愛し子
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太宰視点
その日、私が仕事に行ったのは偶然だった。
気分じゃないし面倒だからサボろうと思ったのだけど、そうするとまた中也がキャンキャン吠えるから行くことにしただけ。
仕事場に着くとまだ歳若い女の子に何を怯えてるのか、構成員達は銃を構え固まっていた。
確か女の子の異能は対象の相手を自殺させる精神操作系の異能力者か。拾うも殺すも自由、とは言われたが拾えばまた教育だとか面倒なので殺すことにしよう。それがいい。
そう思いながら事件の中心に足を運んだ。
・
「皆さ〜ん。こんばんは〜。」
適当に挨拶すればザッと道を開ける構成員。
ふむ、髪で顔が隠れて見にくいけど意外と可愛い。
「へぇ、この子がうちの傘下の組織を殲滅させた子?随分と可愛らしい子だねぇ。」
手を顎にあて、首を傾げながら近寄ってくる。血の池をジャブジャブと歩き、近寄り、異能力を発動されたら困るので一応ぺたぺたと彼女に触る。髪を避ければやはり綺麗な顔立ちをしていた。……結構タイプかも。
「だ、太宰幹部。その者は一人で組織を殲滅させる程の危険異能力者者です、早くこちらへ、」
「知ってるよそのくらい。彼女の情報は全てこちらに届いているからね。」
なんの話か分からない、と言いたげな彼女は酷くあどけなかった。まるで産まれたての赤子のように見える。事実をショックのあまり忘れてしまったのかな?
そこまで考えて、ふと見たくなった。彼女の絶望した顔を。普段は特にそんな面倒なこと思わないが、彼女の態度があまりにもまっさらだったからかもしれない。
その純度の高い目が曇ったら、君は私と同じように世界に絶望するだろうか。
「あぁ、君はショックのあまり忘れてしまっているのかな?自分が両親を殺した人殺しだということを。」
「わたし、が……人、殺し……?」
「そう。君はある組織の令嬢だった。裏の世界の人間とは思えないほど両親に愛され、育ってきた子供。可哀想に。その異能力さえなければ幸せも続いていただろうにねぇ。」
可哀想に。知らずに死ねたらもっと楽だったかもしれないのにね。まぁ私には関係ないことだな。
「君の異能力は最も忌み嫌われる精神操作系だ。恐らく相手を鬱状態にし、自殺させる能力だろう。」
彼女は納得したように辺りを見た。
血の匂いは錆び臭くて最悪だけど、この子の純粋さを表すかのような真っ白な肌に罪を象徴のようなドス黒い赤がついていると酷く興奮を覚える。きっと彼女は血が似合う。
「さて、私達は君についての命令は受けていない。つまり殺しても、拾ってもどちらでも言い訳だが、何か遺言は?」
彼女は最期になんと言うだろうか。殺さないで?死にたくない?死にゆく愚者が壊れたラジオのように何度も言う言葉。
あぁ、彼女も同じことを言うのだろうか。
彼女が血に濡れた姿は見たいがそんな聞き飽きてつまらない姿は見たくないなぁ。このまま殺してしまおうか。
「無いよ。死ぬつもりは無いから。」
「ほぅ……つまり君は私から逃げ切る、ということかな?」
グッ、と銃に手を掛けた時、彼女は今までの死人とは全く違うことを言った。
嗤わせる。今まで私から逃げ切った者は一人もいないというのに、その平手でもすればすぐに折れそうな華奢な体で逃げるというのか。
「いいえ、死ぬんじゃない。私はこれから目を覚ますんだ。」
殺そうとした。だが、それは出来なかった。彼女の髪の隙間から見える目は今まで見てきた愚者の縋るような目とも、諦めた目とも違った。
彼女の目は確かにこの世界に絶望していた。
だがそれ以上に私とは違って彼女は救済されており、また救済するかのように陽が差していた。
まるで、この退屈でつまらない、酸化していく世界に一筋の光が通ったような気にさえなった。
彼女は聖女のように微笑むと意識を落とす。
血の池に倒れそうになる彼女を抱えれば今まで感じたことの無いような感覚を覚えた。
それはきっと世にいう恋なんて甘い感情では無い。これは一種の信仰だ、
きっと私は一生彼女を崇拝し、隠して生きていくのだろう。
これは予想でも考えでもない。
確信した未来、予言だ。
そうと決まれば部屋を用意しなくては。私と彼女だけの取っておきの部屋。
あぁ、退屈だった世界が少しだけ晴れていく。
その日、私が仕事に行ったのは偶然だった。
気分じゃないし面倒だからサボろうと思ったのだけど、そうするとまた中也がキャンキャン吠えるから行くことにしただけ。
仕事場に着くとまだ歳若い女の子に何を怯えてるのか、構成員達は銃を構え固まっていた。
確か女の子の異能は対象の相手を自殺させる精神操作系の異能力者か。拾うも殺すも自由、とは言われたが拾えばまた教育だとか面倒なので殺すことにしよう。それがいい。
そう思いながら事件の中心に足を運んだ。
・
「皆さ〜ん。こんばんは〜。」
適当に挨拶すればザッと道を開ける構成員。
ふむ、髪で顔が隠れて見にくいけど意外と可愛い。
「へぇ、この子がうちの傘下の組織を殲滅させた子?随分と可愛らしい子だねぇ。」
手を顎にあて、首を傾げながら近寄ってくる。血の池をジャブジャブと歩き、近寄り、異能力を発動されたら困るので一応ぺたぺたと彼女に触る。髪を避ければやはり綺麗な顔立ちをしていた。……結構タイプかも。
「だ、太宰幹部。その者は一人で組織を殲滅させる程の危険異能力者者です、早くこちらへ、」
「知ってるよそのくらい。彼女の情報は全てこちらに届いているからね。」
なんの話か分からない、と言いたげな彼女は酷くあどけなかった。まるで産まれたての赤子のように見える。事実をショックのあまり忘れてしまったのかな?
そこまで考えて、ふと見たくなった。彼女の絶望した顔を。普段は特にそんな面倒なこと思わないが、彼女の態度があまりにもまっさらだったからかもしれない。
その純度の高い目が曇ったら、君は私と同じように世界に絶望するだろうか。
「あぁ、君はショックのあまり忘れてしまっているのかな?自分が両親を殺した人殺しだということを。」
「わたし、が……人、殺し……?」
「そう。君はある組織の令嬢だった。裏の世界の人間とは思えないほど両親に愛され、育ってきた子供。可哀想に。その異能力さえなければ幸せも続いていただろうにねぇ。」
可哀想に。知らずに死ねたらもっと楽だったかもしれないのにね。まぁ私には関係ないことだな。
「君の異能力は最も忌み嫌われる精神操作系だ。恐らく相手を鬱状態にし、自殺させる能力だろう。」
彼女は納得したように辺りを見た。
血の匂いは錆び臭くて最悪だけど、この子の純粋さを表すかのような真っ白な肌に罪を象徴のようなドス黒い赤がついていると酷く興奮を覚える。きっと彼女は血が似合う。
「さて、私達は君についての命令は受けていない。つまり殺しても、拾ってもどちらでも言い訳だが、何か遺言は?」
彼女は最期になんと言うだろうか。殺さないで?死にたくない?死にゆく愚者が壊れたラジオのように何度も言う言葉。
あぁ、彼女も同じことを言うのだろうか。
彼女が血に濡れた姿は見たいがそんな聞き飽きてつまらない姿は見たくないなぁ。このまま殺してしまおうか。
「無いよ。死ぬつもりは無いから。」
「ほぅ……つまり君は私から逃げ切る、ということかな?」
グッ、と銃に手を掛けた時、彼女は今までの死人とは全く違うことを言った。
嗤わせる。今まで私から逃げ切った者は一人もいないというのに、その平手でもすればすぐに折れそうな華奢な体で逃げるというのか。
「いいえ、死ぬんじゃない。私はこれから目を覚ますんだ。」
殺そうとした。だが、それは出来なかった。彼女の髪の隙間から見える目は今まで見てきた愚者の縋るような目とも、諦めた目とも違った。
彼女の目は確かにこの世界に絶望していた。
だがそれ以上に私とは違って彼女は救済されており、また救済するかのように陽が差していた。
まるで、この退屈でつまらない、酸化していく世界に一筋の光が通ったような気にさえなった。
彼女は聖女のように微笑むと意識を落とす。
血の池に倒れそうになる彼女を抱えれば今まで感じたことの無いような感覚を覚えた。
それはきっと世にいう恋なんて甘い感情では無い。これは一種の信仰だ、
きっと私は一生彼女を崇拝し、隠して生きていくのだろう。
これは予想でも考えでもない。
確信した未来、予言だ。
そうと決まれば部屋を用意しなくては。私と彼女だけの取っておきの部屋。
あぁ、退屈だった世界が少しだけ晴れていく。