ、翌日中也が乗り込んでくるだろう時間に私はある部屋の一室、そこでなまえのいる執務室に仕込んだ監視カメラや盗聴器から様子を見ていた。
なまえはいい子だから“部屋から出てはいけない”という私との約束を守っている。だから中也がなまえのいる執務室に乗り込んだ時、彼なら必ず軟禁状態にあるなまえに手を差し伸べるだろう。
私の目的はなまえが私以外の手を取らず、私と同じ感情を抱くこと。今回は実験だった。どこまで私と同じように狂ったかの。少なからずなまえは中也に懐いていたし、まだ私色に染まってなければ中也の手を取り、私から逃げるのだろう。実験するには最適な相手だ。
そして荒々しくドアが開き、乱暴に入ってきたのは予想通り中也だった。
「は、 なまえ……?」
中也はなまえが生きていることが信じられないのか、目が落ちるのではないかいうほど開き、生存確認をするようにぺたぺたとなまえに触る。
あぁ、実験に必要なことだと分かっていても腹が立つ。男も何も知らなそうな真っ白な存在のなまえに触れたい、抱きたい、というある程度の欲をもつ奴が触っていると思うと自然と殺気立つ。
そのせいか、中也に監視カメラの場所がバレてしまった。ギロりと普段より数十倍悪い目付きが苛立ちも隠さずにカメラ越しに真っ直ぐ私を睨む。
中也は私への殺意を隠すことなく当て付けるが、なまえには説得するように中也らしい言葉で語りかけていた。
流石相棒。中也の言うことは全て正論だった。私がテレビも雑誌も、外界からの情報源となるものを置かないのはなまえに外の世界に興味を持たれないため、
私が態々面倒な偽装までして書類上なまえが死んだことにしたのは依存に執着、独占欲に塗れた私の行動結果、全て相棒の言う通りだった。
一つ、一つ、中也は私が掛けた洗脳を解いていく。そうしてついに、中也はなまえに手を差し伸べた。きっと世間から見れば絶望から見出された希望のように見えるのだろう。
なまえは、私という絶望を捨て、中也という希望に救済されるのだろうか。
そう思えばたんなる予想に過ぎないというのに黒く制御不能な赦せないという感情が私を支配する。
『……ごめん、なさい。』
しかしその感情は盗聴器から聞こえてきたなまえの言葉にピタリと止まる。
荒れた海のように凄惨だった心がなまえのその一言だけで穏やかになるのを感じた。
口元には隠しきれないにやけが生じる。
これから罪を犯すことに対する恐れか、それとも中也に対する申し訳なさなのか、なまえの声は震えていた。
しかし、決意は決めたようで、無意識なのか、意思表明するかのように手を握る。
そこで私は映像を切った。
執務室に戻る前になまえには「川を流れてくる!」と言っちゃったので心中スポットを見つけるついでに川を流れ、本部に戻った。
濡れた身体のまま廊下を気分良く歩けば、前の方から中也が歩いてきた。なまえの部屋の帰りだろう。まだ距離は遠いというのにカメラ越しに見た時と同じように、いやあの時以上の目付きで睨み付けている。
「やぁ、中也。今日も目付きが悪いね。」
気分よく話しかける私とは対称的に、中也は何も言わず睨みつける。
「……いつかぜってぇ、手前をぶっ殺してなまえを手前の檻から出してやる。」
「期待せずに待ってるよ」と嗤いながら返せば中也は舌打ちをして私を睨み付けながら去っていく。君が私を殺してなまえを奪うというのなら、私はなまえを私に捕らえておくとしよう。
「ただいま、いい子にしてたかい?」
なまえの元へ帰ればなまえはいつも通り私を迎え、水に濡れて外套を受け取る。
いつもはそれで私が愚痴って終わりなのだけれど、今日は後ろから私よりも何回りも小さくて暖かいその身体を抱き締めた。
「冷たい、兄さっ、」
冷えた身体に驚き、なまえは離れようとするが、片手でそれを阻止し、もう片方の手で顎をつかみ後ろを向かせ、体温を奪うように深く口付けを交わした。
今日はちゃんといい子に中也の誘いを断れていたから、甘やかすように頭を撫でながら逃げようとする舌を追い、絡めたり、優しく唇をはむはむと甘噛みしたりした。
「にい、さん……」
最初はしっかりしていた呂律も今は回らなくなったのか、すっかり蕩けた様子で私の身体に凭れかかる。
「今日君はとってもいい事をしたからね。優しく可愛がってあげる。」
もし今日中也の誘いに乗っていたら嫌がっても無理矢理身体中の秘密を暴き、暴れる身体を押さえ付けて私の印を残すつもりだった。
けれど私を選んでくれたから、今日は初めてだろうし優しくしてあげようと考え、なまえを横抱きにし、寝台まで運んだ。
「ふふっ、大丈夫。君は私に全て任せて体を預けてくれればいいから。」
私の毒を孕んだ愛に侵されたなまえは従順に私の言うことを自分の意思で聞き、受け入れる準備をしてくれる。
それが嬉しくて、甘やかすように寝台に横になったなまえの髪を梳き、口付ける。
「愛してるよ、なまえ」
「愛してます、……治さん。」
きっと近い未来、私を名前で呼んでくれたなまえは私を兄さんとして見れなくなるだろう。
けれど私はそれが楽しみで仕方なかった。
だって私はずっと焦がれていたのだから。兄としてではなく、一人の男として愛されることを。
私はゆっくりとなまえの服に手を掛ける。
世間では兄妹ですれば罪といわれる行為。
私達が兄妹じゃ無くなるまであと__秒
─────これは私達兄妹の決して赦されない罪を犯したはなし
[完]
アトガキ↓
・初めまして、作者の山猫です。
ずっと書きたかった禁断の兄妹ネタ(太宰視点)書けました!楽しんで頂けたでしょうか?
一応前話と繋がっており、そこでは書ききれなかった物語を書いてみました。
中也さんが夢主に想いを寄せるがそれが実る前に自分に依存させた太宰さん。
恐らく太宰さんがいなければ二人の恋愛は成就していた。
(ちなみにドス君ルートも一応考えてはいた。けど書くのが難しくて断念。太宰さんvs.ドス君の頭脳戦は難しい。)
本人は優秀ではないと思っているようだが、(というより、私が思い込ませたのだが、)妹は元から頭の出来は悪くないし、見た目もいい。一聞けば十どころか百も千も覚えるような器用さも持つのにそれに驕らず、謙虚で人のことを立てるのが上手い、世にいう“いい女”というやつだった。
そんな妹の自分とは違う小さい手を引き、誰にも奪われないように護っているうちに自分の中に家族愛とは別の何かがあると気付くのは早かった。
その“何か”は恋というにはあまりにも黒く澱んでいて、どちらかといえば依存や執着に近い、人から見れば狂った愛情なんだと思う。
妹___なまえを見ると、普段はまるで何処かに置いてきたかのように動かない心が黒く醜悪な何かを巻き付けたように苦しくなる。
その社会の汚さも男の欲も知らない白く純真な肌を私の色に染めあげ、少し強く押せば簡単に折れてしまいそうな華奢なその身に私の印を残したくなる。
けれど今それをすればきっとなまえは優しいから許してくれるだろうけれど、私と同じようにこの薄昏い感情に溺れてはくれないだろうから、今は良い“お兄ちゃん”を演じるんだ。
そうすればなまえは賢いけどいい子だから、大好きな“お兄ちゃん”の言うことは聞いてくれるよね?
なまえは一人が嫌いだった。
だからそれを利用してできる限り私の傍を離さないようにした。
もし、なまえが私の知らないところで私の知らない男と楽しそうに話していたら、男を拷問してなまえを監禁してしまうだろうから。
きっとなまえと一日中一緒ならそれもたのしいだろうが、なまえには怯えられたくも嫌われたくも無いのでできるだけ自分の内に潜む狂気は身を潜めた。
今では無い、今では無い。
ゆっくり、できる限りの速度でなまえが私以外誰も見ないように、誰の手も取らないように、しなくてはならない。
「なまえ……おいで。」
今日もこの醜悪な想いをひた隠し、できる限りの甘い声でなまえを寝台へ誘い込む。
呼べば私以外の奴には見せないような蕾が花開く笑顔を向けるから、私の内にまた邪な想いが産まれる。
私はそんな想いを内側に押しとどめるように、なまえを何処にも逃がさないように抱き込めばそこでやっと満足感が産まれた。
「なまえ」
前はこうやって抱き締めるだけで欲は満たされたのに、日に日に押しとどめる欲はデカく、おぞましいものへ変わっていく。
だから私はそれを悟られず、堕としていくためにゆっくりと距離を縮めていた。
今日はそろそろ次のステップへ進もうか、等と考えながら神に愛されるために造られたような端正な顔立ちに近寄り、私は妹の口を奪った。
あんまり性急に事を運ぶと不審がられるだろうから、長く触れるだけの接吻。
いつも私が傍にいたから恐らくまだ誰も奪えなかったであろう妹の紅く色付いた柔らかい唇を私が奪っていると思うと触れるだけの接吻なのに酷く興奮した。
「兄さん……?」
なまえは当たり前だが驚いているようで、困惑の声を上げる。きっとこのまま雄としての顔を見せれば距離を取られてしまうだろうから、私はまた仮面を被りいつも通り、良いお兄ちゃんのフリをした。
そうすれば、これはただの愛情表現で兄妹でやってもなんの問題もないんだよ。と言うだけで可愛くて可哀想ななまえはそれを信じるだろうから。
あぁ、でも。
男女としてのそれに興奮してしまった私は仮面を被りきれているだろうか。
「……いいかい、なまえ。これは一種の愛情表現。私達がしても普通のことだよ。」
洗脳するように耳元でいえば困惑するなまえの気配がした。
けれどなまえは困惑はすれど、嫌がる素振りは無かった。
「これからは毎日しようね。」
だから私の内を満たすためになんでもない、普通のことのようにいえばいい子のなまえはこくりと一つ頷いた。
それからは毎日私達は接吻し、時には穢い蝿が寄ってこないよう、なまえに接吻印を付けた。はっきり言ってしまえば真っ白な罪なんて知らないような肌に、私の色を落とすのはかなり興奮してしまった。
身体が大人に近付けば近付く程、妹の女性特有の甘い匂いにやられ、子供の時には沸かなかった感情が溢れてくる。
「なまえ、これは私以外にはしてはいけないよ?」
「?愛情表現として友人、恋人にはしていいんじゃないの?」
愛情表現とは言ったが、なまえの女らしい紅く色付いた唇が私以外の誰かに触れること等赦せるはずもなく、私は妹の想いを利用した。
「……これは自分の一番大切な人にだけする行為なんだ。君の一番大切な人は私だろう?」
「うん。」
なまえが今この時点で私には家族愛しか抱いていないことは知っていた。だから私はそれを利用して決して男も女もなまえに触れさせないようにした。
「なら他の人にはしてはいけないよ。」
分かった、といい子に返事をするなまえ。
私はいい子だね。と満足気に笑い、首元に罪の証を落とした。
「手前の愛は異常だ。」
ある日の任務の待機時間、今最も幹部に近い立場にある私に対し、恐れずに敵意を込めて言ったのは私が最も嫌いな男、中原中也だった。
「……いきなり何?脈略が無さすぎるんだけど。それとも話の流れというものも考えられない程君の頭はポンコツになっちゃったのかな?」
「誰の頭がポンコツだ。この唐変木が!!……この間、手前が任務で居ねぇ時こっちに混ざってた手前の書類を執務室まで届けに行ったんだよ。」
「へぇ……」と軽く相打ちをしながらもいつの間に来てたんだと疑う。
気付かなかった。恐らく私と中也が仲が悪いことをなまえは知っているから争いごとをあまり好まないなまえは黙っていたのだろう。
「相変わらずなまえは手前の妹とは思えねぇほど性格も良かったし、気遣いも出来たいい女だった。」
「なぁーに人の妹に発情してんの?ちゅうやくんは万年発情期なのかな?」
「誰が万年発情期だ。殺すぞ!……で、気付いた。彼奴の首元に接吻印がついてることに。」
中也の言葉に口は歪んだ笑みを浮かべそうになったが必死にこらえた。きっとここで悟られれば、なまえに気がある中也は無理にでもなまえを攫うだろうから。
ばらすならなまえが私以外、誰も見れなくなったくらいがいい。私以外、誰の手も取れなくなったくらいがいい。そうして人の大切な宝物を奪おうとする奴は私と同じように狂ってしまったなまえを見て絶望すればいい。
仄暗い感情が私の内を支配する。
けれど私は歪んだ感情を抑えて、いつものようにおどけた。
「へぇー、何かに噛み付かれてしまったのかな?可哀想に。あの白く純粋無垢のような肌に穢れた色を落とされるとは。」
「おどけてんじゃねぇ。アレやったのは手前だろ。」
鋭く力強い視線が私を睨みつける。
あぁー、めんどくさい。確かに接吻印を落としたのは私だが何が問題だと言うのだろう。
私は なまえを一生離す気はないし、なまえだって私との男女の戯れ事を嫌がる素振りもない。ならば君が入ってくる問題ではないだろう?たとえ君がなまえのことを一人の女性として好いていたとしても、私は君に、というより誰にもあの子を渡すつもりは無い。何か問題でも?
と思ったことをそのままいえば私は中也に一発殴りつけられた。それも結構重い拳で。
「……手前の身勝手で醜悪なその澱んだ想いは、いつか手前自身も……なまえも、殺すだろうよ。」
殴られた頬を抑え、中也の言葉を聞けば思わずわらいが込み上げた。
「ふふっ、ふふふふふふ、ふふふふふふふふふ、」
「……何が可笑しい。」
「いーや?何もおかしくないさ。君の言うことは正しい。しかし、ただ一つ間違っているとすれば、君は私がなまえを殺すことを決定事項のように言ったことだ。私はなまえを殺さない。」
なまえが私だけを見ている限りはね。
そう付け足せば矢張り中也は顔を顰めた。
ある会合の日。
地位や権力に擦り寄る男を適当にあしらい、金や容姿目当てに擦り寄る女には適当な言葉を投げ掛け、なまえとは違う匂いに不快さを感じ、密かに眉を顰める。
組織に負債にならないよう当たり障り無い言葉を返し、「どうか娘を婚約者に……」と娘を使って縁を繋げようとする奴に飽き飽きする。
あー、帰りたい。馬鹿は嫌いだ。話が通じないし進まない。ここにいるのは馬鹿ばっかりだ。私が妹だけに寵愛しているのは噂で知ってるはずだし。
私はなまえ以外娶る気は無いし、なまえ以外の女ははっきり言ってどうでもいい。それなのにワンチャンあると思うなんて、馬鹿な奴。
そんな馬鹿な奴の相手をするのも飽きてきて、会合も終盤だしポートマフィアの顔としての役目は中也に全て押し付け、自分は使われていない人気のない控え室へと入った。
椅子に会合での苛立ちをぶつけるようにドカッと座り、深く溜息を吐く。
森さんも、今日の会合には中也も姐さんも来てるんだから私まで連れてこなくたっていいのに。嫌がらせも大概にして欲しい。
「おや、ポートマフィアの太宰殿ではありませんか。」
今度首領の幼女趣味を顕にした写真、組織にばらまいてやる。と企んでいれば部屋に誰かが入ってきた。確かこいつは最近大きくなり始めた財閥の跡取りだ。
「あぁ、___殿。何か私に御用でも?」
「いえいえ、ポートマフィアの五代幹部に最も近いといわれる貴方様に覚えていて頂けるなんて、それだけで私めは満足でございます。」
男は狐のように目を細め、笑いながらどうでもいい今後とやらの話を勝手に一人でペラペラと話していく。あぁ、これじゃぁせっかく控え室で休みに来たのに意味が無い。
「___ところで太宰殿。貴殿には容姿端麗、才色兼備な貴殿によく似た妹がいるとか。」
どうでもいい、と思っていた私の心は妹の話となり、黒く澱み始める。そんな言葉じゃ表せないほど、あの子は美しいが褒めてしまえば男の興味が宿ってしまうのであえて謙遜した。
「……いえ、褒めすぎですよ。」
「またまた。お噂はかねがね聞いております。その美しさを前にすれば敵わないとばかりに月は隠れ、花は閉じていき、気品良し、見た目よし、の素晴らしさだとか。」
「……」
「そこで、お話があるのです。組織の政略結婚だと思い、どうか私に妹殿を譲ってはくれないだろうか。私はいずれ財閥のトップとなる男、不自由はさせ____」
バンッ、と聞き慣れた音が部屋に鳴り響く。
右手には黒く光る重く硬いものが握られており、その先端からは硝煙の臭い。あぁ、我慢できずに撃ったのか。と悟った。
この男の言うこと全てに腹が立った。
確かになまえは人々は惑わし、魅了するかのような美しさがある。けれどそれを穢らわしい男の欲を孕んだ目で見られることに苛まれた。私からなまえを奪おうとする行為に頭が沸騰するような怒りを覚えた。
「……」
男のせいでかかってしまった返り血を拭い、近くの硝子で自身の顔を見る。
「……ふふっ、ふふふふふ、」
硝子に映ったのはなまえへの依存と執着に狂った私。口は歪に歪められ、不自然なわらいが不気味さを増す。
私となまえが似ている?そんなのはただの勘違いさ。きっと中也辺りに言ったら呆れられる。私となまえはちっとも似ていない。
だってあの子はまだ私のように狂いきってはいないのだから。
なまえが他の物に興味を持たないように、なまえの目に私以外の人間が映らないように、この狭く閉じられた空間から出したくなかった。
「太宰なまえ、先日の任務により重傷を負い死亡。報告は以上です。」
だから私は先日の会合にはずっと考えていた計画を実行した。
計画___それはなまえを書類上で死なせ、部屋から出さないようにする計画。
私は仕事で執務室を何日か空けることはあるが幸い私の執務室は一週間は何もしなくても生活できるし、なまえも部下も執務室から出るな、入るな、と言っておけば誰も出入りするものはなく、完璧に社会上でなまえは姿を消すことになる。
だから私は自身の醜悪な欲を尊重し、誰も乗り越えられないような壁を作った。
中也なんかはなまえを一人の女性として愛していたから信じられないという顔で呆然としている。
「と、太宰君は言ってるがどう思う?中也君。」
「信じられませんね。太宰の木偶が何かやったようにしか思えません。」
私を睨み付ける中也は敵意に溢れている。
きっと野性的勘の鋭い中也は本能で私がなまえを隠したことに気付いているのだろう。
どう?中也。人間になった君が初めて愛した女性は君の最も嫌いな男によって隠される。
可哀想に、と自然と口から言葉は出るのにそれに伴う同情心や憐れみは欠片も感じなかった。だって今の私はなまえを独占できることに対する愉悦に浸っていたから。君に対する想いなんて何も無かった。
私の醜悪な心を現すかのように口元は歪に嗤った。
自分のなまえに対する想いが家族愛とは違うものだと悟った時から、この愛が醜悪なものだと気付いた時から、少しづつ、少しづつ私の色に染めていたなまえ。
今日はその計画の最終段階だった。
前日に中也のバイクに爆弾をしかけ、翌日中也が乗り込んでくるだろう時間に私はある部屋の一室、そこでなまえのいる執務室に仕込んだ監視カメラや盗聴器から様子を見ていた。
なまえはいい子だから“部屋から出てはいけない”という私との約束を守っている。だから中也がなまえのいる執務室に乗り込んだ時、彼なら必ず軟禁状態にあるなまえに手を差し伸べるだろう。
私の目的はなまえが私以外の手を取らず、私と同じ感情を抱くこと。今回は実験だった。どこまで私と同じように狂ったかの。少なからずなまえは中也に懐いていたし、まだ私色に染まってなければ中也の手を取り、私から逃げるのだろう。実験するには最適な相手だ。
そして荒々しくドアが開き、乱暴に入ってきたのは予想通り中也だった。
「は、 なまえ……?」
中也はなまえが生きていることが信じられないのか、目が落ちるのではないかいうほど開き、生存確認をするようにぺたぺたとなまえに触る。
あぁ、実験に必要なことだと分かっていても腹が立つ。男も何も知らなそうな真っ白な存在のなまえに触れたい、抱きたい、というある程度の欲をもつ奴が触っていると思うと自然と殺気立つ。
そのせいか、中也に監視カメラの場所がバレてしまった。ギロりと普段より数十倍悪い目付きが苛立ちも隠さずにカメラ越しに真っ直ぐ私を睨む。
中也は私への殺意を隠すことなく当て付けるが、なまえには説得するように中也らしい言葉で語りかけていた。
流石相棒。中也の言うことは全て正論だった。私がテレビも雑誌も、外界からの情報源となるものを置かないのはなまえに外の世界に興味を持たれないため、
私が態々面倒な偽装までして書類上なまえが死んだことにしたのは依存に執着、独占欲に塗れた私の行動結果、全て相棒の言う通りだった。
一つ、一つ、中也は私が掛けた洗脳を解いていく。そうしてついに、中也はなまえに手を差し伸べた。きっと世間から見れば絶望から見出された希望のように見えるのだろう。
なまえは、私という絶望を捨て、中也という希望に救済されるのだろうか。
そう思えばたんなる予想に過ぎないというのに黒く制御不能な赦せないという感情が私を支配する。
『……ごめん、なさい。』
しかしその感情は盗聴器から聞こえてきたなまえの言葉にピタリと止まる。
荒れた海のように凄惨だった心がなまえのその一言だけで穏やかになるのを感じた。
口元には隠しきれないにやけが生じる。
これから罪を犯すことに対する恐れか、それとも中也に対する申し訳なさなのか、なまえの声は震えていた。
しかし、決意は決めたようで、無意識なのか、意思表明するかのように手を握る。
そこで私は映像を切った。
執務室に戻る前になまえには「川を流れてくる!」と言っちゃったので心中スポットを見つけるついでに川を流れ、本部に戻った。
濡れた身体のまま廊下を気分良く歩けば、前の方から中也が歩いてきた。なまえの部屋の帰りだろう。まだ距離は遠いというのにカメラ越しに見た時と同じように、いやあの時以上の目付きで睨み付けている。
「やぁ、中也。今日も目付きが悪いね。」
気分よく話しかける私とは対称的に、中也は何も言わず睨みつける。
「……いつかぜってぇ、手前をぶっ殺してなまえを手前の檻から出してやる。」
「期待せずに待ってるよ」と嗤いながら返せば中也は舌打ちをして私を睨み付けながら去っていく。君が私を殺してなまえを奪うというのなら、私はなまえを私に捕らえておくとしよう。
「ただいま、いい子にしてたかい?」
なまえの元へ帰ればなまえはいつも通り私を迎え、水に濡れて外套を受け取る。
いつもはそれで私が愚痴って終わりなのだけれど、今日は後ろから私よりも何回りも小さくて暖かいその身体を抱き締めた。
「冷たい、兄さっ、」
冷えた身体に驚き、なまえは離れようとするが、片手でそれを阻止し、もう片方の手で顎をつかみ後ろを向かせ、体温を奪うように深く口付けを交わした。
今日はちゃんといい子に中也の誘いを断れていたから、甘やかすように頭を撫でながら逃げようとする舌を追い、絡めたり、優しく唇をはむはむと甘噛みしたりした。
「にい、さん……」
最初はしっかりしていた呂律も今は回らなくなったのか、すっかり蕩けた様子で私の身体に凭れかかる。
「今日君はとってもいい事をしたからね。優しく可愛がってあげる。」
もし今日中也の誘いに乗っていたら嫌がっても無理矢理身体中の秘密を暴き、暴れる身体を押さえ付けて私の印を残すつもりだった。
けれど私を選んでくれたから、今日は初めてだろうし優しくしてあげようと考え、なまえを横抱きにし、寝台まで運んだ。
「ふふっ、大丈夫。君は私に全て任せて体を預けてくれればいいから。」
私の毒を孕んだ愛に侵されたなまえは従順に私の言うことを自分の意思で聞き、受け入れる準備をしてくれる。
それが嬉しくて、甘やかすように寝台に横になったなまえの髪を梳き、口付ける。
「愛してるよ、なまえ」
「愛してます、……治さん。」
きっと近い未来、私を名前で呼んでくれたなまえは私を兄さんとして見れなくなるだろう。
けれど私はそれが楽しみで仕方なかった。
だって私はずっと焦がれていたのだから。兄としてではなく、一人の男として愛されることを。
私はゆっくりとなまえの服に手を掛ける。
世間では兄妹ですれば罪といわれる行為。
私達が兄妹じゃ無くなるまであと__秒
─────これは私達兄妹の決して赦されない罪を犯したはなし
[完]
アトガキ↓
・初めまして、作者の山猫です。
ずっと書きたかった禁断の兄妹ネタ(太宰視点)書けました!楽しんで頂けたでしょうか?
一応前話と繋がっており、そこでは書ききれなかった物語を書いてみました。
中也さんが夢主に想いを寄せるがそれが実る前に自分に依存させた太宰さん。
恐らく太宰さんがいなければ二人の恋愛は成就していた。
(ちなみにドス君ルートも一応考えてはいた。けど書くのが難しくて断念。太宰さんvs.ドス君の頭脳戦は難しい。)