私が代わろうその役目
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同じクラスの順平君が巌戸台分寮に入寮したのはあれからすぐのことだった。
「えっ! 結城とゆかりッチだけじゃなくて、玲チャンもなの?!」
『そうだよ。入ったばっかだけどね。』
「つーか、2-Fすげーな! 強者どもの集まり、みたいな? よろしくな!」
『私そんなに強くないと思うから、期待してるよ!コンゴトモヨロシク。』
「まっかせなさーい! オレがちゃーんと守ってやっから!」
早速用意された顔合わせの場での明彦さんと幾月の提案により、“タルタロス”へ赴くことになったのだが、いざそれを目の前に私と順平君はその禍々しさに気圧されていた。実際に見るとこんなにもデカいのか…頂上まで行ける気がしない。ゆかりちゃんは慣れているのか、平気そうだ。理君は…まあいつも通り。
「今日の探索は入り口入ってすぐの1階までだ。リーダーは結城、お前がやれ。」
「えっ?! なんでっすか? コイツ、リーダーっぽくないでしょ!」
「中に入ればシャドウがウヨウヨいるぞ。その召喚器の引き金を引き、己のペルソナを手足のように扱い、襲いくるシャドウを一掃。伊織、お前はできるか?」
「う…。」
「結城と雪村は戦闘経験者だ。結城は冷静に物事に対処できると見込んでリーダーに抜擢した。雪村、結城のサポートを頼んだぞ」
『了解です!』
「えぇ…、玲チャンも戦闘経験者なの。」
「何度も言うが、今日の探索は1階までだからな。」
「はい。…じゃ、行こうかみんな。」
エントランスから階段を登り、タルタロス1階へ足を踏み入れる。中は薄暗く、べちゃりべちゃりと何かが蠢く音が遠くから聞こえる。これはシャドウが移動している音だ。流石臨場感が違うな、なんか緊張してきた深呼吸しとこ。
『ふぅー…』
「なになに、玲チャン、怖いの?」
『ん?シャドウは殴れるから怖くないよ?』
「あ、ソーデスカ…。」
<通路に沿ってそのまま進んでくれ。シャドウの反応がある>
『おぉ!美鶴さんの声が聞こえる。』
「あー、なんか、先輩のペルソナの能力らしいよ。詳しく知らないけど。」
『へー。頭に直接響くタイプなんだね。』
<岳羽の言う通り、これは私のペルソナの能力だ。こちらからサポートするから、私の声に従って行動してくれ。結城、シャドウはいるか?>
「はい。1体見つけました。」
<よし。ならまずその1体を全員で一掃してくれ。くれぐれも気をつけてな>
「おっしゃー!オレの勇姿を見せてやんぜー!」
理君の合図に従い、4人でシャドウを囲み武器を構える。
私の武器は“双剣”だ。実は私は足技の方が得意なんだけど、武器とかあった方がガードしやすいって事で、寮の倉庫に眠っていた双剣を使わせてもらっている。双剣には正直まだ慣れていないが、槍とか薙刀よりは身軽に動けて自分に合っていると思う。
理君の武器は片手剣。とりあえず、という形で切り込んだその身のこなしは、流石主人公と思うほど小慣れている。正直見惚れる。
『理君は実はどこかの魔王討伐でもしてきた勇者だったり?』
「実はそう」
『えっ!』
「んなわけないでしょ! 結城君は適当言わない! 玲は見惚れてないでちゃんと武器構えなさい!」
『はぁーい。』
「いや、ここはオレに行かせてくれ!」
順平君 は緊張した面持ちで召喚器を側頭部に当て、気合いの声と共に引き金を引いた。現れたペルソナ、ヘルメスを使い、火炎属性のアギを放った。
「しゃあッ! 見たか! オレだってできんだよ!!」
「ッ、…私だってやってやるんだから!」
順平君の勢いに背中を押されたのか、ゆかりちゃんも召喚器を取り出し、銃口を額に押し付け引き金を引いた。あの日の屋上では彼女は出来なかったことだ。ゆかりちゃんのペルソナ、イオが風属性のガルを使うと、シャドウは突風に包まれ、そして消えた。
『消えた…。戦闘終了?』
<伊織、岳羽、よくやった。伊織のヘルメスは火炎属性を得意とするらしいな。岳羽のイオの得意分野は風のようだ。シャドウには弱点があるものも多くいる。反対に、ペルソナにも弱点があるから、属性の相性を考えて戦闘に挑んで欲しい>
『私の弱点なんだろ?早めに知っておきたいな。』
「……玲のペルソナで、試してみたいことがある」
『ん?試したい事?』
「そう。次の戦闘、俺の指示で動いてみてくれないか」
『了解!』
自分でもよくわかってないのに、何か知っている様子の理君。こうゆうのは任せてみよう。きっと上手くいく。感覚的にはバッファー要員な感じがするんだけどな、どうなんだろ?
ふとゆかりちゃんの方を見ると額に滲んだ汗を手の甲で拭っていた。
「はぁ、やっとできた…。」
『ゆかりちゃんのペルソナ、綺麗だったね。』
「そう? …ありがと。ところで玲、初タルタロスだって言うのに随分とリラックスしてない?」
「…ゆかりッチ、めっちゃズケズケ言うじゃん。」
『順平君いーのいーの。それもゆかりちゃんの良い所だから。まあ私的にはシャドウは殴れるから怖くないんだよ。あと、みんなが居るからかな?』
「まーいいけど。ていうか結城君が魔王討伐の勇者ーみたいなバカなこと言うのは順平だけにしてよ。生まれ変わりだとか前世だとか、あるわけないんだから。」
『……あー、はは。うん、だよね。』
ここに別世界からトリップして来た人がいるんですーなんて、やっぱり気軽に人に話せないんだよな…。
<結城、近くにシャドウの反応がある。右手の通路を進んだ先だ。恐らく、2体>
「進もう。」
「次もやってやるぜ!」
理君を先頭に通路を進むと、美鶴さんの言う通りシャドウが2体いた。先ほどと同じように、4人でシャドウを囲む。
「玲。」
『はーい、ペルソナ。』
召喚機を額に当てて引き金を引くと、光と共にエレボスが現れた。理君に視線を送り、指示を待つ。
「氷結のイメージを、シャドウじゃなくて僕の武器に当てるか纏わせて見てくれ。」
『なるほど?氷結のイメージ、武器に、当てて纏わせる…。』
するとエレボスは片手に集めた光の玉を理君の片手剣に向かって雑に投げた。すると理君の片手剣が淡く光出す。
『!…氷結属性が…着いた?』
「ああ、聞いていた通りだ」
エレボスからの光の玉を受け取った片手剣は、氷結属性を持った片手剣に変化した。理君がそれでシャドウに切り込むと、氷結属性が付与された攻撃になった。
「次は、伊織の武器に疾風属性」
「ええ! オレ?!」
『よーし、順平君いくぞ、やったれ!』
先程と同じ要領で、順平君の持つ大剣に疾風属性を与える。その武器で順平くんがシャドウに斬りかかると、疾風属性を弱点とするシャドウが一撃で消えた。SP的にも燃費が良い技だからとても気に入った。
『属性付与か。攻撃の幅が広がるね。』
「玲のペルソナは、今のところサポート系の能力に秀ででいるらしい。」
『ふーんこう言う使い方は知らなかった。ねえさっき“聞いていた通り”って言ってたけど、誰に聞いたの?』
「エリザベス…ほら、ベルベットルームの。」
『ああ。納得だわ。あのさ。』
<結城。>
「はい。」
<雪村への指示、見事だった。スムーズにシャドウを殲滅できたようで何よりだ。その感じでこのフロアを調査し、ひと通り回ったらエントランスまで戻ってきてくれ。くれぐれも無理をするな。危ないと感じたらすぐに引き返すように>
「分かりました。…伊織、岳羽さん、まだ行ける?」
「当たり前だっつーの! まだまだやれるぜ!」
「私も大丈夫」
2人からの頼もしい返事に小さく頷いた後、彼は隣に立つ私に視線を寄越した。
「…玲も平気?」
『…まだまだ行けるよ。』
「よし、じゃあ行こう」
