片翼の月 弍
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夜羽少女の診察を待ちながら
まだそんなに昔でもない
ごく最近の出来事に思いを馳せていた
『マイト……オールマイト!』
「わっ、あぁ…すまないぼーっとしていたよ」
既に診察の終えた夜羽が
医者と看護師が全員退室したのを
見送ってトゥルーフォームの
オールマイトに呼びかけた
『オールマイト、みんなは
無事だったんですか?』
「あぁ、緑谷少年以外はみんな軽傷
相澤君は左肩の骨折に
右腕は粉砕骨折
13号先生は背中から上腕にかけての裂傷…
2人とも、命に別状はないよ」
『はは、じゃあ私が今回1番の重傷者ですね
なんたって串刺しでしたし
焼き鳥にでもなった気分ですよ』
独特の鳥ジョークに
突っ込めばいいのか笑えばいいのか
悩むオールマイト
『梅雨ちゃん達を助けてくれてありがとうございました』
活動限界が近かったにも関わらず
梅雨ちゃんを、皆を助けてくれた
私はこの人の助けになりたくて雄英に来たのに
『…私が手を伸ばした先にあったのは、
絶望でした』
あそこでオールマイトが来なければ
私一人では助けきることが出来なかった
もし、あの瞬間オールマイトが来なければ
嫌な考えが脳裏を過ぎった
背中をおかんが走り
思わず自身の肩を抱きすくめた
夜羽が何を考えていたのか
わかったのか
椅子に座っていたオールマイトが立ち上がり
夜羽のベットの脇に腰掛ける
そして
頭をぽんぽんとなでにこりと微笑む
「思うに相澤君の怪我が
腕だけで済んだのは
君が脳無を引き付けてくれたからだと思うよ」
そう言ってオールマイトは
包帯の巻かれていない夜羽の
左手を
優しくとる
「君が、この身を呈して守ったんだ」
『…そうでしょうか、相澤先生はお強いですから』
「謙遜することは無い
あの脳無を相澤先生から遠ざけ
あの重い攻撃を君はずっと
いなし続けていたそうじゃないか
そう簡単に出来ることでは無いよ」
もう一度ポンポンと優しく夜羽の頭を撫でるオールマイト
夜羽は照れたようにはにかんだ
「私こそ感謝しなければ
主犯格のふたりは逃してしまったけれど
その他全てのヴィランを捕まえることが
出来たのは、君と相澤くん、
そして頑張ったみんなのおかげだ」
夜羽に感謝を述べ
自然な動作で夜羽を布団に寝かしつけた
「さぁ、もうおやすみ
こんな時間に来た私が言うのもなんだけどね
そうそう明日は臨時休校になったんだ
今日あんなことがあったんだから当然だけど…」
『そうなんですね!
明日再検査をした後
には退院させてもらおうと思ってたので
間違えて登校するとこでした』
「え?!退院?明日?はや過ぎない!?」
『なんでオールマイトが焦ってるんですか
このくらいの怪我ならそんなものじゃないですか?』
「いやいや、君そもそも目覚めてるだけで
とんでもない回復力なのに……」
『ふふふ、でも確かに、
今日はもう疲れちゃいました』
ベットに横になるやいなや
夜羽の目はうとうとと
今にも眠りにつきそうだ
『オールマイト……私、は……』
すべてを言い切る前に
眠りについた夜羽
夜羽の穏やかな寝顔を見て
「続きはまた、学校で聞くよ夜羽少女」
オールマイトはもう一度夜羽の頭を撫で
病室を後にした
薄暗い病院の廊下を一人
歩く音がやけに響いて聞こえる
自分の今はもうない胃のあたりをさする
気丈に振舞っていたがヴィランの攻撃は
夜羽少女の四肢を、翼を貫き、
腹をも貫通していた
それによって
臓器も傷ついてしまっていた
もし、夜羽少女が私のように...
お腹の奥底がずくりと傷んだ
嫌な考えを振り払うように
頭を振った
けれど考えないようにしても
何度も脳裏をよぎる
もし、もっと長くマッスルフォームを保てていれば
もしあの微弱な殺気に少女より先に
気がつけていれば
もし、私のこの身をていしていれば...
最後まで守りきってやれなかった
それどころか緑谷少年を助けるのに
身を呈してくれた彼女に謝罪と感謝を
「夜羽少女……」
病院をでて
彼女のいた病室を見上げる
「次は必ず……」
誰に聞かれるでも無い決意を
ただ月だけが聞いていた
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆
「次は必ず……君を守るよ」
『オールマイト、私は
あなたも、守りたかったんです』