朝焼けの白月
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ふわふわと
ぼんやりする頭
目を開くと真っ暗闇が私を包んでいた
ぼんやりする頭を何とか働かせ
先程まで香山先輩たちと一緒に
人生で初めてのお酒を呑んでいたことを思い出す
途中で記憶が途切れているのにも関わらず
自分の部屋に帰って来れているのは
きっと消太とマイクが連れ帰って
寝かしつけてくれたのだろう
少し重たい身体を何とか起こし
乾いた喉を潤そうと
〝個性〟を発動した
パチリという音の後に部屋の電気がつき
冷蔵庫がひとりでに開く
指をクイッと動かせば
水の入ったペットボトルが冷蔵庫の中から
ベッドから降りてすらいない私の手元に届く
ご丁寧に蓋までひとりでに開いて
空に浮いたペットボトルを手に取り
水を半分ほど一気にのみ
喉を潤す
これが私、卯月紡希が
隠していた私自身の本当の個性
《傀儡》
物や人形はもちろん
相手を気絶させるか
気づかれるのを覚悟の上なら
他人の身体すら意のままに操る個性
私が本気になれば頭の先から
指先に至るまで
操り人形を踊らせるかのごとく
思いのままに操る事が出来る
そんな個性
私は私の個性が大嫌いだった
ポルターガイストや念力のような
珍しくはあるものの
ヒーローやヒーロー科の生徒にもいるように
広く認知された個性なら
幾分生きやすい世の中だったかもしれない
しかし私の個性“傀儡”は
いわゆるヴィラン向きの個性というやつだ
念力やポルターガイストは
ものを動かす能力なのに対して
私の傀儡は
〝操る〟ことに特化した個性
そしてこの個性をめぐり
多くの人が傷つき傷つけあった過去がある
キラキラと私を見つめる
眩しい瞳の生徒たち
ホントの私は
そんな目で見るに値するのだろうか
ヴィランにうってつけな個性に生まれて
ヴィランになるように育てられた私が
雄英高校のヒーロー科の先生になった
『なんて、皮肉なものだね』
残りの水を一気に煽り
空になったペットボトルを
傀儡を使ってゴミ箱へ入れる
ふと
サイドテーブルに置かれた
写真が目に映る
この頃の私は九皐を使い
自分の本当の個性を徹底的に隠していた
私を地獄に追いやった
組織の残党から隠れるために
この傀儡という個性を悪意を持つ者に悪用させぬために
けれど今の私はあの頃よりも強くなった
そんなものから隠れる必要などないくらいに
自分で自分を守れるほどに
他者へ手をさしのべられるほどの強さを
守るべき家族も友達も生徒たちも
『今度こそ失わない、家族も友達も……
だから朧、時々でいいから見守っていて』
33/33ページ