片翼の月
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夜羽が街から森へ帰った日から
週末
森の中を歩いていれば
今日の迎えは大鴉だった
夜羽が獣化したときのすがたよりもかなりでかい
いつも通り見計らったかのように迎えに
来るなんかしらの鳥
それに黙って着いていけば
連れていかれるあいつのところ
今日は縁側で庭を眺めながら
片膝を立て、片手で茶を啜っていた
人目のあるところでは姿勢よく、行儀よくを
心がけてるあいつが
片膝立てて片手で茶を啜っているのは
とても珍しく思えた
真っ黒な着流しに黄色の角帯
空色の髪は風でサラサラ揺れている
いつもなら案内役の鳥が
「お嬢、また来てやしたぜ」そう言ってから
どこかへ飛んでいくのに
今日は声もかけずに消えていった
『今日は、何をしに来たの?』
こちらに振り向きもせず問いかける
いつもならここで俺が別に、と答え
じゃあ一緒にこれしようか
というのがいつもの流れ
「話をしに来た」
『じゃあ、一緒にお話しよっか』
夜羽の隣にどかっと腰掛けると
見計らったように
お茶を差し出された
道場でもよく給仕をしている
メガネだ名前は忘れた
ちらっと夜羽を見てぎょっとした
「おめぇその右手どうした」
包帯ぐるぐるで明らかに怪我しましたって風貌だ
『ん〜?方向性の違いってやつ?』
「はぁ?」
『ふふふ』
面白そうに笑いながらまた茶をすする夜羽
何となく、これ以上理由を聞いても
答えてくれない気がして聞くのはやめた
しばらくは2人とも何も話さず
ただ茶をすする音だけがしていた
「明日は雄英の一般入試だ」
『…へぇ』
「おめーは来ないんか」
『明日?そーだね明日はジィちゃんと
予定があったはず…だっけな〜』
暗に行かない、と言われ
期待が外れショックを受けてる俺がいた
「そーかよ」
『そーだね』
次は短い沈黙だった
「デクをそそのかしたのはお前か?」
『デク?』
「…緑谷出久」
『あぁ!いっくんね』
「ハァ!?いっくん!?んでそんな呼び方っ」
『ははは!別にそそのかしてないよだって彼、
私と会う前からずっと雄英高校って心に決めてたみたいだし』
「あいつは無個性だ」
『うん、聞いたよ〜大変そうだよね』
ダンっ
湯呑みを床に叩きつけるように置き
ギッっと夜羽を睨みつけた
ほんわか喋ってるのはいつもの事だか
今日は無性にイラついた
「“ 大変そう”じゃねぇだろ大変なんだよ
生半可な力で夢見て怪我でもしたら…!」
『うーん、そうだよねぇ後天的に何か
個性でも現れればいいんだけど』
「…ねぇよ個性の発現はもれなく4歳から
個性が発現してたけど気づかず無個性として
生きていたらひょんなことで個性発覚…
そーいった事例はあるけどあいつはそうじゃねぇ」
ヒーローオタクなあいつなら
何から何まで試しているだろう
それでいて、何も無いんだ
発現してたのに気がつかなかった
事例はあっても
発現せず、後天的に発現した事例はない
『そっかぁ〜いっくん自身の発現の線はなしか〜
じゃあ誰かから貰うか生身で頑張るか…』
「はぁ?個性をもらう?何言ってんだ」
突拍子もない発言に耳を疑った
てか、こいつの頭を疑った
『まぁ、裏の世界で噂程度に聞く話なんだけどねぇ
個性を与える個性
個性を入れ替える個性
個性を引き継ぐ個性
器を求める呪われた個性
どんどん宿主を変えて乗り移っていく寄生型の個性
事実なのか誰かの妄想か
まことしやかに囁かれているよ』
「裏、ねぇ」
『あ、誰にも言っちゃダメだよ?
機密事項だったかも!』
「そーいうのをポンポン喋るんじゃねぇよ
鳥頭!…俺だったからよかったものの!」
『うん!かっちゃんで良かったよ』
「…くっ」
満面の笑みを浮かべられ
それ以上罵倒の言葉が出てこなかった
『明日が、いっくんにとっての第1関門ってやつだね!』
「…俺もだよ」
『ははっかっちゃんは余裕なんだから
第1関門なんて言う程じゃないでしょ?』
「はっ!わかってんじゃねぇか」
『いっくんも、一緒に雄英受かるといいね!』
「…さぁな。茶」
照れてる訳では無いがそっぽを向いて
茶のおかわりをもらう
「…あちぃ」
『明日、試験頑張ってね』
ニカッと笑うその笑顔を見て
立ち上がる
「たりめぇだ。ごちそーさん」
赤くなる顔を見られたくなくて
ヒラヒラっと手を振って家路に着いた
2人のやり取りをじっと
1羽の大鴉が見つめていた
それを夜羽も気がついていたが
そのままお茶をもう一杯
庭を眺めながらすすっていた
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早く1-Aの皆と絡ませたいですね