朝焼けの白月
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昨夜来たばかりの紡希の部屋は
物が少ないおかげか
とても殺風景に見える
ほとんど荷解きが終わっていないようで
積んである数少ないダンボールは
運び込まれた時のまま
封が空いているものはたった一つで
それでさえ必要なものを取り出しただけのようで
他の中身は入ったまま放置されている
「ほとんど何もしてねぇじゃねぇか
相変わらず自分の身の回りの事ではズボラだな」
唯一荷物の中から取り出されているのは
ベッドのサイドテーブルに置かれた2枚の写真立て
ひとつは紡希とその養父である覆守と
覆守が保護した子供たちとの集合写真
ざっと10人程いる子供たちは紡希を囲んで
幸せそうに笑っている
そしてもうひとつが雄英高校時代に
4人で撮った写真だった
相澤
「この写真…………紡希もまだ持ってたんだな」
山田
「やっぱ任務ってのに関係あんのかね
こいつが
全然歳をとってないように見えるのは」
相澤の腕の中で幸せそうに
すやすやと眠る紡希は
写真の頃と比べればほんの少しは
大人びて見えるが
それでも到底同い年には見えない
相澤
「…さあな
いつか話してくれるだろ
これまでのことも
これからのことも」
山田
「……そだナ
にしても、なんともないように呑んでたけど
ストンとダメになったな」
相澤が横抱きにしていた紡希を
ベッドに寝かしつけ
部屋を出ようときびすを返す
ドアノブに手を伸ばした
山田と相澤2人の身体が
グイッと後ろに引き込まれた
「んなっ」
「what?!」
そしてそのままベッドに倒れ込み
いつの間にか起き上がっていた紡希が
2人をベッドに押し倒していた
『捕まえた〜』
細腕の少女に押し倒される男二人
不意打ちとはいえ、プロの
男性ヒーロー2人が
呆気なくベッドに沈んでしまった
『やっと3人になれたね
もっとよく、2人の顔見せて?』
そう言い紡希は少し潤んだ瞳で
2人の顔を覗き込む
「……紡希、お前酔ってるだろ」
「これから毎日のように顔つき合わせるんだからよ
今夜は早く寝とけ?な?
眠れなきゃ子守唄でも歌ってやろうか?」
『ん〜?大丈夫〜』
「ミッドナイトに付き合って
色々ちゃんぽんしてんだ
明日身体にさわるぞ」
忠告しても紡希はニマニマと
楽しそうに同級生2人を見下ろしている
『私、ひざしのラジオいつも聞いてた
だからひざしがいつも元気にしてるのも
雄英にいるのも知ってた
消太はどこでヒーロー活動
していてるのかと思ってたんだけど……
2人して律儀にここで待っててくれたの?』
「……別に待ってたわけじゃねぇよ」
『ふーん』
ニコニコと上機嫌にしているかと思えば
ばたりと二人の間に沈み込む
深呼吸でもするかのように
スーハーと大きく息を吸い込み
2人をギュッと抱き寄せる
山田
「おいおい紡希ヤメロって」
『……生きてるって実感したかったの
私も、2人も
まるで、長い夢を見てたみたい』
相澤
「わかったから、とりあえず起き上がらせろ」
『ん〜?もうちょっと』
山田
「いい加減にしないと食っちまうぞ」
倒れ込んで覆いかぶさっている紡希の耳元で
いつもより低い声でささやくひざし
その手はいつの間にか紡希の腰に回っていた
『ん~………』
山田
「おいおい笑うなり拒絶するなりなんか反応しろよ」
突っ伏したままの紡希から
2人の耳元で寝息が聞こえはじめる
相澤
「おいこら、こんな状態で寝るな
まったく、世話が焼けるのは相変わらずか」
山田
「…………」
相澤
「マイクも照れてねぇでこいつ動かすの手伝え」
山田
「ぐすん」
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