片翼の月 弍
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「もうチャイムはなってるぞ席につけ」
なんとも言えない空気感を
醸し出していた夜羽と焦凍など
お構い無しに教室へ現れたのは相澤先生
「「「「えええ!先生復帰はやー?!」」」」
夜羽の時同様
教室へ入ってきた相澤先生を見て
クラスメイト全員が目をかっぴらいて驚く
『わぁミイラマン』
蛙吹
「夜羽ちゃん、人のこと言えないわ」
「んな事より、戦いはまだ終わってない」
生徒全員が席に着いたのを確認し
相澤先生が口を開いた
「まさかまだヴィランが!?」
「雄英体育さーーー」
BAReeeeeeeeeeN
相澤先生の言葉は最後まで聞くこと叶わず
教室の1番後ろの窓ガラスが
何者かによってぶち抜かれた
そしてそれは1番後ろの席
夜羽の目の前に
ぬんっと立ち上がったそれは
オールマイト並の
筋骨隆々爆発マッスル威風堂々な風貌
「夜羽!離れーー」
その何かをヴィランと判断した
クラスメイトや相澤先生は
すぐに臨戦態勢をとり
まだ怪我も完治していない夜羽を
救助すべく踏み出す
寸前
「夜羽ー!やっぱり八咫烏高校に戻ろー!」
文字通り
夜羽に泣き付く大男
窓を突き破り
ヴィランの襲撃かと構えた
先生とクラスメイトなどお構い無しに
『父さんうるさい』
「と」
「「「父さんー?!」」」
クラスメイト達は
まためんたまかっぴらきながら驚く
皆が盛大に驚くのはこれで三度目だ
みんなの目玉は大丈夫だろうか
などと夜羽はくだらないことを考えながら
張り付く父を鬱陶しいげに引き剥がす
「八咫高にはお父さんから言っておくから!
雄英にも手続きしておくからー!」
『父さん相澤先生の話が聞こえない』
「父さんの話を聞きなさいーーーー!!」
明らかにうっとおしそうにする
夜羽を見兼ねて
というかホームルームを進めたいがために
相澤先生が夜羽の父に声をかける
「あー、夜羽のお父さん宜しければ
場所を用意するので応接室へーー」
「君は!担任の…」
「…申し遅れました夜羽さんの担任をしている
相澤消太です」
ミイラマンになっている相澤先生が
ぺこりと一礼をする
「相澤消太…個性を抹消する個性…」
「はい。そうですが…?」
「よし!気に入った!相澤君
夜羽の婿に来ないか!?」
「…は?」
「「「え゛ええぇえーー!?」」」
夜羽の目の前にいた父はいつの間にか
教壇にたっていた相澤先生の元へ
そして鬼気迫る勢いでその両肩を掴む
包帯にまみれて表情は一切見えないが
きっと面倒くさそうな顔をしているに違いない
「お前の親父さん相変わらずだな」
『ねぇ、普通は娘はやらん!って
言うもんじゃないのかなあ?』
「む!その声は焦凍君!炎司……
お父さんは元気かい?」
「あのクソ親父のことはどうだか…」
「はっはっは!相変わらず“うち”と違って
仲が悪いみたいだな!
まぁああつも不器用な男だからな…
あの家がどうしても嫌になったらうちに
婿に来るといい!
な!夜羽」
話を振る父に
夜羽は気だるげにため息をひとつ
『私はまだ結婚する気は無いし
そもそも恋愛すらする気ないのに』
「彼氏も作らず何が青春か!
雄英高校に残りたいなら相応の理由を!
まずは彼氏を作りなさいー!」
「横暴だ…」
「理屈がむちゃくちゃだ」
「相澤先生と結婚したらいったいいくつ
年の差が…」
「背徳感あってゾクゾクするね」
ヒソヒソとクラスがザワつく中
1人声を上げたのが
「夜羽君のお父様!」
くせなのだろう飯田がまっすぐ手を挙げて
夜羽の父に進言する
「げっ飯田立候補?」
「違う!いかにお父様とはいえ進んで娘に
不純異性交友を進めるのは如何なものかと!」
「む、君はインゲニウムのところの!」
「飯田天哉です!兄をご存知なのですね!」
怒ってたのに、
兄を知っていて嬉しそうな飯田
「堅物生真面目なところ気に入った!
もちろん父が望むのは清いお付き合いだ!
君が婿にくるか!」
「だーかーらー僕が言いたいのは!」
飯田がこの破天荒親父の相手をするのが
可哀想に思える
『というか父さん来週まで大阪出張じゃなかったの…』
呆れたように言う娘の何気ない一言に
父は感動したように目をうるませる
「夜羽…お父さんのスケジュールを
ちゃんと覚えて…」
『出張直前までずっと言ってたのお父さんでしょ』
大の男がうるうると娘の言葉に歓喜し
瞳を輝かす
「雄英高校がヴィランの襲撃にあい
夜羽が重症を負ったと今朝聞いてすっ飛んできた!」
文字通りホントに大阪からすっ飛んできたのだろう
父の個性ならものの数時間で来れる距離だ
その服は八咫烏の隊服を来ているが
風にはためきところどころ乱れている
全速力できたのだろうことは
見て取れる
しかし雄英の防犯センサーは鳴っていない
『父さんどうやって入ってきたの?』
「む?ちゃんと入口で手続きして入れてもらったぞ!」
そう言って懐から入校許可証を取り出す
「手続きしたのにわざわざ窓突き破って
入ってくるって」
「大着な」
青山
「スマートじゃないね!」
ヴィランの襲撃があってデリケートな
この時に窓を突破って来た我が父の行動に
頭を抱える夜羽
『ったく…子煩悩もいい加減に「夜羽」…』
「簡単にヴィランの侵入を許すような
学校に、お前を預けたくないんだ」
夜羽の両肩をぎゅっと掴み
真剣な眼差しで語る父
その添えられた左手に
夜羽はそっと手を重ねる
「夜羽…分かってくれるか…!」
ほっと安心したような笑みを浮かべる父を
夜羽は父が破り抜いた窓ガラスにむかい
容赦なく背負い投げ捨てた
「「「なにー?!」」」
「自分の親父投げ捨てたぞ!?」
「容赦ねぇ」
「あれが女子の親父イヤイヤ期ってやつか」
「というか、自分の倍ある大男を
投げ捨てたぞ…」
「おい…」
包帯越しでもわかるほどに
相澤先生が呆れた声でつぶやく
『元々父さんが破って入ってきた
窓から投げ捨てたので問題ないかと』
「そもそもそういう問題じゃないだろ」
チャイムがなり結局は
ホームルームは何も進めることが
出来なかったと
相澤先生は深くため息をひとつ
そして娘の手によって
投げ捨てられた大男を
窓から見下ろし
誰にも聞かれないほど小さく
ため息をついた