朝焼けの白月
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
雄英高校
3年生
ある日の昼下がり
『ひざし!消太!
ただいま』
「Hey紡希遅かったな」
「おかえり」
急な収集があり朝からインターン先へ
出向いていた紡希が
お昼休憩中
コスチュームケースを
持ったまま屋上に現れた
「朝から大変だったな
九皐も、おつかれさん
ほら、ミートボール食べるか?」
「クゥン」
「真っ直ぐ屋上来たのか?
ヒーロースーツくらい置いてくりゃいいじゃねぇか」
『そんなことしてたらお昼休み終わっちゃうよ
このあとどうせ教室に戻るのに』
「ふ、お前の言う合理的ってやつか」
『そうそう』
紡希は2人と向かい合うように座り
ビニール袋から九皐のご飯と
ゼリー飲料を取り出した
じゅっ
「おめぇの飯食う時間なんて
どうせ一瞬じゃねぇか
ただでさえガリガリなんだ
もっとちゃんと食え!」
紡希の口にお弁当の唐揚げを突っ込むマイク
『んぐ…ぅ…
ご飯食べる時間ってよりはー!』
頂いた唐揚げを飲み込み
再度言葉を続けようとすると
「ほら野菜も食え」
今度は相澤が野菜入りの卵焼きを
紡希の口に放り込む
『ぬぐ…ん
3人でここにいられる時間だよ!』
「Ah〜!」
高校3年生
日中の陽射しも弱まり
吹く風も冷たくなりつつある
そろそろ屋上で弁当を広げるのも
辛くなってきた
雄英での学生生活も残りわずかだと
季節が告げている
1年の頃とはまるで別人のように
明るくコロコロと笑うようになった紡希
あの頃からの変わり様を見ると
よくこんなにも心を開いてくれたもんだと
感動すら覚える
2人に口に入れられたものを飲み込み
紡希は真面目な顔で
『…実は今、養父伝に仕事の依頼が来ててね
受ければ、長期の任務になりそうなんだ』
「はぁ?長期って…
俺ら卒業までもうあと半年もねぇんだから
待って貰えばいーじゃねぇか」
『それが、あまり詳しくは聞いてないんだけど
依頼人にあまり猶予がないみたいでね』
「受けるのか?」
『うん。私の、個性が必要だって言われた……
それに……』
「それに?」
『かなり稼げる』
「んだよー!結局それか!」
『ふふふ、でも嬉しいんだ
この個性が人のために使えるって言われて』
「そうか
少しの間寂しくなるな」
「このさみぃ屋上でイレイザーと2人きりか!」
『じゃあお弁当のおかずのお礼に
明日おでん持ってくるよ!』
「イェィー!いーじゃねぇかおでん!」
「はんぺんばっか買ってくんなよ」
『もう、そんな間抜けな事しないよー!』
「ふっ、どうだか」
❅·̩͙𓂃𓂃·̩͙ ❅ ❅ ·̩͙𓂃𓂃·̩͙ ❅
それから
雪の振り積もる冬の頃
コスチュームケースを持ち
これから長期任務に向かう紡希を
相澤とマイクは校門の前まで
見送りに来ていた
「気をつけて行ってこいよ」
「九皐も紡希のことよろしくな」
相澤が九皐の頭を撫で頼むと
任せてくれと言わんばかりに
ふんすっふんすっと
鼻を鳴らす
『ふふ、いつ頃戻れるか分からないけど
2人とも待っててくれる?』
「あぁ」
「たりめぇだろぉ」
『ねぇ…消太』
「どうした?」
『消太の個性でさ、この気持ち抹消
できないかな…?』
珍しく不安げで
瞳から覗く寂しさと
揺らぐ覚悟
「そんな必要ないよ
お前ならできる」
本当にそう思い
言葉をかけ優しく頭を撫でてやる
『春の…』
「?」
『卒業式までには必ず帰ってくるよ』
「は?そんなに遅くなるのか」
『まさか、遅くても、だよ』
照れたように笑い
頭を撫でる消太の手を取り
頬を擦り寄せる
冷えた紡希の頬が
寒さのせいか赤く染まっている
『…ありがとう、行ってくるね』
「相澤ばっかずりーぜ
Hey!俺にもhug meー!」
ガバッと広げられたマイクの腕の中に
嬉しそうに飛び込む紡希
「ほら!相澤もこい!」
「は!?」
言うやいなや相澤の腕を引き
2人で紡希を挟むように抱きしめた
「ぷきゅっ」
紡希と共に挟まれた
九皐が空気の抜けたような声をだす
『必ず帰ってくるよ
私だって、2人と一緒に卒業式出たいから!』
うっすら浮かぶ涙を拭い
紡希は笑って旅立った
そんな彼女を後ろ姿が
見えなくなっても見送った
「寂しいか?」
「さぁな」
そして
月日が流れた
帰ってくる
気配もなければ
安否を知らせる音沙汰もない
あの時
行くなと引き止めるべきだったか
いや
それはあいつの決心を揺さぶるだけ
ただの自己満足の言葉にしかならない
と分かってた
そして迎えた
卒業式
華やぐ季節に
あいつはとうとう
姿を現さなかった