片翼の月
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夕暮れ時
探索系ヒーローを呼び
逃げ遅れた人がが居ないか
最終確認も終え
ヒーロー活動は終了した
そして待ってましたと言わんばかりに
押し寄せる報道陣
「オールマイト!
そちらの女性とは!?」
「女性?あぁ、この子は生徒でね」
「やはり雄英生でしたか!」
「お嬢ちゃんオールマイトの授業はどんな感じなのかな」
「なんでもいいのでこちらへもひとこと!」
オールマイトと夜羽を囲うように
周りは報道陣で煮えくり返っている
ふと、先程まで一緒にいた2人を探す
「はっ。とろくせぇ」
「頑張れ、夜羽」
2人は既に人壁の向こう側へ
無事逃げおおせていた
さらに追い打ちをかけるように
頭上から声をかけられる
「おっ、お嬢もついにテレビデビューか?」
「こりゃ親父さんも喜ぶな〜」
「こんなことなら、もっと
おめかししてれば良かったな!」
ヴィランの護送も終え、救助活動を終え
次の巡回地へ向かう兄弟子たちが
“わざと”声をかけてきた
「お嬢……?」
「この少女は八咫烏警察と
何やら関係が深いようですが……」
「まさか!八咫烏高校から雄英高校へ
異例の転入を成し遂げた
現八咫烏総督のお孫さん!?」
兄弟子達の茶々で一気に夜羽への
注目が集まった
あまりいい気はしない
だがこれを利用しない手はない
『なんでも……?』
「ええ!なんでも結構です!
一言こちらのマイクに!」
いくつものマイクを夜羽へグイグイと
押し付けるようにあてがい
瞳をランランとさせる報道陣
『ではオールマイト先生
私から先によろしいでしょうか?』
そう言って辺りの報道陣を見渡し
夜羽はあることを確認した
「ああ!大丈夫だよ夜羽少女!
もし途中で噛んだりしても、ちゃんと
編集してくれーー『ではそちらのカメラさん』…」
夜羽が指さすのは
他の報道人を押し退け
夜羽とオールマイトの目の前を
占拠しているカメラではなく
過激な報道人に押しのけられ
斜め後ろで控えめにカメラとマイクを
持っていた2人に声をかける
『そちらのカメラ、生中継ですね?』
「え?あ、はい!宜しければこちらに
一言よろしくお願い致します!」
なぜ自分たちが指名されたのか
分からない様子ながらも
丁寧にお辞儀をして夜羽に
マイクを向ける男性アナウンサー
『では、なんでもいいとの事なので……
つい先日報道陣の方々が雄英高校の
校門を破壊し校内へ侵入するという事件がありました』
夜羽の一言に
先程まで前を陣取っていた報道陣は
びくりと肩を揺らした
ちゃんと心当たがあるのだろう
『 今まで雄英高校でも発令されたことの無い
セキュリティ3が突破され
警報が校内で響き渡り
当然、生徒たちはパニックに陥りました
軽傷ではありますが負傷者も多数出ております』
この事件は夜羽が転入する前の出来事だ
けれど、思うところが多すぎて
黙っていられなかった
「まさか、そんな事件が……!?
それはもう不法侵入、越権行為と
雄英から訴えられてもおかしくない……」
マイクを向けてくるアナウンサーは
顔を青くし驚いている
そう、先日の事件は世間に広まっていない
そりゃあ自分たちがやらかしたことを
わざわざテレビで流したりはしないだろう
そして夜羽が指名した
放送局は関連していないことは
八咫烏警察が調査済み
最近の報道陣にしてはとても
礼儀正しくて好感が持てる
という情報を兄弟子達から貰っていたので
指名した
そしてこのカメラは生中継
余計な編集やカット、隠蔽や捏造はできない
『先程、ヴィランを捕え警察への報告を終えた後
今と同じように、報道者の方に囲まれました
けれどその時私たちには、
ヒーローにはまだ救わなければ、
解決せねばならないことが多くありました
私みたいな小娘が何をと
思われるかもしれません、それでも
我々の、ヒーローが誰かを助けるための
時間を無闇に奪わないでいただきたい』
最後まで言い切って
夜羽は過激派な報道人を
一瞬だけ一瞥する
「もちろんです!
私たちはヒーローの邪魔をしたい訳では
ないのですから…!!」
マイクを握るアナウンサーも
後ろに控えるカメラマンも
力強く頷いてくれたのを確認し
『ご清聴ありがとうございました』
翼を広げ優雅に見える様にお辞儀をし、
顔を上げると少しでも好印象を残そうと
カメラに向けてニコッと笑う
そして、オールマイトの元へ引こうとするが
夜羽に待ったがかる
「あのっ、もうひとつ……
お伺いしてもよろしいでしょうか!?」
『なんでしょう?』
「先程、オールマイトと共に居た大きな鷲
その正体は貴方とお見受けしますが……」
『えぇ、たしかに』
「少し前の事件、覚えていますか!?
火災現場に取り残された女性を
大きな鷲が助け出したという事件を!」
初めて完全獣化して
街に出た日の事件のことを言っているのだろう
男の手がわなわなと震えている
『あぁ、ありましたね』
「あの時の鷲は……」
『私です』
ほんの少しの間話題になっていたのは
知っているが今さらネタバレしても
まぁ大丈夫だろうと
短くそう告げる
男はマイクを投げ出し
夜羽に駆け寄りその両手をガシッと握った
「あ、ありがとうございます……
私の妻だったのです本当に、
なんとお礼を……!!」
『えっ!?』
これは想定外だった
というより、
もしかしたら兄弟子たちは
ここまで調査して、この放送局を
名指しで褒めていたのかもしれない
目には溢れんばかりの大量の涙
いや、すぐに溢れ出し
とめどなく流れ出ている
何度も頭を下げ涙を流しながら礼を言う
アナウンサーの顔は
なかなかすごい顔になっているが
カメラは何故か回ったままだ
止めてあげればいいのに
まだまだ泣き止みそうもないので
オールマイトとほかの報道陣は
そっと違う所へ移動して
インタビューを再開することになった