朝焼けの白月
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昼休み
昼食としてゼリー飲料を一瞬で吸い上げ
手元の資料を確認しながら
校長室へと向かう
呼び出されたついでに
頼まれていた資料を
提出しておこうと
早めに仕上げて
なんとか間に合わせた
何度も校長室に行かなくていい
合理的だ
資料に目を落としながら
足早に校長室へ向かう途中
「きゃー 」
女子生徒の悲鳴が聞こえたかと思えば
次に聞こえたのはモーター音
音の発生源へ目をやれば
なにやら暴走するサポートアイテム
夏休み中とはいえ校舎は解放しており
ヒーロー科以外の生徒の出入りもある
サポート課の生徒だろう
小さいが猛スピーで動き回る
サポートアイテムを捕まえられず
慌てふためいていた
小型とはいえ
当たれば痛いじゃすませられない
アイテムだから抹消は効かないのが厄介だ
駆け出し捕縛布を構えるが
狙いが定まらない
タイミング悪く角から現れた生徒に
当たりそうになり
咄嗟に捕縛布を飛ばす
「(間に合うか!?)」
一瞬
なぜか
メカのスピードが
落ちた気がした
捕縛布は見事
暴走するメカを捉え
それを作ったのであろう生徒と共に
パワーローダーへ突き出す
無駄に時間を食ったと思い
時計を見る
まだ十分に心操の特訓に
付き合ってやれるだけの時間を
取れそうで安心する
「失礼します」
コンコン
とノックし
校長室へ入ると
相変わらず小さな体で
テーブルからあまり見えていない校長
その校長と向かい合う誰か
どうやら先客がいたようだ
ヒーロースーツらしき
漆黒のコートを羽織る客人
深くフードをかぶり、体格とあっていないのか
ぶかっとしたそのコートは
着ている者の体型を隠し、後ろ姿からは
男なのか女のかいまいち分からない
黒で全身を覆い
フードまでかぶっている
黒づくめな客人
怪しい、と思いつつ
自分もそう変わらない風体だと自嘲する
出直そうかと考えたが
「来たようだね
相澤消太先生」
「?」
珍しく何故か
フルネームで名を呼ぶ根津校長が
中へ入るように手招きする
招かれるように数歩校長室に足を踏み入れれば
ゆっくりした動作で
先客がこちらへ振り返る
フードをかぶり更に
口元を隠す高い襟
唯一顔を認識できるのは
僅かにブードの下から覗く紅
フードの下からかぱちくりと瞬く
強烈に見覚えのある紅
こちらを振り返り見上げる瞳に
かつての同級生を重ねる
何度も会いたいと恋焦がれ
想うあまり
とうとう、幻になって出てきたか
今朝見た
朝焼けのような
紅い瞳に見つめられ
身体が動かなかった
『消太…?』
そっとフードを外し
あらわになる
白銀の髪
今朝見た写真の中の彼女と
なんら変わらない
「…紡希………?」
『なんだか、大人っぽくなったね
久しぶり、消太』
持っていた資料が手の中から滑り落た
それすら気にならなかった
ただ
かけよって
幻ではないのかと
手を伸ばし
彼女の頬に触れた
紡希は嬉しそうに微笑み
手を重ね頬を擦り寄せる
校門から見送った
最後の日のように
声がつっかえて出てこない
いつか再開したら、と
言いたいことは沢山あったはずなのに
何を言えばいいのか分からない
かわりに小柄な体を
抱き寄せた
『…たくさん、待たせちゃったね』
「っ………待たせすぎだ…バカ」
『卒業証書
貰い損ねちゃったね』
「気にしてる場合か」
10数年ぶりの再会
生きていた
ちゃんと、今、腕の中にいる
脈もある
体温も
生きていたんだと
実感する
絹のような銀色の髪が
サラリと揺れ
手をくすぐった
『ただいま』
「あぁ、おかえり」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
「2人とも、僕のこと忘れてないかい?」
『まさか』
「あ」
『ふふ、消太泣いてる?』
「さっきさした目薬だ」