ー死神篇ー
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「みんな早く!始まっちゃうよ」
「おなかすいたー!おはぎあるー?」
「ねぇよ!」
「きなこかかってるやつー!」
「拳西に買ってもらいな?ね?」
「買わねぇよ!」
「ったく、行くで」
百年かけた藍染との因縁の決戦後、仮面の軍勢であった私達は、総隊長より尸魂界への帰還提示を受け、死神へと復帰した。
9人居た仲間は、二つ返事で受け入れた者と現世に残った者。リサに至っては自分で会社を立ち上げるなどと、それぞれ別の道へと進んだ。
いざ死神に戻ってみれば、隊舎の修復やら書類やらと忙しく、今朝やってきた地獄蝶により、本日復帰後初めての隊主会が開かれることを知る。
三、と書かれた白い羽織を身に纏い、一番隊舎の前まで来れば、大きく重々しい扉の中へと足を踏み入れた。
※
「早よう入らんか!」
「すみません!!」
五人揃って向かえば、案の定、来たのは私達が最後だったようで、総隊長から怒声を受ける。
謝る私に対し、ヘラヘラと呑気な平子の態度に、笑う人に呆れる人と他隊の隊長達からは様々な反応をされ、急いで列に加わった。
新任の儀が終わればその場で解散となり、各自隊舎へと戻っていく。
「やっぱ、怒られたね?」
「だから先行こう。言うたやん」
「2人のこと、ほっとけないじゃん」
解散後、平子と2人並んで歩けば、話題は先程の隊主会の事であった。
結局あの後、諦めきれない白により、拳西がおはぎを買いに行き、少し遅れてしまったのだ。
普段からワガママな白の面倒を、文句を言いつつ見ている拳西を尊敬と共に哀れに思う。
「めんどいやっちゃな」
怠そうに握られた手を握り返せば、優しい顔をする彼と目が合う。
「...お茶でも飲んでく?」
「おう。」
すれ違う隊員に挨拶を交わしながら隊主室に入れば、彼と2人きりだ。
「煎茶でいい?」
茶葉を取り出し急須に入れれば、背後に立つ平子から抱きしめられる。
「...寂しないか?」
甘い空気を出す彼に戸惑いつつも、私を心配してくれているのが分かる。
仮面の軍勢の頃は常に誰かと一緒だった。だが死神になってしまえばそうもいかず、皆隊も違えば自分達は隊長という立場上、穴を開けられない。加えてここ最近忙しかった。
現に隊主会の今日まで、3日程度会わなかったのだ。
「寂しくないって言ったら嘘になるけど、大丈夫だよ?みんな優しいし、真子いるもん」
回された腕を掴めば、ひっくり返され近づく顔
チュッと触れた唇が離れれば、満足気な笑みを浮かべる彼を正面から抱きしめた。
「可愛い子について行っちゃだめだよ」
「アホか。んなもん眼中ないわ」
※
「帰ってきた!」
隊主会後に行われた副隊長集会が終われば、近づく霊圧に紹介したい子がいると平子を執務室へと連れて行く。
「じゃーん!副隊長の、ギンちゃんです!」
「よろしゅうお願いしますゥ」
裏切り者とされていた市丸は藍染の攻撃後、決死の回道でなんとか助かり、全ては藍染を倒す為のスパイだったと身の潔白を証明し、今は三番隊の副隊長をしている。
「話には聞いとったけど、ホンマに副隊長なんやな。お前なんか平隊員で充分やろ!」
「実は監視の意味もあって...」
「隊長はん怖いわァ」
わざとらしく抱き付く市丸に、離れろと叫ぶ平子へ引かれ、彼の腕の中に収まる。
「気安く触れんなや」
「嫉妬深い彼氏さんやなァ」
「ちょ、真子、恥ずかしい...」
「何がやねん」
その後も市丸に揶揄われていた平子は、心なしか嬉しそうだ。
「隊長はん、えらい迷惑かけて、すんまへん」
「...お前にされた事なんか、もう忘れたわ。後悔しとるんならきちんと償い」
雛森の迎えで三番隊舎からの帰り際に交わされた言葉と表情に、2人なら大丈夫だ。と安心して平子を見送った。
※
深夜も近づき肌寒さを感じながら、帰り際に市丸が入れてくれた煎茶を飲む。
終業時間はとっくに過ぎているがこの百年間の三番隊を少しでも知ろうと過去の報告書を確認していく。
1人残業も続き、今日1日の出来事に緩む頬、早朝から行われた隊主会も重なり意識は半分ほど落ちていたった。
ふと、背中へ感じる熱に重い瞼を開けば整った顔にキラリと光る金色。
ぼーっとする頭で平子と共に寝ている事を理解すれば、きっと隊主室で寝てしまっていた私を、彼が自室まで運んでくれたのだろう。
「ありがと、だいすき」
鼻を掠める彼独特の香りに誘われるように、頬へと唇を落としまた目蓋を閉じた。