太宰治
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私には昔から自慢の兄がいる。
物心着く頃にはもう私の手を引いていつも助けてくれた私だけに優しい自慢の兄。
兄に手を引かれて育った私は当然兄と一緒にポートマフィアへ入った。兄さんと離れるなんてお互い考えられなかったし、考えたくもなかった。
そうして兄さんに手を引かれるままポートマフィアに入ると、兄さんは元から良かった頭脳を使ってどんどん出世していった。
周りの人は兄さんのことを陰で悪魔の子だとか冷血だとか罵っていたけど私は一人では何も出来ない私の手を引いてくれた兄さんの手の暖かい体温を知っている。
周りがどんなに兄さんを罵ろうと兄さんは私の自慢の兄には変わりなかった。
私は一人が嫌いだった。
とても寂しくて、虚しい気分になるから。
だからできる限りの時間は兄さんと過ごして、寝る時も一緒だった。
「なまえ……おいで。」
今日もあの甘くて蕩けるような心地よい声音で寝台へ呼ばれる。
だから私は今日も兄さんの隣に寝転び、薄い胸板に顔を沈めた。そうすると兄さんはこの世の全てから私を守るようにぎゅっと抱きしめてくれるのだ。
「なまえ」
名前を呼ばれて顔を上げると思いのほか兄さんとの距離は近かった。もう少し離れた方がいいのかな、と離れようとするとそれよりも先に兄さんは自分の口を私の唇の押し当てた。
長く触れるだけの接吻。
私達は兄妹なのにこんなことしていいのかな、と考えたが、兄さんとこうしていると幸せな気分を味わえたから抵抗はしなかった。
「兄さん……?」
ゆっくりと離れていく兄さんの感触を少し残念に思いながら上を見上げるといつもと雰囲気の違う兄さんがそこにいた気がした。
いつもは優しく見守る目で私を見てくれるけど、今日はなんだか恐ろしい肉食獣のような目をしていた。このままでは骨の髄まで食べられてしまいそうだ。
「……いいかい、なまえ。これは一種の愛情表現。私達がしても普通のことだよ。」
兄さんは囁くように私の耳元で言った。
一種の愛情表現、私達兄妹がしてもいいこと、その言葉が頭でグルグル回る。
こんなことしていいのか分からなかったけど、兄さんがそう言うならきっとそうなんだ。
「これからは毎日しようね。」
嫌悪感も疑問も感じなくなった私は一つコクリと頷いた。
それから今までしてこなかったのが嘘のように毎日私達は接吻をした。兄さんは兄妹でこういう事をするのは普通の事だと言うし、私も嫌悪感を感じなかったので、したりされたりを毎日繰り返している。
「なまえ、これは私以外にはしてはいけないよ?」
「?愛情表現として友人、恋人にはしていいんじゃないの?」
「……これは自分の一番大切な人にだけする行為なんだ。君の一番大切な人は私だろう?」
「うん。」
「なら他の人にはしてはいけないよ。」
分かった、そう返事をすれば兄さんは満足気に笑う。
ある日兄さんの溜めた書類を片していると荒々しくドアが開いた。
敵襲かな、と常備している銃に手をかけ振り向けばそこにいたのは兄さんだった。兄さんは虚ろな目で私を見ると、腕を掴み、寝台に連れて行った。
寝台に着くと勢いよく投げ出され、私の上に兄さんが乗って胸に顔を埋め、ピクリとも動かない。
寝てるのか確認しようと顔を近寄らせれば酒と香水の匂いがした。今日は仕事で出てくると言っていたからきっと会合か何かをしてきたのだろう。
「兄さっ、」
意識があるか確認するため、名を呼ぼうとすればいつものように口を塞がれた。
けれどいつもとは違って触れるだけの浅いやつではなく、熱くて溶けそうな深い接吻。
兄さんの舌はぬるりと私の中に侵入し、まるで生き物のように動きまわる。息が出来ないほど苦しいその行為から逃げるように体を仰け反らせ、顔を動かすと兄さんは後頭部に手をやり、より深く交わろうとする。
苦しい、溺れそう、溶けてしまう、その思いにドンドンと胸板を叩けば兄さんはやっと離れた。離れて見えた兄さんの目は今まで見たことない程情欲のそれが見えた。
あぁ、食べられてしまう。そう悟れば兄さんは再び二度目の深い接吻をした。
兄さんになら、食べられてもいい。そう願った私は今度は抵抗しなかった。
「これからこの部屋から出てはいけないよ?」
ある日兄さんは唐突にそう言った。
この日は兄さんの幹部昇進祝いをして酒がまわっていた。何も考えられなくなった頭で私はどうして?と心の中で聞いた。
「私は今日から幹部になっただろ?もしなまえの存在が明らかになってしまえば幹部の妹として狙われ可能性が高くなる。だから他の人が“なまえは私の妹”と忘れるまでここの部屋に隠れていて欲しいんだ。」
兄さんは懇願するように言う。
らしくない。私は貴方が望むならなんだってするのに。
そう思いを込めながら兄さんの願いに一つ頷いた。
「ありがとう。愛してるよ、なまえ」
私も愛してる。
兄さんに部屋から出ないように言われて大分月日が経ったように感じられる。もう部屋から出てもいいのかな、なんて偶に考えるがドアへ向かうと必ず兄さんが邪魔するのできっとまだ出ては行けないのだと思い、大人しくしていた。
もう長い時間首領にも紅葉の姐様にも中也さんにも会っていないし、なんだか仕事も減った気がして毎日退屈な日々を過ごしていた。
一人で過ごしていると“私が選んだ選択は本当に正しかったのか、”なんて考える。
けれどそんな時は決まって兄さんから電話が掛かってきたり、兄さんが帰ってきたりするのでそんな莫迦な考えもすぐに消えてしまう。
兄さんは寝る前に毎日、“君のした選択は正しい。”と言ってくれる。頭に染み込むように毎日毎日、耳元で囁き、たっぷり甘やかしてくれるからきっと兄さんの言うことは正しいのだろう。私は静かに目を瞑り、兄さんに体を預けた。
ある日荒々しくドアが開いたと思えばそこには懐かしい顔をした人がいた。
「は、 なまえ……?」
何故か驚いた顔で此方を凝視しているのは兄さんが大嫌いだと嘆いていた中也さんだ。中也さんは「テメェ太宰!!また俺のバイクに爆弾しかけやがったな!?つーかとっとと報告書書け!!」と言いながら入ってきたので兄さんに用事があったのだろう。
「お久しぶりです、中也さん。兄さんは今出掛けていて、いつ帰るか分からないんです。」
家を出る時は「川を流れてくる!」と言いながら出て行ってしまったので帰ってくるにはもうしばらく時間が掛かるだろう。
ここで待つか聞こうとすればまるで生存確認するようにぺたぺたと頬や髪を触られた。
何故だろう、先程からまるで死人を見た、という顔で私を見てくる。
「あの……」
声を掛ければ困惑しながらもこちらを見る。
「テメェ、生きてたんだな……」
彼は私を死人のように見る、と思ったがそれは勘違いでは無かったようで、どうやら私は死んだことにされてるらしい。
「さてはあの糞鯖のせいか……」と顔を顰めながら苦い顔で言う中也さん。
何か勘違いしているようなので兄さんは鈍間で一人じゃ何も出来ない私を守るためにこうしてくれてるんだ、と説明すればますます顔は険しくなる。
「あ゙ぁ゙〜、めんどくせぇ……」と髪を掻きながら一つ大きなため息を吐くと「いいか、よく聞けよ。」と逃がさないためにか、ガシッと肩を掴んで真っ直ぐと眩しい目がどこか歪んでしまった私を射貫く。
「いいか、テメェは一人じゃ何も出来ないと思ってるようだが……ハッキリ言ってテメェは有能だ。なんでも器用にこなすくせに相手を立てるのも上手い。出来た奴だった。」
「ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです。」
頭を下げれば微妙な顔をされる。
私は何か間違った対応をしてしまったのだろうか。
「世辞じゃねぇ。テメェは誰から見てもいい女だったんだよ。……今回、太宰の木偶がなまえが死んだと報告したのは妹を守るため、なんて綺麗なもんじゃねぇ。執着に依存、独占欲に塗れたあいつの動いた結果だろ。」
ビシッと指を指され、自信を持って言われればそうかもしれない。とも思えた。
「けど、全部私が選択した結果だから。」
この部屋にいると決めたのも兄さんとそういうことをしてもいいと決めたのも全部私だ。
「それはテメェが洗脳されてんだよ。ご丁寧に毎日毎日寝る前にでも今までの選択は正しい、みたいなこと言って刷り込んでんだろ?」
そう言われて驚いてしまう。確かに私は毎晩寝台の中で囁かれているけど、どうして分かったんだろう。
「あのヤンデレシスコン野郎がやりそうなこった。そうして洗脳してこんな狭くて何もない世界に閉じ込めたんだろ。」
そう言われ、改めて周りを見る。
部屋の中は広かった。けれどテレビや雑誌などの外への情報源が何もなくて、確かにそれは言い得て妙だと思った。
「おら、外出んぞ。」
「……え、」
「こんなとこに閉じ込められて出たいとは思わねぇのかよ。」
考えたことも無かった。
だってこの部屋は私の世界で、これ以上広い世界を私は知らない。
「ほら。」と差し出された兄さん以外の手を取っていいのか私は知らない。
「……ごめん、なさい」
私は、震える声でその手を振り払った。
私は兄さんのもので兄さん以外の手を取ってはいけない、
例えそれが洗脳された故の考えであったとしても、私は兄さん以外の手を取りたく無かった。
中也さんは少しだけ顔を顰めたが、「……そうかよ。」と一言だけいって伸ばした手を引っ込めた。けれどその手を追いたいとは思えなかった。
「ただいま、いい子にしてたかい?」
兄さんは今日は何故か上機嫌で帰ってきた。
普段なら今日もなまえと死ぬに相応しい自殺スポットが見つからなかったよ〜と不機嫌そうに帰ってくるのに。
なんだか珍しく思いながらも水を吸って重くなった外套を受け取り、洗濯機へ持っていこうとした。けれどそうする前に兄さんに後ろから引かれ、包み込むように抱きしめられた。
「冷たい、兄さっ、」
冷えた体に驚き、思わず体を離そうとすると片手でそれを阻止され、もう片方の手で顔を後ろに向かせ、深く口付けを交わした。
合わせたばかりの頃は冷たかったくせに深く交わるそれは熱さを帯び始め、思考に霧が掛かったように動かなくなる。
口内で勝手に動きまわるそれは甘やかすように丁寧に事を運んでくれた。
「にい、さん……」
快楽に舌が回らない。視界がぼやけてしまう。けれど兄さんがわらっているのだけはなんとなく分かった。
「今日君はとってもいい事をしたからね。優しく可愛がってあげる。」
唇をなぞる兄さんの手は冷たかったけれど、それに反して視線はとても熱く感じた。
そのまま私は横抱きにして寝台まで運ばれる。
「ふふっ、大丈夫。君は私に全て任せて体を預けてくれればいいから。」
その言葉に私は兄さんが言うならと従った。
本当は私も兄さんも狂っていることも異常なことも知っていた。
だけど、これが洗脳だとしても、私は兄さんがいるならどこまで堕ちていくよ。
「愛してるよ、なまえ」
「愛してます、……治さん。」
きっと近い未来、私は兄さんを兄さんとして見れなくなる。だけどそれで私は幸せだから。
兄さんが兄さんじゃ無くなるまであと__秒
兄さんはゆっくりと私の服に手を掛けた。
[完]
アトガキ↓
・初めまして、作者の山猫です。
ずっと書きたかった禁断の兄妹ネタ書けました!楽しんで頂けたでしょうか?これシリーズ化するか地味に悩んだんですけど短編で書きました!
今回のお話は 隠れヤンデレシスコンなお兄ちゃんな太宰さん×太宰さんにじわじわと洗脳されていく妹 が書きたかったんです……!
次は兄(太宰さん)視点書きます。(多分)
物心着く頃にはもう私の手を引いていつも助けてくれた私だけに優しい自慢の兄。
兄に手を引かれて育った私は当然兄と一緒にポートマフィアへ入った。兄さんと離れるなんてお互い考えられなかったし、考えたくもなかった。
そうして兄さんに手を引かれるままポートマフィアに入ると、兄さんは元から良かった頭脳を使ってどんどん出世していった。
周りの人は兄さんのことを陰で悪魔の子だとか冷血だとか罵っていたけど私は一人では何も出来ない私の手を引いてくれた兄さんの手の暖かい体温を知っている。
周りがどんなに兄さんを罵ろうと兄さんは私の自慢の兄には変わりなかった。
私は一人が嫌いだった。
とても寂しくて、虚しい気分になるから。
だからできる限りの時間は兄さんと過ごして、寝る時も一緒だった。
「なまえ……おいで。」
今日もあの甘くて蕩けるような心地よい声音で寝台へ呼ばれる。
だから私は今日も兄さんの隣に寝転び、薄い胸板に顔を沈めた。そうすると兄さんはこの世の全てから私を守るようにぎゅっと抱きしめてくれるのだ。
「なまえ」
名前を呼ばれて顔を上げると思いのほか兄さんとの距離は近かった。もう少し離れた方がいいのかな、と離れようとするとそれよりも先に兄さんは自分の口を私の唇の押し当てた。
長く触れるだけの接吻。
私達は兄妹なのにこんなことしていいのかな、と考えたが、兄さんとこうしていると幸せな気分を味わえたから抵抗はしなかった。
「兄さん……?」
ゆっくりと離れていく兄さんの感触を少し残念に思いながら上を見上げるといつもと雰囲気の違う兄さんがそこにいた気がした。
いつもは優しく見守る目で私を見てくれるけど、今日はなんだか恐ろしい肉食獣のような目をしていた。このままでは骨の髄まで食べられてしまいそうだ。
「……いいかい、なまえ。これは一種の愛情表現。私達がしても普通のことだよ。」
兄さんは囁くように私の耳元で言った。
一種の愛情表現、私達兄妹がしてもいいこと、その言葉が頭でグルグル回る。
こんなことしていいのか分からなかったけど、兄さんがそう言うならきっとそうなんだ。
「これからは毎日しようね。」
嫌悪感も疑問も感じなくなった私は一つコクリと頷いた。
それから今までしてこなかったのが嘘のように毎日私達は接吻をした。兄さんは兄妹でこういう事をするのは普通の事だと言うし、私も嫌悪感を感じなかったので、したりされたりを毎日繰り返している。
「なまえ、これは私以外にはしてはいけないよ?」
「?愛情表現として友人、恋人にはしていいんじゃないの?」
「……これは自分の一番大切な人にだけする行為なんだ。君の一番大切な人は私だろう?」
「うん。」
「なら他の人にはしてはいけないよ。」
分かった、そう返事をすれば兄さんは満足気に笑う。
ある日兄さんの溜めた書類を片していると荒々しくドアが開いた。
敵襲かな、と常備している銃に手をかけ振り向けばそこにいたのは兄さんだった。兄さんは虚ろな目で私を見ると、腕を掴み、寝台に連れて行った。
寝台に着くと勢いよく投げ出され、私の上に兄さんが乗って胸に顔を埋め、ピクリとも動かない。
寝てるのか確認しようと顔を近寄らせれば酒と香水の匂いがした。今日は仕事で出てくると言っていたからきっと会合か何かをしてきたのだろう。
「兄さっ、」
意識があるか確認するため、名を呼ぼうとすればいつものように口を塞がれた。
けれどいつもとは違って触れるだけの浅いやつではなく、熱くて溶けそうな深い接吻。
兄さんの舌はぬるりと私の中に侵入し、まるで生き物のように動きまわる。息が出来ないほど苦しいその行為から逃げるように体を仰け反らせ、顔を動かすと兄さんは後頭部に手をやり、より深く交わろうとする。
苦しい、溺れそう、溶けてしまう、その思いにドンドンと胸板を叩けば兄さんはやっと離れた。離れて見えた兄さんの目は今まで見たことない程情欲のそれが見えた。
あぁ、食べられてしまう。そう悟れば兄さんは再び二度目の深い接吻をした。
兄さんになら、食べられてもいい。そう願った私は今度は抵抗しなかった。
「これからこの部屋から出てはいけないよ?」
ある日兄さんは唐突にそう言った。
この日は兄さんの幹部昇進祝いをして酒がまわっていた。何も考えられなくなった頭で私はどうして?と心の中で聞いた。
「私は今日から幹部になっただろ?もしなまえの存在が明らかになってしまえば幹部の妹として狙われ可能性が高くなる。だから他の人が“なまえは私の妹”と忘れるまでここの部屋に隠れていて欲しいんだ。」
兄さんは懇願するように言う。
らしくない。私は貴方が望むならなんだってするのに。
そう思いを込めながら兄さんの願いに一つ頷いた。
「ありがとう。愛してるよ、なまえ」
私も愛してる。
兄さんに部屋から出ないように言われて大分月日が経ったように感じられる。もう部屋から出てもいいのかな、なんて偶に考えるがドアへ向かうと必ず兄さんが邪魔するのできっとまだ出ては行けないのだと思い、大人しくしていた。
もう長い時間首領にも紅葉の姐様にも中也さんにも会っていないし、なんだか仕事も減った気がして毎日退屈な日々を過ごしていた。
一人で過ごしていると“私が選んだ選択は本当に正しかったのか、”なんて考える。
けれどそんな時は決まって兄さんから電話が掛かってきたり、兄さんが帰ってきたりするのでそんな莫迦な考えもすぐに消えてしまう。
兄さんは寝る前に毎日、“君のした選択は正しい。”と言ってくれる。頭に染み込むように毎日毎日、耳元で囁き、たっぷり甘やかしてくれるからきっと兄さんの言うことは正しいのだろう。私は静かに目を瞑り、兄さんに体を預けた。
ある日荒々しくドアが開いたと思えばそこには懐かしい顔をした人がいた。
「は、 なまえ……?」
何故か驚いた顔で此方を凝視しているのは兄さんが大嫌いだと嘆いていた中也さんだ。中也さんは「テメェ太宰!!また俺のバイクに爆弾しかけやがったな!?つーかとっとと報告書書け!!」と言いながら入ってきたので兄さんに用事があったのだろう。
「お久しぶりです、中也さん。兄さんは今出掛けていて、いつ帰るか分からないんです。」
家を出る時は「川を流れてくる!」と言いながら出て行ってしまったので帰ってくるにはもうしばらく時間が掛かるだろう。
ここで待つか聞こうとすればまるで生存確認するようにぺたぺたと頬や髪を触られた。
何故だろう、先程からまるで死人を見た、という顔で私を見てくる。
「あの……」
声を掛ければ困惑しながらもこちらを見る。
「テメェ、生きてたんだな……」
彼は私を死人のように見る、と思ったがそれは勘違いでは無かったようで、どうやら私は死んだことにされてるらしい。
「さてはあの糞鯖のせいか……」と顔を顰めながら苦い顔で言う中也さん。
何か勘違いしているようなので兄さんは鈍間で一人じゃ何も出来ない私を守るためにこうしてくれてるんだ、と説明すればますます顔は険しくなる。
「あ゙ぁ゙〜、めんどくせぇ……」と髪を掻きながら一つ大きなため息を吐くと「いいか、よく聞けよ。」と逃がさないためにか、ガシッと肩を掴んで真っ直ぐと眩しい目がどこか歪んでしまった私を射貫く。
「いいか、テメェは一人じゃ何も出来ないと思ってるようだが……ハッキリ言ってテメェは有能だ。なんでも器用にこなすくせに相手を立てるのも上手い。出来た奴だった。」
「ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです。」
頭を下げれば微妙な顔をされる。
私は何か間違った対応をしてしまったのだろうか。
「世辞じゃねぇ。テメェは誰から見てもいい女だったんだよ。……今回、太宰の木偶がなまえが死んだと報告したのは妹を守るため、なんて綺麗なもんじゃねぇ。執着に依存、独占欲に塗れたあいつの動いた結果だろ。」
ビシッと指を指され、自信を持って言われればそうかもしれない。とも思えた。
「けど、全部私が選択した結果だから。」
この部屋にいると決めたのも兄さんとそういうことをしてもいいと決めたのも全部私だ。
「それはテメェが洗脳されてんだよ。ご丁寧に毎日毎日寝る前にでも今までの選択は正しい、みたいなこと言って刷り込んでんだろ?」
そう言われて驚いてしまう。確かに私は毎晩寝台の中で囁かれているけど、どうして分かったんだろう。
「あのヤンデレシスコン野郎がやりそうなこった。そうして洗脳してこんな狭くて何もない世界に閉じ込めたんだろ。」
そう言われ、改めて周りを見る。
部屋の中は広かった。けれどテレビや雑誌などの外への情報源が何もなくて、確かにそれは言い得て妙だと思った。
「おら、外出んぞ。」
「……え、」
「こんなとこに閉じ込められて出たいとは思わねぇのかよ。」
考えたことも無かった。
だってこの部屋は私の世界で、これ以上広い世界を私は知らない。
「ほら。」と差し出された兄さん以外の手を取っていいのか私は知らない。
「……ごめん、なさい」
私は、震える声でその手を振り払った。
私は兄さんのもので兄さん以外の手を取ってはいけない、
例えそれが洗脳された故の考えであったとしても、私は兄さん以外の手を取りたく無かった。
中也さんは少しだけ顔を顰めたが、「……そうかよ。」と一言だけいって伸ばした手を引っ込めた。けれどその手を追いたいとは思えなかった。
「ただいま、いい子にしてたかい?」
兄さんは今日は何故か上機嫌で帰ってきた。
普段なら今日もなまえと死ぬに相応しい自殺スポットが見つからなかったよ〜と不機嫌そうに帰ってくるのに。
なんだか珍しく思いながらも水を吸って重くなった外套を受け取り、洗濯機へ持っていこうとした。けれどそうする前に兄さんに後ろから引かれ、包み込むように抱きしめられた。
「冷たい、兄さっ、」
冷えた体に驚き、思わず体を離そうとすると片手でそれを阻止され、もう片方の手で顔を後ろに向かせ、深く口付けを交わした。
合わせたばかりの頃は冷たかったくせに深く交わるそれは熱さを帯び始め、思考に霧が掛かったように動かなくなる。
口内で勝手に動きまわるそれは甘やかすように丁寧に事を運んでくれた。
「にい、さん……」
快楽に舌が回らない。視界がぼやけてしまう。けれど兄さんがわらっているのだけはなんとなく分かった。
「今日君はとってもいい事をしたからね。優しく可愛がってあげる。」
唇をなぞる兄さんの手は冷たかったけれど、それに反して視線はとても熱く感じた。
そのまま私は横抱きにして寝台まで運ばれる。
「ふふっ、大丈夫。君は私に全て任せて体を預けてくれればいいから。」
その言葉に私は兄さんが言うならと従った。
本当は私も兄さんも狂っていることも異常なことも知っていた。
だけど、これが洗脳だとしても、私は兄さんがいるならどこまで堕ちていくよ。
「愛してるよ、なまえ」
「愛してます、……治さん。」
きっと近い未来、私は兄さんを兄さんとして見れなくなる。だけどそれで私は幸せだから。
兄さんが兄さんじゃ無くなるまであと__秒
兄さんはゆっくりと私の服に手を掛けた。
[完]
アトガキ↓
・初めまして、作者の山猫です。
ずっと書きたかった禁断の兄妹ネタ書けました!楽しんで頂けたでしょうか?これシリーズ化するか地味に悩んだんですけど短編で書きました!
今回のお話は 隠れヤンデレシスコンなお兄ちゃんな太宰さん×太宰さんにじわじわと洗脳されていく妹 が書きたかったんです……!
次は兄(太宰さん)視点書きます。(多分)
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