朝焼けの白月
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「白雲、山田
先行ってるぞ」
「んだよショータ!もう着替えたのか!」
「なーに急いでんだよ」
「別に急いでるわけじゃねぇよ」
簡易なコスチュームなため
男子更衣室から一番最初に出るのは
いつも相澤だった
そんな彼より先に
演習場にいるのは
いつも決まって
卯月紡希だった
こうやって
2人きりになる時間が多いとはいえ
特段仲がいい訳でもない
といっても
彼女が誰かと親しげにしている姿は
今まで見たことがない
なのでいつもお互い無言で
他のクラスメイトや
教師陣が集まるのを待っているのが
ヒーロー基礎学前の
よくある光景だった
けれどある日
何となく声をかけ
聴いてみた
「なぁ…女子って普通もっと着替えとか準備に
時間かかるもんじゃないのか?」
事実、いつも男子生徒や先生が揃って
さらに少しの間を置き
ようやく他の女子生徒は更衣室から出てくる
改めて彼女のコスチュームを見てみる
よく目立つ
白銀の髪、色白の肌に反して
黒のホットパンツに黒のストッキング
膝上まである黒のロングブーツ
そして黒のフード付きコート
えりも高く口元が隠れるため
フードをかぶれば目元しか見えない
人のことは言えないが
全身黒ずくめなコスチュームだった
理由は恐らく
身を隠しやすい様にだろう
もしくは素肌を出したくないのか
理由を考察していたら
声をかけられたことに驚いたのか
相澤の目を見つめ
少しの間固まる卯月
『着替えに時間を取られるなんて時間の無駄
有事の際、すぐに動ける方がいいに決まってる
私の個性に補助アイテムや
服のデザイン性って特に必要ないから
このコスチュームなら合理的に動ける』
「合理的……ねぇ」
ちらりとそらされた
彼女の視線の先を追うと
彼女の個性である
黒狐が蝶々を追いかけている
彼女の個性はこの黒狐
名は九皐(きゅうこう)というらしい
黒い艶のある毛並みに
好奇心旺盛で友好的
蝶々をおっているのもそうだが
可愛い仕草が多く
他の生徒達
特に学年を問わず女子生徒に
たびたび愛でられている
見た目も性格も
主である卯月とは正反対だと
みなが口々に
言っているのをよく聞く
しかし、可愛い姿とは裏腹に
彼女の個性は
九皐が銃に変化して戦う
卯月の儚い見た目と相反する
とんでもなく物騒な
戦闘スタイルだ
九皐は蝶々に飽きたのか
次は鳥を追いかけて空を翔る
恐ろしいことに
銃に変化をしている間も
浮遊が可能
卯月紡希はどこかに身を隠し
九皐が銃に変化
そのまま浮遊しながら
相手を撃破して回る
完全に彼女から独立して動き回るため
大元を叩くのはかなり困難だ
音もなく気配もない
捕縛布の届かない上空で
銃口がこちらを
向いているのを見た時は
背筋が凍りついた
使う弾は
非殺傷ゴム弾
とはいえ
当たれば痛いし
打ちどころによっては
普通に気絶する
隠密に長けた卯月と九皐を
俺は目視ができなければ
一方的に蹂躙されるだけだ
百発百中と言っても差し支えない命中率
まず見つからないように
近づかなきゃ勝てない
そもそも普段から感も良く
後ろに目でも着いてるじゃないかと思わせるほど
人の気配に敏感だ
身を隠す場所の多い
広域のフィールドでは
味方になれば心強いが
敵にはなりたくない
戦闘スタイルが知れ渡ってなお
うちのクラスで、いや
学年で1番強いのは彼女で
間違いなかった
誰からも一目置かれ
そして誰とも
一線を引いて接する
それが
俺らが雄英で
待ち続ける
卯月紡希
必ず帰ると約束した
クラスメイトだった