片翼の月 短編
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「あら、夜羽さん何を作ってますの?」
『百ちゃん見るの初めて?
花かんむりだよ』
夜羽が手に持つのは野花で作られた花かんむり
『こうやって編んで作るんだよ』
葉隠
「わぁ夜羽ちゃん器用〜!」
八百万
「あら?思った通りに編めませんわ」
耳郎
「ヤオモモでも苦手なことがあるんだね」
三奈
「あちゃーよれよれだ!」
お茶子
「あわわ、花が飛んでってもうた」
蛙吹
「ケロ、こっちのお花も可愛いわ」
夜羽のお手本を元に
見よう見まねに
きゃっきゃと花を編む女子生徒達
夜羽がほかのクラスメイトに
花冠の作り方をレクチャーしているのを
勝己が横目で眺める
小さい頃は夜羽も下手クソだったな
と
思いながら
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
川で出会ってから数年経ち
既に小学6年生になっていた
ある日のことだった
あいつに会うため
いつものように森へ入れば
どこから見ていたのか
いつものように迎えに来る喋るカラス
そして当たり前のように
案内されるアイツのところ
〈お嬢、また来てましたぜ〉
『あ、かっちゃんいらっしゃい〜
今日はどうしたの?』
「…別に」
でっかい家の門前にいたから
これからどこかへ出かけるところだったのだろう
今日は道場での修行はお預けか
そう思ったのもつかの間
夜羽は勝己の手を取り
『今から出かけるところだったの!
一緒に行こう!』
山道を登りながら今日は何をするのかと問えば
兄弟子に教わった女の子らしい遊びを
試しに行きたいという
『にぃちゃん達にね
花かんむりの作り方教わったんだ!
武術や剣の修行ばっかりじゃなくて
女の子らしい遊びもしておいでって』
「(ちぇ、むしろ今日はハズレか)」
連れられるがままに夜羽の屋敷から
少し山をのぼり
開けた花畑へ連れてこられた
「この山にこんなところがあったんだな」
『広い山だからねぇ〜結構なんでもあるよ』
早速夜羽はしゃがみこんで
色とりどりの花を摘んで編み込んでいく
『今度木苺がなる所や
アケビの実のなるところ案内してあげる』
「花より食い気か」
『む、美味しいんだよ?』
「だから色気も出ねぇんだよ」
鼻で笑う勝己の言葉に
ぷっくりと夜羽は頬を膨らましむくれる
『もう、小学生に色気なんか出るわけないじゃん
それにお母さんは色気って言うよりも
〝儚げ〟だからなぁ』
今日は身体を動かしていないからか
いつもより夜羽とよく喋った
『うーん、全然輪っかにならない……』
「はっ、ド下手くそが」
『そういうかっちゃんはーー
えっ、かっちゃん何それ綺麗!』
「あ?こんなん何となくでできるだろ」
『むっ、私だって今
コツをつかみ始めたところだよ!』
結局花かんむり作りは
夕日が沈みかける時間までつづいた
『どう?!なかなかの力作だよ!』
「まぁまぁじゃねぇの」
『でも、かっちゃんが作ったやつほど
綺麗にはできなかったなぁ〜』
最後に夜羽が作ったものは
少しよれているところもあるが
最初と比べると綺麗に作れるようになっていた
「おらよ」
『え』
俺が作った花かんむりを被せてやると
満面の笑みではしゃぐ夜羽
『ねぇねぇどう?似合う?』
「馬子にも衣装ならぬ鳥にも花冠だな」
『むぅ、かっちゃんの意地悪』
「夜羽、手ぇ出せ」
両方の手のひらを向ける夜羽の左手をとり
花かんむりと比べるととても小さい
小さな花のリングを夜羽の指にはめてやる
夜羽が花かんむりを作るのに夢中で
暇になった間に何となく作ったものだ
『わぁー!可愛い!ちっちゃい指輪!可愛い!』
大袈裟に見えなくもないが
嬉しそうにはしゃぐ夜羽を見て
まそこまでハズレな一日じゃねぇか
と思えた
しばらく思い出すこともなかった
小さかった頃の思い出を懐かしんでいると
夜羽が花かんむりをもって
勝己の元へ駆け寄った
『どう?かっちゃん上手くなったでしょ』
その手に持つ花かんむりは
かなり細かく編み込まれアクセントには
夜羽の羽も添えられている
小さい頃勝己が夜羽へ作ったものより
綺麗に作り上げられているように思えた
「……まぁまぁだな」
『でしょでしょ!』
フサー
勝己のまぁまぁは褒め言葉だと思ってる夜羽は
満面の笑みを浮かべたかと思えば
勝己にその花冠をかぶせた
一瞬の
なんとも言えない間が
クラスメイト達の間に流れた
「ーーーぬぁにすんだ鳥頭!」
『ふふ、あの日のお返し』
切島「爆豪似合うじゃねぇか!」
上鳴「ブフーーー!」
瀬呂「っ……お姫さんみたいだぜっ…プフっ」
芦戸「爆豪結構似合ってるじゃん!」
蛙吹
「夜羽ちゃん、爆豪ちゃんのために
一生懸命作ってたものね」
轟
「……似合うと思うぞ、その、
オレンジの花とか」
爆豪「わざわざ褒めるとこ
探してんじゃねぇぞ半分野郎……!」
『ショートにも作ってあげるね!』
轟「お、頼む」
ブチギレてる爆豪と
照れくさそうにはにかむ轟
クラスメイトが微笑ましげに見守る組と
爆豪をゲラゲラと笑う組とに別れ
「ぶっ飛ばすーー」
と勝己は両手に火花を散らして追いかけて行く
爆破に巻き込まれないよう
花冠は夜羽に返してから
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
「ったく。クソが」
散々暴れ回ってスッキリしたのか
勝己が帰ってきて
シートに座る夜羽の隣に
ドカりと腰掛けた
そして夜羽がもってた
紙コップを奪い取り一気にあおる
「甘ぇ」
『ミルクセーキだからね』
夜羽はクスリと笑って
口直しのブラックコーヒーを
紙コップに入れ勝己に手渡す
『それにしても、ほんとに
似合ってたよかっちゃん!
写真撮らせて?』
「撮るか!ったく……
何がお返しだ」
『あの時はホントに嬉しかったんだよ?
初めてもらったかっちゃんからの
プレゼントだったからね』
「っ、プレゼントなんて
言うほどのもんでもねぇだろ」
『今でも大事にとってあるんだよ?』
「は?」
『じいちゃんにドライフラワーにして貰って
飾ってるよ!あの指輪もね』
「なっー」
『さすがにもう指にはめられないけどね』
「ーっ、あんくらいいつでも作ってやれるわ」
『ほんと!?今作れる?』
「嫌に決まってんだろ!」
『いつでもって言ったのにー』
「そのむくれっ面は、今も昔も変わんねぇな」
❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁
耳郎
「よりによって爆豪に
花かんむりかぶせるなんて」
麗日
「夜羽ちゃんにしか出来へんわぁ」
葉隠
「ふふ、でも爆豪くん夜羽ちゃんの作った
冠は爆破できないみたいだね!」
芦戸
「可愛いとこあるねー爆豪も!」