片翼の月 短編
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「くそっ、さっきまで晴れてたのに…!」
まだ桜の散りきらない春の頃
雄英高校の入学式から早1週間
1-B組物間寧人は
登校中突然の雨にふられ
急ぎ足で雄英高校へと向かっていた
そんな彼の耳に
雨の音にかき消されそうなほどか細い
かすかな悲鳴が届く
聞き間違いかもしれない、けれど
彼の足を止めるにはそれだけで充分だった
そして物間は声が聞こえた気がした方へ
また走り出す
今度はさっきよりも早く駆ける
一刻も早く声の主の元へ行けるように
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
「なんだあれは……」
声の主は園児服を着た小さな女の子
降りつける雨が少女の両手に集まり
それがより大きな水球となり
四方八方に放出している
その子の表情は恐怖に歪み
パニックを起こしている
恐らく個性が発現したばかりで
制御出来ていないのだ
威力こそないが
近くには一緒に登園していたであろう
小さな友達もいる
母親も近くに居るが
どうすることも出来ずに
少女の名前を必死に呼びかける
子供やお年寄りに当たると危険だ
通勤、通学ラッシュで
車や自転車も多く通っている
物間は辺りを見回すが
今この場に個性を知る
クラスメイトはいない
辺にいるのは知らない人ばかり
「くそっ、誰の個性をコピーすれば…!」
できればあの子を傷つけず
拘束できるような個性を……
もしくは一か八か
暴走した子の個性をコピーして
あの制御できていない雨を
物間自身が操れれば…
時間が惜しい
けれど考えが上手くまとまらない
近場に知っている個性がない今
どうしたってあの子を助けるためには
リスクが生まれてしまう
辺の人にいちいち個性を確認する暇は無い
女の子の個性をコピーし
代わりに物間が雨を制御する
これが一番確実だ
意を決して
少女が放出する雨を避けながら
少女の元へ向かうが
暴走した個性はなかなか物間を
少女の元へ
近づけさせてはくれない
刹那
女の子を攫う空色の影が
目の前をよぎった
その影は少女ごと
どんどん上空へ昇り
雲をつきぬけ空へ舞い上がる
「……今のは……いったい」
雲の上へと消えた少女と空色の影
それを見計らったかのように雨は止み
少女たちが消えた雲間から
光が差し込んだ
そこから幾筋もの光芒が差し込み
幻想的な光が空を彩った
ほんの少しの間を置いて
光の中少女を抱え
空から降りてきたのは
雄英の制服を着た
金の瞳と空色の髪をたなびかせた女生徒
その姿は神々しく
さながら雲の合間から
青空と、太陽が同時に現れたようだった
2人は地上に降り立ち
雄英生徒の彼女は
優しく少女の頭を撫でた
『雨の日に、水を操る個性が発現して
びっくりしてパニックになっちゃったんだね』
こくりと頷く少女
なるほど、だから雨の降らない
雲の上へと少女を連れたったのかと
物間は納得した
『雨は止んだしもう大丈夫だよ
ほら、空も晴れたね』
つられるようにして見上げた空には
いつの間にか雲はなくなり
青空がひろがっていた
子供を母親の元へ送り届けた彼女へ
物間は声をかけた
「そこに落ちてたカバン、君のかい」
『あ、その制服雄英生だ』
「?
君の制服だってそうじゃないか
僕は1年B組の物間寧人」
『1年生?じゃあ同じ学年だ!』
「じゃあ君はA組の生徒なんだね」
『うーん、どうだろ?
私転入してきてから今日が初登校なんだ!』
入学式からだった1週間で転入生?
疑問は多かったが
もしかしたら、同じクラスになれるかもしれない
そんな淡い期待を物間は抱いてしまった
『あ!私、今日は早めに
学校に来るように言われるんだった
同じクラスだといいね物間くん!』
そう言って彼女は
大きく美しい暗茶褐色の翼を広げ
数度の羽ばたきで一瞬にして舞い上がる
「まって!君、名前は!?」
もう既に見上げる高さにいる彼女に
物間は声を張り上げる
『夜羽!私の名前は月乃瀬夜羽だよ!
じゃあ、また後でね!』
そう言って彼女は学校のある方へ
空を駆けていく
雨上がりの空に浮かぶ大きな虹をくぐって
「また……後で
夜羽ちゃん」
きっとまた会えるだろう
雄英高校ヒーロー科僕たちの待つクラスで
朝のホームルームが楽しみだ
早くまた彼女に会いたい
物間はまた駆け足で雄英へと向かう
天使の様な彼女に
きっとすぐに
再会できるのだと信じて
☁︎︎*.𓈒𓂂𓂃◌𓈒𓐍*໒꒱ 𓏸*˚
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