片翼の月
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森の上空
少年を抱えた状態で
軽々と空をかける夜羽
「おいコラ!なんでこんな抱き抱え方なんだよ」
『え、なんでって連れてけって言うから…?』
「こーゆーのは普通背中に乗せるもんじゃねぇのかよ!女に抱えられて、だせぇじゃねぇか!」
後ろから抱きつきそのまま
持ち上げまているような抱え方が不満らしい
少年が腕の中でじたばたしている
落とされて困るのは少年だろうに
『はは!ドラゴンとかみたいに?
あんな乗せ方しちゃったら私、
翼を上手く動かせなくなるから飛べないよ?』
少年の抗議の声などどこ吹く風
全くお構い無しに森の上空に出て
そのまま目的地へ真っ直ぐ飛び続けた
『ほら、あそこにいる子達お友達?』
上空からだとよく目を凝らさねば見えぬ木々の間
少年のよく見知った3人がいた
「…っちクソナード」
『うーん、けもの道に入っちゃってるね、
迷ったのかな?
あそこはイノシシの通り道でもあるから
鉢合わせちゃうとちょっと危ないんだよねぇ〜』
「おい!俺を適当な所で下ろせ!
アイツらから見えないところでな!」
『え?助けに行くの?別にいいけど
目の前まで連れてってあげるよ?』
「女に抱き抱えられてるところを見られてたまるか!」
自尊心の高い子だなぁ
と思いつつもハイハイ、と
気にした様子はなく
少年には見えないようにニヤリと笑い
『じゃあ“ かっちゃん”お友達と合流したら
直ぐに森の外へ引き返してねぇ』
「は?な、てめっ…!」
なんでって言う言葉さえ出ないほど
動揺し、後ろからだと顔は見えないが
耳まで真っ赤になっている
意地っ張りな男の子
『私、耳がいいからね。お友達みんなずーっと
かっちゃんかっちゃん呼んでるよ』
「…っちぃ」
『また何時でも遊びに来てね』
そう言って3人がいるところとは
少し離れたところに着陸しようと
降下していると
「「「わあぁああー!」」」
少し離れた木々の間、地上に近くなり
かっちゃんでも聞こえた悲鳴
あの3人の悲鳴だ
聞こえた瞬間、ゆっくり降下していた
夜羽は一瞬でに3人の所へ方向転換
ジェットコースターをも思わせるほどの
急な方向転換と飛行スピードに
かっちゃんの首がカクンッとなる
凄まじいスピードに閉じていた目を開ける
木々の間を縫うようにすごいスピードで
駆けてゆく景色
そして見えたのは3人に対峙するイノシシ
「夜羽!つっこめ!俺がやる!」
『!』
具体的な指示はなく
ただ突っ込めという
かっちゃんに夜羽は素直に従った
どうにかできる個性があるのだろう、と
イノシシに手を向け
「死ねぇーくそがぁ!」
ボーンっ
けたましい爆発音
さすがに個性が爆破だとは
思っていなかった夜羽はかっちゃんを抱えたまま
爆風に揉まれ3人がいるところとは
別の方向に吹っ飛んでしまった
2人一緒に仲良く転がっていき
夜羽の背中が木にぶつかって
ようやく止まった
「っおい!だいじょぅ『ふっ…ふふ』あ゛?」
「あーっはっはっは!ボーンって!爆風が!ははは!」
「…そんなにおもしれぇかよ」
『うん!予想外!って感じで楽しかった!』
よっぽど面白かったのか
涙目になりながらお腹を抱えて笑う夜羽
『はぁ〜、私の周り、
鳥の個性もちばかりだったから新鮮で…!』
夜羽は立ち上がりかっちゃんの
周りをぐるりと1周、
頭からつま先まで、身体を眺めてまた笑った
『羽が生えてないのも、飛べないのも、
なんかバーンってできるのも!
そんな人は初めて会ったよ!
森の外にはかっちゃんみたいな
楽しい個性の人が沢山いるんだねぇ』
自分が放った個性に驚き興奮している
夜羽を見て
満更でもないかっちゃんは
その場にどかっと座り込んで笑った
「…まぁ、爆破の個性は俺以外
そうそういねーだろうがな!」
ひとしきり笑って夜羽は
かっちゃんの隣に腰掛けた
「んな事より背中…大丈夫かよ」
あまりにピンピンしてるから
忘れそうになったがさっき夜羽は
爆風に煽られ転がり背中を強打している
『大丈夫大丈夫、この羽頑丈だから!』
何度か羽ばたかせ見せて
元気元気と笑うのを見て安心する
「…そうかよ」
『それよりお友達の所に戻らなくていいの?
こっちに向かってきてるよ』
耳をすませばかっちゃんでも分かるくらい
少しづつ声がこちらに近づいてきていた
一緒に座っていたかっちゃんは立ち上がり
声の聞こえる方へ一瞥し
「…爆豪勝己」
「ん?」
「かっちゃんじゃねぇ爆豪勝己だ」
まだ座ってる夜羽に手を差し出した
その手を取り立ち上がり
『ふふ…月乃瀬夜羽だよ』
「さっききぃたよバカが、鳥頭かよ」
『ひどいっ』
お互いクスッと笑って
爆豪勝己は声の枯れかけてる
友達のいる所へ走っていった
「がっっちゃぁーんー!!」
「るせぇクソデク!鼻水つけんな!」
「かっちゃん!すげー!すげーよイノシシまで倒しちゃうなんて!」
「やっぱつえーよ!すげーよーー!」
そんなやり取りを聞きながら
『よぉ〜し!今夜はボタン鍋だ!
魚も取れたし、大漁大漁!』
夜羽は
頭上にいたカラスに手を振り
少年たちが正しい帰宅ルートに入るのを見届けてから
先程のイノシシと魚の入ったクーラーボックスの回収に向かった