片翼の月
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『…ふふ、ありがとうヒーローさん』
太陽のような金色の瞳が柔らかく笑った
そして俺の差し出した手を掴み
ゆっくりと立ち上がると翼を2、3度
羽ばたかせた
手を取り
ニコッと笑った女の子は
『ごめんね、私のせいで服が濡れちゃったね…
乾かしに行こっ!』
そう言って手を握ったまま
歩き出す
引かれるがままに着いてゆき
そして、連れてこられたそこには
たき火用に集めたのだろう
たくさんの小枝と少し大きめな
クーラーボックス
慣れた手つきで少女は火を起こし
クーラーボックスの中で泳いでいた
川魚に串を刺し、荷物から取り出した
塩をまぶしていた
テキパキとしたその動きから
慣れが伺える
そんな少女が果たして
あんな無様に川で溺れるだそうか
「お前…溺れてた、んだよな…?」
振り返った少女はまたキョトンとした後
ニンマリと笑った
『あははっ、私そんなに泳ぎ下手くそだったかな?』
焚き火に当たりながら
少女は笑った
「…!!あぁ、見てられねぇほどド下手くそだったわ」
濡れた服を脱いで絞りながら
少年は自分の勘違いが恥ずかしかったのか
そっぽを向いた
そう、勘違いだったのだ
少年は溺れていた少女を
助けに行ったつもりでいた
だが肝心のその少女は
溺れていた訳ではなくただ
泳ぎの練習をしていただけのようだ
しかもそのついでにお昼になる川魚も
とっていたよう
けたけた笑いながら
鷲やフクロウの様な翼をパタパタさせる
『まぁ、そりゃあ鳥類だからって
カモやペンギンみたいに上手くは泳げないけどねぇ』
「そうかよ」
騙されたとは思ってないものの
自分の勘違いが恥ずかしい少年
少女と隣り合わせで座っているが
少女のいない方向を見て顔を合わせずにいる
『この辺りにはよく来るの?』
「別に」
『そっか!私は今日はじめて!
この森の奥、山の方に住んでるんだぁ』
「へぇ」
『街に近い森とはいえ、こんなところで同い年くらいの人と会えるとは思ってなかったな〜』
「そうかよ」
『ねぇ、名前はなんて言うの?
私は月乃瀬。月乃瀬夜羽あなたは?』
「ふんっ」
返事はすべて素っ気ない
拗ねているのか、名前も教えてくれないが
少女にそれを気にするような素振りはない
『ほら、焼けたよ』
ずいっと魚を
目の前まで持っていけば
渋々っと言った感じで魚を受け取る
『んー、おいひ』
「あぁ、うめぇな」
『でしょでしょ!
いい塩加減に焼き加減!私料理上手〜』
「料理ってほどのもんじゃないだろ」
素直に美味しい、
といった少年の言葉に喜ぶと
二人はバチッと目が合った
焚き火にあたって暖かくなってきたからか
少年の顔が赤く火照っていた
『ねぇねぇ、君はどんな個性使うの?
私はこの通り鳥個性だよ〜
んで、最近してる訓練は鷲みたいに早く飛ぶ訓練と、
木と木の間とか、障害物を避けながら飛ぶ訓練〜』
あっけらかんと言う少女だが
少年は驚いた
「もう、訓練とかしてんのか」
『うん!家がそーゆーの厳しくてねー!
個性の話とかが好きなの?』
ようやく反応を返してくれたのが
嬉しかったのか翼をパタパタと
羽ばたかした
「別に、同い年くらいなのに訓練とか…
いいなって」
『羨ましいの?じゃあさ、じゃあさ!
今度一緒にやろうよ〜』
「俺に羽はねぇ」
『剣術とか武術みたいな
体鍛える訓練もやってるよ〜!』
「…!…それは、興味…ある」
『やったー!じゃあ今度一緒にしようね!』
「……おぉ」
ペロリと魚を食べきり
もう1匹づつ焼こうかなどとルンルンで
クーラーボックスへ向かうも
夜羽がピタリと、いきなり立ち止まった
「おい、どうした『しっ、静かに…』」
遠くの音を拾おうと
目を閉じ耳をすます夜羽
『…ねえ、ここまでは一人で来たの?』
「あ?あぁそうだけど」
ここに来る前にいつもの連れ達が
一緒に遊ぼうと誘い付いてきていたが
それを撒いて少年は今ここにいる
『同い年くらいの子が三人、ここから
少し離れたとこにいるみたいなんだけど…
ちょっと場所がまずいかもねぇ』
バサッと大きく翼を広げると
飛び立とうとする夜羽の腕を
少年が掴む
「……俺も、連れてけ」
照れてるのか少し
斜め下に俯きながらいう少年に
夜羽は背中に回りこみ抱き抱えながら
軽々と空を飛んだ
ーーーーーー
ちっちゃい頃のかっちゃんは
高校生の頃よりは素直なんじゃないかなと