片翼の月
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勝己side
俺は知らねぇ
あいつのあんな眼
俺は見た事なかった
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
ショッピングモールからの帰り道
何袋も大きな紙袋を左に持ち
鬱陶しく思いつつも
大きなペンギンのぬいぐるみを持ちながら
嬉しそうに前を歩く夜羽を
勝己は後ろから眺めていた
結局ショッピングモールで買った服は
シワになるといけないからと
封を開けず
いつもの黒装束で歩いている
俺からすれば見慣れた
あの大きな翼も
大空を抜き取ったような空色の髪も
真っ黒の和装束も人目を引くようで
その辺のモブどもが物珍しそうに
しかし遠巻きに夜羽を見ていた
「なぁ、爆豪と夜羽はどうゆう関係なんだ?」
「んあ゙?関係ねぇだろ」
何故か横を歩く半分野郎の質問に
素っ気なく答える
が、それを気にした風もなく
奴はさらに続ける
「爆豪も夜羽の親父に
稽古つけてもらってたのか?」
「知るか!
俺はあいつの親父にあったことねぇよ」
突然の夜羽の親父の話に訳が分からず
半分野郎を睨むも
当の本人は視線を夜羽から離さず
こちらには一切視線をよこさない
それがさらに俺をイラつかせる
「そうなのか、俺が行く時はいつもいたから」
「っけ、そうかよ!夜羽の腕
へし折るような親父にはあったことねぇわ」
「…は?あの親父さんが?」
ようやく夜羽から視線を外し
轟は目を見開き驚いた顔で
勝己を見た
「あの過保護でどうしようもなく子煩悩な
夜羽の親父が…」
「子煩悩…か」
確かに腕を折るほどの喧嘩の原因は
呆れるほどしょうもなかったし
夜羽のマンションを見れば
その溺愛ぶりも伺える
「あぁ、恐ろしい程に子煩悩だ
今も気が付かないだけで
親父さんのカラスが夜羽を見守ってると思うぞ」
ストーカーかよ
あいつの親父に関する話は
聞く度にいつも引く
が、
今は半分野郎が夜羽について
自分の方が知ったような口を聞くのが
なぜだか癪に障った
「そうかよ、俺が行った時は
いつもジジイがいたけどな」
「…そうか、俺はおじいさんには
まだあったことがないんだ」
「そうかよ」
「あんな美味い蕎麦が打てるんだ
きっと素敵なご老人なんだろうな」
「はっ、食えねえジジイだぜ」
「?人間は食べられないだろ?」
「そういうこと
言ってんじゃねぇんだわ…!
っち」
聞こえるように舌打ちし
話は終わったとばかりに
少し歩調を早めやつの前へ出る
だが何故かあいつも歩調を合わせ
隣に並んでくる
「俺は、親父同士が知り合いで
同年代の競争相手として、
親父にあいつの家に連れていかれてた」
「うるせぇ、聞いてねぇ」
「まだ個性が発現する前からの付き合いだ」
「……は?」
自分の知らない夜羽の交友関係
そして奴と夜羽の幼少の話に驚く
自分が夜羽と知り合うよりもっと前
まさかそんな小さな頃から
2人は出会っていたのかと
「まぁ当の本人達は
あまり競ってるつもりはなかったんだが…」
自分の知らない夜羽の話を聞かされるのが
なぜか無性に腹が立ち
話を遮ろうと声を荒らげる
「おぃ……聞いてねぇつってんだろ!
いつまでくだらねぇ話を
続けるつもりーーー」
ドゴーン
最後まで文句を言うことは叶わず
ごう音と共に揺れる地面に
至る所から悲鳴があがる
激しい揺れにまともに立つことさえ
ままならないでいると
『かっちゃん!ショート!
荷物はなして!』
夜羽は獣化した足で俺のベルトを掴み
半分野郎を肩に担ぎ
揺れから逃れるために空中へ飛ぶ
『ふんぎぃっ…さすがに2人はっ重っ!!』
いつもは羽ばたきの音1つ響かせない夜羽が
男二人を持ち上げ必死にバタバタと
翼を動かしている
辺りに響き渡る悲鳴に
揺れに耐えかね割れる窓ガラス
どこかの建物の崩壊音
「きゃあ!やめて!離して!」
「返してくれ!そのカバンには大事な書類が!」
「その財布には母の入院費が!」
遠くから聞こえてくる悲鳴に
誰かが地震とは別の被害にあっているのが伺える
不自然なほど規則正しく
聞こえてくる何かを殴りつけるようなごう音
「この地震おかしいぞ…!」
「あぁ個性で意図的に発生している……!
『…しかも共犯か、便乗犯か、
地震を利用して悪さしてる奴がいる』
頭上から聞こえる冷たい声音に
思わず自分を掴みあげる夜羽を見上げる
そこには
今まで見たこともないような
凍てつく鋭い目をしていた
「夜羽、落ち着け」
『……大丈夫、冷静だよ』
ーー誰だ?
思わず口をついて出てしまいそうなほど
まるで別人のような
俺の知らない眼が、そこにあった
半分野郎が心配そうに夜羽をたしなめ
夜羽は大きくひとつ、深呼吸し
眼はいつものあいつに戻った
ピィーーー
夜羽が指笛を吹くと
どこからともなく集まってくるカラスたち
『はぁ、父さん……こんなに沢山
でも今はありがたい』
こいつらがさっき半分野郎が言っていた
過保護な父が夜羽につけてる
見張り……ぃや、見守らせてるカラス達なんだろう
夜羽はその多数のカラスたちを操り
情報収集に飛ばす
『ショートは各地に落下物対策の氷の屋根を!
かっちゃんはデカい落下物が人にあたる前に
どんどん爆破してっちゃって!』
「夜羽は?!」
「てめぇは!?」
『既に崩れた建物に逃げ遅れた人がいないか
捜索、救助にあたる……!』
いまだ揺れているこの現場
3人でできる適切な役割分担だろう
夜羽の提案に神妙に頷く2人
何とか持ちこたえている建物だが
未だ揺れは続き、崩壊の可能性がある以上
一番危険で速急に取り組まねば
ならないのが救助活動だ
揺れの影響を受けず
この中で1番自由自在に動けまわれるのは
夜羽だけだった
『2人も気をつけてね』
そう言い残し夜羽は
崩壊した建物へ飛んでゆく
地震発生から時間が経った今
先程と比べると揺れはにわかに弱まった
この程度の揺れなら
個性を使い動きまわることはできる
離れゆく夜羽の後ろ姿を見送り
焦凍と勝己も走り出す
「……んだよ、あの眼」
小さい頃からの付き合いで
何年も一緒に過ごしてきた
だけどそれは自分だけではなかった
そして自分の知らないあいつを
半分野郎は知っていた
それが妙に胸に突っかかる
それを振り払うように
勝己は走り出し
ビルの上から落ちてくる看板を
爆破し吹き飛ばし
道路を塞ぐ瓦礫を吹き飛ばす
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個性の使用うんぬんとありますが
攻撃に使わなければOK位の感じで読んで頂ければ