片翼の月 弍
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「Hey!!リスナー!
俺の授業で寝るとはいい度胸だyear!」
1番後ろの席
つまり夜羽の席で
プレゼントマイクが叫ぶ
『ふぁ…これ半球睡眠なんで
半分起きて聞いてます』
「両目かっぴらいて全身全霊で聴けー!」
ポコりと丸められた教科書で叩かれる
「体育祭訓練で寝不足かぁ?
そんな寝かたしなくても済むように
睡眠時間はちゃんととれ!」
『ふぁーい』
「返事はhighだ!間違えた YES だ!」
体育祭を目前に控えた
教室に気の抜けた叱咤が響く
耳郎
「珍しいね夜羽があんなに疲れてるのって」
葉隠
「やっぱり体育祭に向けてかなり特訓してるんだ」
切島
「そういえば夜羽が優勝したら
クラスどうするんだろうな?」
「けっ」
飯田
「こら爆豪君!机に足乗せるものではない!」
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
プレゼントマイクに叱られ
昼休みに仮眠室へ行くことにした夜羽
ガラリと
仮眠室の扉を開ければそこに居たのは
トゥルーフォームのオールマイトと
クラスメイトの緑谷出久
2人とも色んな意味で
目を見開き驚き慌てている
というか、こんなところで密会していたのか彼らは
少々不用心ではないかとも思ったが
出久はオールマイトの正体が
私にバレまいと
オールマイトは私が
自身の正体を知っていることが
出久にバレまいと
見ていて愉快な慌てようだ
『あぁ、八木さんお久しぶりです』
「えっあぁ久しぶりだね…!夜羽くん」
正直私がオールマイトの
正体を知っていること
いっくんに知られても差支えはないのだが
知ったら知ったで
いっくんの気が抜けて
どこかでボロを出しそうなので
もうしばらく秘密の共有は
やめておこうという話をオールマイトとしている
今日ここで2人が話していたのは
十中八九、体育祭のことだろう
オールマイトは彼を自身の後継として
次の平和の象徴として
体育祭では好成績を残して欲しいはず
けれどこの体育祭は
私にとっても大事なアピール場だ
いっくんの邪魔をするつもりは無いが
遠慮してあげるつもりもない
「えと、夜羽ちゃん
今日疲れてそうだったけど大丈夫?」
意識をオールマイトから逸らそうとしているのだろう
夜羽はあえてその作戦に乗ってあげる
『うん、必殺技の特訓しててねえ〜
かっちゃんにぶっ飛ばすって
言われちゃったし
私も必死だよ〜』
「ひぃ」
宣戦布告するかっちゃんを
想像したのかいっくんは青い顔で
短い悲鳴をあげる
『でも私はいっくんのことも心配
御しきれないほど大きな力を持った貴方が
この体育祭で壊れちゃわないか』
「心配かけてごめんね夜羽ちゃん……
でもこの前のヴィランとの戦いで
なにか、掴めた気がするんだ……!」
拳を握り、何かをつかみかけている
いっくんの手は
リカバリーガールのおかげで
傷跡ひとつ残っていない
綺麗な手だ
『……私が人生で初めてヴィランと
対峙したのは中学生の時だった
その時私は
初めて、人間の悪意を目の当たりにした』
“かっこいい警察になってね!夜羽姉ちゃん!”
『その事件現場には私にとって
大切な人がいてね
その人が事件に巻き込まれてしまって
無我夢中で助けようとした』
「夜羽少女……?」
オールマイトもいっくんも
……かっちゃんも知らない私の過去
出久の左手を取りそっと綺麗な手を撫でた
『必死だった
翼はボロボロで
隊服も乱れ
お腹に怪我もしてた
傍から見れば満身創痍な私
だけど全然気にならなかった
その子の命を救えたから
だけどね
人の心は救えなかったの
……自分を犠牲にしてちゃ
救えないんだよ、いっくん……』
夜羽が沈んだ表情を浮かべたのは一瞬で
直ぐにいつものようにぱっと笑って見せた
『あ、早く寝ないとお昼休み終わっちゃうね
じゃあいっくん、八木さんおやすみなさ〜い』
手を振りカーテンで仕切られている
ベッドの方へ消えていく夜羽
ひらりと手を振り返してくれた2人を横目に
夜羽はカーテンを閉め
ベッドへダイブする
ゴロリと仰向けに寝転がり
仮眠室の天井を見つめた
私は
私が雄英に来た理由を
雄英に来た意味を
この体育祭で示さなくちゃいけない
破ってしまったあの子との
約束に報いるために