片翼の月 弍
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放課後の教室
「なんだこりゃー」
お茶子の驚いた声に驚き
夜羽は予習復習のため
教科書に落としていた目線を上にあげる
するとなぜだか
教室の前に見知らぬ生徒たちが
ワラワラと多数集まっていた
『わぁ、すごい人』
「気にすんな敵情視察だろ」
夜羽の前の席、つまり焦凍の席を
占拠した勝己が事も無げに言う
ちなみに焦凍は先生に呼ばれただかで
教室を出ている
「そんなことしたって意味ねぇから
失せろモブ共」
まるで眼中にないとでも
言いたげに
雑誌から顔を上げることすらせず
勝己は言い放つ
「知らない人のこととりあえず
モブっていうのやめたまえ!」
飯田から注意を受けるが
勝己はガン無視
クラスメイトの言葉すら何処吹く風
『ちょっとかっちゃん』
ヘイトを集めまくる勝己に夜羽は
『それ、ショートの机なんだから
足あげるのやめなよ』
「夜羽ちゃん!今そっちちゃう!
いやそれもあかんねんけど…!」
思わぬ指摘に
麗日が突っ込む
「こういうの見ちゃうとちょっと
幻滅しちゃうな」
紫のツンツン髪に
目の下の隈が特徴的な男子生徒
どこかで見たことある
その佇まいを見て
あの人は確か…
と記憶を探る
「体育祭のリザルトによっちゃ
ヒーロー科編入も検討してくれるんだって
その逆も然り………」
彼を見て言葉の続きを待っていると
バチッと目が合った
夜羽がしたのは編入ではなく
八咫烏高校からの〝転入〟
それでも、間違いなく
意識されているのだろう
「敵情視察?
少なくとも俺は
調子のってっと
足元ゴッソリすくっちゃうぞ
っつー
宣戦布告しに来たつもり」
夜羽の目を見て不敵に笑った彼の中で
ゴッソリすくっちゃう対象には
夜羽も入っているのだろう
「おい!隣のB組のもんだけどよぅ!!
敵と戦ったから話聞こうと思ってきたのによぅ!!
えらく調子づいちゃってんなオイ!!」
そう言ってさらに乗り込んできたのは
名乗った通り
隣のヒーロー科の男子生徒
そして更にその後ろに
「まぁ鉄哲、落ち着きなよ
やあ、僕はB組の物間寧人よろしくね」
怒鳴り込んできた鉄哲をたしなめつつ
金髪碧眼の優等生っぽい生徒がもう1人
「ーーでも、確かに
鉄哲が言うように
A組がこんな粗野な人間の集まりだとは
思ってもみなかったな」
「「「(あ、これよろしくする気ないやつ……!)」」」
煽るような物言いで
クラスを見回した
「やぁ、久しぶりだね」
そして大胆にもそのまま教室の中へ入り
夜羽の前へ
『物間くん久しぶり
違うクラスになっちゃって残念だね〜』
夜羽の一言に物間は
何故か勝ち誇ったように笑みを浮かべ
1 -Aのみなを見回し見下ろし言った
「そうだよね!残念だよね!?
夜羽ちゃんもそう思うよね!?
あははは! 」
「……社交辞令だろ」
どうでも良さそうにボソリとつぶやく
勝己の言葉を聞き逃すことも無く
ちらりと勝己を見下ろし
やれやれと言うように大仰に
首を横にふった
「やはり君にこんな粗野で
野蛮なクラスは似合わない!
B組においで!
僕達は何時でも君を迎え入れる
準備は整っているのだから!」
「も…物間?おめぇ何言ってんだ?」
どうやら彼の言動は
クラスメイトにも奇行に見えているらしい
引き気味に、そして
いぶかしげに物間を見る鉄哲
「あ゙ぁ?んで夜羽がB組なんかに行くんだ」
「彼女が天使だからさ!」
「は?」
『ん?』
「こんなにも
純新無垢で!
心優しく
慈愛に満ちた彼女は
A組に似合わない!
だからB組に迎え入れようというわけさ!」
「はっ、能天気
気まぐれ、脳筋、そそっかしくて
どんくせぇ考え無しの
間違えじゃねぇのか」
「はぁ、君は彼女のこと
何も分かっちゃいないね
じゃあこうしよう
今度の体育祭、そこで僕らは
上位を独占さてもらうよ
B組の誰かが体育祭で1番になれば
夜羽ちゃんはB組のものだ」
「「「はぁー?!?!」」」
「なに言ってやがる
モブがどうあがこうが
優勝するのは俺に決まってんだろ」
「へぇ、そこまで自信があるなら
この勝負受けられるよね?」
「この鳥頭がどうなるかなんか
しったこっちゃねぇよ
とにかく、体育祭で優勝するのは俺だ」
葉隠
「夜羽ちゃんがB組に!?
ちょっとそれどういう理屈!?」
芦戸
「む、むちゃくちゃだー!」
瀬呂
「どっちもスゲー横暴だな」
切島
「てか爆豪も夜羽のこと
どうでもいいとかじゃなくてさ!
絶対渡さねぇくらい言わねぇと!」
飯田
「だいたい、君たちはなんの権限があってーー」
物間の突飛な発言に
A組の面々が抗議する
葉隠
「もう!夜羽ちゃんも黙ってないで
何か言ってやってよ〜!」
峰田
「私にはもう、心に決めた男(ヒト)が…!」
耳郎
「峰田黙って」
急な展開に当事者の夜羽も
ついていけてないのか
驚いた面持ちだ
『うーん………えっと
せっかくA組のみんなと仲良くなれたのに
B組に行ったら寂しいなって言うのと
B組のみんなと仲良くもしたいなって?』
否定だけで終わらなかった夜羽の言葉に
ニパッと笑顔を見せる物間
「っ!なら!」
『でもさ
なんでみんな〝私〟が
1番にならないこと前提で話してるのかな…?』
怒っている訳では無い
けれどどこか黒い笑みを浮かべる
「けっ、あほらしー」
「かっちゃん…」
「おい、あんま煽んなって」
「せぇな、上に行けば関係ねぇ」
「へぇ、それは見物だね」
『全く…かっちゃんらしいなぁ』