私が代わろうその役目
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ポロニアンモールにある、カフェ・シャガール。ちょっとオシャレな雰囲気で、老若男女あらゆる人に人気のカフェでは、“フェロモンコーヒー”なるドリンクが有名だ。
バイトするならココって決めてたんだよねー。
別にお金に困っているわけではない、銀行口座を確認したら、一生遊んで暮らせるくらいの金額が入ってて目が飛び出たのは記憶に新しい。
ではなぜバイトをするのか…。単なる憧れだったりするので無理しない程度にシフトを入れてる。
『いらっしゃいませ。ご注文をお伺いします。』
「あれ、あなたは…。」
「玲?」
『おや?理君と、えっと…?』
「私、西脇結子。隣のクラスなんだ。」
『あれ?私の事知ってる感じ?嬉しいな!……もうちょっと話したいところなんだけど、混んできそうだから先に注文いいかな?』
「あっ、ごめん! じゃあ、カフェラテとシフォンケーキ。」
『理君は?』
「フェロモンコーヒー。」
『かしこまりましたー。ではお席でお待ちください。』
カウンターから離れる2人を見送り、続々と入店してきたお客さまをテキパキと捌く。丁度捌き終えたタイミングで理君たちの注文が用意されたので、トレンチに乗せて彼らが座るテーブルに向かった。2人が座るテーブルでは、理君が何かを話し、それに対して西脇さんがコロコロと笑って、とても楽しそうだった。コミュも順調そうで何よりだ。きっと部活の勧誘だろう。
『お待たせしました。カフェラテとシフォンケーキ、こちらはフェロモンコーヒーです。』
「雪村さんありがと! さっきはごめんね、バイト中に声掛けちゃって。」
『大丈夫。声掛けてくれて嬉しかったよ。』
「2-Fに宮本っているでしょ? あいつの幼馴染なんだ、私。あと陸上部のマネージャーもやってるから、もはや腐れ縁なんだけど。前に日直の仕事、ミヤの分までやってくれなかった?」
『あー、そんなこともあったかも。宮本くんと日直のペアになったんだけど、彼が早く部活行きたそうにしてたから。私特に用事無かったし、それならもう部活行きなよって、行かせたね。』
「そうそれ! 山科さんマジ神だわーって陸上部で騒いでてさ、それで知ったの。ていうかアイツのこと甘やかさなくていいよ! 日直の仕事はやってトーゼンなんだから。」
『まあまあ…。』
「…玲、ココでバイトしてたんだ。」
『うん。趣味程度にね。楽しいよ、バイト。』
「雪村さんと結城君は寮も一緒なんだっけ?」
『そうだよー。あ、そうだ西脇さん、私どこか運動部に入りたいんだけどおすすめあるかな?』
「陸上部!」
『いいね、陸上部。』
「の、マネージャー!」
『マネージャー?』
「めっちゃ募集中! お願い、入る部決めてなかったら是非!」
『私、体動かしたいから、マネージャーはちょっとな…。』
「側から見てたら分からないかもだけど、マネージャーってマジで体力勝負だから! 重いものも持つから足も腕もムキムキになるよ!」
『あー確かに。なりそう。』
「そうなの! 3年の先輩が去年引退してから新しい人入ってなくてさー。マネ私だけになってホントに大変で。ほら、結城君も陸上部入ったとこだし!」
『お、理君陸上部入ったんだ。』
「うん。」
「結城君はミヤも驚くほどの才能だよ!」
『へぇ。流石だなぁ。』
「今決めろとは言わないし、前向きに考えてみて! …結城君、分かってるよね。雪村さんのこと寮で口説き落としといてね」
「分かった」
『ははっ、理君に口説かれるなんて嬉しーな。』
理君達のテーブルで少しだけ話をしていたら、別のテーブルから呼ばれた。
『ハーイ!……じゃ、ゆっくりして行ってね。私はバイトに戻るから。』
「良い返事、期待してる!」
「バイト頑張って」
『またね!』
寮に帰った後バイト終わりに貰ったフェロモンコーヒーの豆をキッチンで挽いてたら、理君が顔を覗かせて来た。
「こんなとこに居た。」
『私を探してたの?』
「口説きに来た。」
『あー、あれね。』
「……それは何してるの?」
『今はコーヒー豆を挽いてる。理君も飲む?』
「飲む。」
『はーい。一緒にラウンジで飲もっか。』
手際よくコーヒーを2人分淹れてラウンジのソファに座ると、理君は隣に座って来た。…え口説くって陸上部の話よね??そうだよね??
改めて陸上部の勧誘への返答に悩んでいると、帰ってきた順平君が顔を覗かせてきた。
「よーっす! 結城に玲チャン、何の話してんのー?」
「口説いてる。」
「え…ええっ?! お前、SEES内では面倒起こすなよ?!」
『冗談、冗談だって。なんかね、西脇さんが私に陸上部のマネージャーになって欲しいらしくって。勧誘の命を受けた結城君が頑張ってるんだよ。』
「はぁ? なんだよもー、そんな話かよ。で? 玲チャンはどうすんの? 陸上部なら宮本もいるよな。アイツいい奴だよ」
『陸上部の活動って、何曜日だっけ?』
「月曜、火曜と…あと木、金」
『バイト被ってたら部活行けないんだけど、大丈夫かなぁ?』
「たぶん大丈夫。俺も、来れる時だけでいいって言われてるし」
「玲チャン、バイトなんてやってたっけ?」
『うん。この間からシャガールでバイトしてるよ。シフトはそんなに入れてないけどね。』
「へー、いいじゃん。おっと、そろそろドラマ始まるから、部屋に戻るわ!」
じゃ!と、爽快に階段の方に向かう順平君を2人で見送る。
「陸上部のマネージャーの件は、承諾ってことでいいか?」
『うん、いいよ。そもそも体動かすのが目的だから、マネージャー位が夜の探索に影響出ない程度で丁度良いかもしれない。』
「…それが目的だったのか。」
『そう。ランニング程度ならやってたんだけど、それだけじゃ足りない気がして。』
「なるほどな。」
『話変わるけど、SEESのみんなも名前呼びにしない?』
「何で?」
『その方が仲間感が出る。ゆかりちゃんも順平君も嫌とは言わないよ絶対。』
「そんなもんか」
『そんなもんだよ。』
