朝焼けの白月
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マイク
「ズビっ………紡希…」
『もう、まだ泣いてるのひざし』
マイク
「これが泣かずにいられるかよっ」
ポロポロといつまでもべそをかくマイクに
呆れながらもハンカチで
流れる涙をふいてやる紡希
涙を拭くのと反対の手は
マイクの手を優しく握りしめていた
周りに生徒がいる中お構い無しに
廊下で声を上げて泣き
紡希を抱きしめる姿に
とうとういたたまれなくなり
相澤が紡希からマイクを引き剥がし
そのまま校長室へ移動していたのだった
『消太は泣かなかったよ?』
マイク
「あいつは自分の部屋に入った途端
声押し殺しながら嬉し泣きするタイプだろ」
相澤
「泣かん」
マイク
「目が赤いぜイレイザー!」
相澤
「ドライアイだ
だいたい紡希
お前10年もの間音信不通で何してたんだ」
当然の質問に、紡希は肩を揺らす
そして一瞬逡巡した後
『ずっと……仕事をこなしてたよ
全く合理性に欠ける仕事をね』
目を伏せ困ったようにわらう
マイクが
紡希の頬にかかる銀糸の髪をすくい
頭を撫でる
マイク
「それでも、よく帰ってきた」
『ひざし……』
マイク
「てか!お前、相棒の九皐はどうしたよ!?」
マイクはまだ目を赤らめながらも
それをサングラスを押しあげて誤魔化し
いつもの高いテンションで
紡希に問うた
仕事の話に今はあまり触れてほしくないのだろう
手紙ひとつもよこせない任務ってのは
なんなんだと
聞きたくとも、聞けばまた
紡希は困ったように笑うのだろうことを
2人は察してしまった
マイクの気遣いに
紡希も安心したように笑った
『どこ行ったのかな
春くらいに急にいなくなっちゃってね』
マイク
「おめーらなぁ……
相変わらず気まぐれ主従だな」
『やっと動けるようになったから
2人に会いにきたんだ
心配かけてごめんね?』
拗ねたようにそっぽ向く相澤に
紡希はグイッと体を寄せ
その瞳に映り込む
相澤の眼を紅い瞳が覗く
「っ……近ぇ」
『あ、ついでに卒業証書欲しいです』
〝動けるように〟という言葉に
引っ掛かりを覚える
けれどやはり
そこを指摘できずに話は進んでいく
マイク
「卒業証書って、今更か?」
『卒業式は出られなかったけど……記念にね』
ソファに座る同級生3人組の
10数年ぶりの再開を見守っていた根津校長が
残念そうに首を横に振る
根津
「それがね、君は今まで
プロとして働いてはいたけれど
高校卒業前の3-4ヶ月分のカリキュラム
ぶっ飛ばしてるからあげられないのさ」
『ぇ…
えぇっー?!
てことは私……中卒扱い……?
それともまた1から高校生生活……!?』
相澤
「いちからって…30の高校生ってのは
さすがにキツイだろ、俺らも生徒らも」
相澤の言葉にマイクも大きく頷き同意を示す
根津
「さすがに学生に交じって
授業を受けさせる訳にも行かないさ
そこで提案なのさ
臨時教師として雄英で働いてみるかい?」
『ぇっ………』
「「えっ」」
根津
「君も聞き及んでいると思うけれど
先のUSJ事件、林間合宿
そしてオールマイトを失った神野の事件
身元のはっきりした
信頼出来る先生が欲しかったところなのさ
家も、彼らと共に教員寮に入るといいさ!」
急な提案に流石の紡希も
戸惑いを見せる
『え、あ、でもさすがにそんな急に…』
根津
「そうだねぇ
初任給でまずはこのくらいでどうだい?」
小さな肉球で電卓を弾き
根津校長は出た数字を紡希に見せる
『これは…!』
相澤
「おい、紡希金につられるな」
『う… 』
根津
「基本給だけではなく
働きに応じたインセンティブも支給しちゃうさ」
『やります!』
相澤
「おいこら!
だからそう簡単に…!」
更に根津校長のたたき出した
電卓の数字に飛びつく紡希
マイク
「お前はっ…お前ほんっと、変わんねぇなあ」
根津
「HAHAHA〜いや〜計算通りさ!!」
相澤とマイクが止めようにも
嬉しそうに根津校長を抱きしめ
くるりくるりと振り回す紡希を
今更止められはしないだろう
相澤
「校長に抱きつくな、振り回すな
距離感バグってるぞ」
やれやれとため息をつく相澤
紡希のちょろさに呆れるマイクね
『また3人で、一緒にいられるね!』
そう言って笑う彼女の顔を見たら
大事な職場をやすやすと決めるなと
これ以上の小言も言えなくなる
マイク
「はぁ……俺らもちょろいもんだな」
相澤
「ふっ………だな」
『じゃあ2人とも明日からよろしくね』
「……Ah?……明日?」
「おまえ、明日から働く気か……?」
まさかな、とは思いつつ
紡希なら働くつもりで言いかねない
「「…………」」
騒音の権化である
あのマイクすら絶句し黙らせる
そんなことが出来るのは
やはり紡希くらいだ
相澤
「九皐もいないんださすがにそれは無理だろう」
マイク
「だ、だよな」
『ん?働くよ
なんなら今日からでも』
根津
「僕はいつからでも構わないさ」
相澤
「紡希……何もすぐに
働き始めることないだろ」
マイク
「そうだぜ?せめて九皐見つけてからにしろよ
じゃねぇとお前今ーーー」
『九皐は今雄英にいるよ』
「「は?」」
『九皐も意地悪なんだよね
雄英に居る気配はあるんだけど
どこにいるのかは〝さぐっても〟見つからなくてね
ま、あの子探しつつ
先生ってのをやってみようかなって』
相澤
「本音は」
『早く稼ぎたぃーー あぅ』
紡希の回答にすかさず
相澤がおでこにデコピンをとばす
相澤
「ったくお前ってやつは……」
マイク
「HAHAHA!そんなこったろうとは思ったがな」
相澤
「それにしたってどうすんだ
今のお前は一応〝無個性〟だぞ」
九皐が居ない今
紡希には武器も攻撃手段もない
『確かに!はたから見たら
今の私、無個性ってことになるのか……
それはそれで面白そうだね』
相澤
「そんな呑気なこと言ってる場合か
もし世間にお前の個性がバレでもしたら……!」
『心配してくれてありがと消太
だけどこの10年、私だって色々あったんだ
もうこれからは〝隠す〟のも〝隠れる〟のも
辞めようと思うの』
「は?」
『もちろん“私の個性”について
積極的にバラしていくようなことはしないけど
昔みたいに徹底的に隠すのを辞めようって』
どこか吹っ切れたように笑う紡希に
イレイザーとマイクもつられて笑う
『だから今日から私は無個性風臨時教師』
相澤
「何言ってんだか……」
マイク
「相変わらず、ぶっ飛んでんな」
『なんにせよ、これからよろしくねセンパイ』
マイク
「先輩とかヤメロよ」
相澤
「また、あの頃みたいに騒がしくなりそうだな」