片翼の月 短編
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『かっちゃん!ショート!
何あそこ、行ってみたい!』
ショッピングモールであれやこれやと
必要なものや、そうでも無いものを
買い漁っていた夜羽の目に飛び込んできた
キラキラ、ガヤガヤと他とは
異色の空気が漂う
一角を指さした
「あ?お前ゲーセンも知らねえんか」
「なんだあれ、爆豪知ってんのか」
「てめぇもか!」
3人の前にあるのはいわゆるゲームセンター
長い間山で暮らし
1人で山の外へ遊びに行くことを禁止されていた
夜羽はもちろん
あまりこういった娯楽に縁がない
焦凍も初めて見る場所であった
『へぇー、こうやって遊ぶんだやってみたい!』
ゲームをプレイする人たちの様子を眺め
クレーンゲームに目をつける夜羽
一通りゲームの景品を見て周り
大きなサイズのぬいぐるみが並ぶエリア
であるゲーム機の前で立ち止まる
『これ!これ狙ってみる!』
夜羽が目をつけたのは
大きなペンギンのぬいぐるみだった
「お、でっかくていいな」
「んで鳥が鳥取ろうとしてんだよ」
夜羽は勝己のアドバイスで
あらかじめ崩しておいた小銭を取り出す
お金を入れると
クレーンゲム特有の音楽がなり
夜羽と焦凍のワクワク感も高まっていく
「...夜羽、もう少し右じゃないか?」
『え?そう思う?もう少し奥かなって思ってたんだけど』
2人の表情は至って真面目で
あーでもないこーでもないと
微調整を繰り返しているうちに
時間切れになったのだろう
クレーンがぬいぐるみに向かって降りていく
『あ!まだボタン押してないのに!』
「ちんたらしてたら勝手に落ちる
仕組みになってんだよ」
「でも見ろ夜羽、結構いい感じに
はさまれたぞ」
アームはまっすぐペンギンを掴み
そして持ち上がっていく、と
思いきや
ほんの少し持ち上がっただけで
スルリンとアームがペンギンを撫でおちる
結果になってしまった
『あー、行けるかもって思ったのになぁ』
「夜羽、次俺もいいか?」
名乗りを上げた焦凍が今度は
コントロールのボタンを押していく
『わ、いいんじゃない?!
もう真上だよ!』
「おう」
最後のボタンを押し
ゆっくり落下していくアームが
綺麗に中のペンギンのぬいぐるみをはさみあげる
『わ、わ!ドカペン持ち上がりそう!』
「ドカペン?」
「もう名前付けてんのか気ぃ早ぇな」
まるででかい弁当を指すような名前だが
気に入ったのだろう
ドカペン、ドカペン...と呟きながら
食い入るようにぬいぐるみを挟み込む
アームを見つめる
そんなドカペンは
先程よりも少し持ち上がったものの
コロリンとアームの中から抜け落ちてしまった
『うわぁ!持ち上がったのにぃ!』
「悪い夜羽、俺の力不足で」
『ううん、まだ二回目だもん
2回目は最初より持ち上がったし
次こそは...!』
そう言いながら夜羽は
ポケットから小銭を取り出す
あーでもない、こーでもない
と言いながら夜羽と焦凍が交互にゲームに挑戦
上手に掴めただとか
掴んだのにすり抜けただとかと
ゲーム機ひとつで一喜一憂する
夜羽を勝己は一歩下がって眺めていた
『あぁ!ごめんショート!
元の位置に戻っちゃった!』
もう何度目か数えるのも面倒になった頃
ドカペンを持ち上げたまま
取り出し口に動いたアーム
けれどあともう少しというところで
落ちて転がり、元の位置へ戻ってしまったのだ
「いつまでかかってんじゃ下手くそ」
『むぅ、そんなこと言うならかっちゃんやってみてよ難しいんだから!』
「いくらゲームセンター経験者の爆豪でも
このドカペンは手強いんじゃ...」
「はっ、よゆーだわこんなもん」
そう言って特に迷う様子もなく
アームを右へ動かし、奥へ動かし
微調整することもなく
アームを落とす
そして
先程までのらりくらりとアームから
逃れていたのが嘘かのように
安定したまま取り出し口へ
⟬やったねーおめでとうございます~⟭
ドカペンが取れたと同時に
ゲーム機からの賛辞が鳴り響いた
「おらよ」
取り出し口から
少々詰まりながらも出てきたドカペン
夜羽が持っていた荷物をひったくり
空いたその腕の中に
ドカペンを放り込む
夜羽が抱えると
ゲーム機の中に入ってた時より一回り大きく見える
「こんなに大きかったのか
爆豪よく取れたな」
「は?大きさとか関係ねぇだろ」
『おっきい~!ふわふわ!可愛い!
かっちゃんありがとう!』
ドカペンを抱きしめ
嬉しそうに頬ずりする夜羽
「おぉ」
ガシガシと頭をかき、ぶっきらぼうに答える勝己
だったがふとケータイをみてギョッとした顔になる
「そのくそペンギンのために
こんな所に1時間以上もおったんか!
早く帰るぞ!」
「お、もうこんな時間だったのか
夢中になりすぎたな」
『もう帰るの~?』
今日のショッピングがよほど楽しかったのだろう
まだ残りたいと口をとがらせる夜羽
「そんなに来たきゃまた来りゃいいだろ」
「おう、またいつでも付き合うぞ」
2人の言葉に尖らせていた唇を引っ込め
『うん!』
満面の笑みで夜羽は笑う