【長編化 候補作品】中編 ヒロアカ 轟焦凍夢
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轟SIDE
もし、時間を戻せるなら…俺は雄英の1年だった頃に戻りたい。
そして、平野が一人ですっ飛んで行かない様に何が何でも強くなって、
今度こそ側で、どんな敵からも守ってやりてぇ…。
高校を卒業して、夢だったヒーローになっても、ずっと心の中のモヤが取れない。
『新人ヒーローナンバーワン』だとか、『ハイスペックな強個性』だとか言われても、
いつも素直に喜べねぇ…。だって『ナンバーワン』は、アイツだから…。
みんな忘れて行く…アイツの存在を。日が経つごとに忘れて行く。
あんなに強かったアイツを、あんなに人の為に頑張ってたアイツを、
まるで最初からいなかったみたいに…。
今思うと、俺は平野の『強い部分』しか見ていなかった。
『ヒーローを目指すライバルとして』でしか見ていなかったから、
アイツの逞しい部分しか意識していなかった。
平野だって辛い時や、苦しい時があったはずなのに…
記憶の中のアイツは自信に満ちた笑顔か、静かに前を見据える凛々しい顔か、
仲間に笑い掛けてる顔しか思い出せない。泣いてる顔なんて、見た事ねぇ。
俺がそれだけ『見ていなかった』んだ。
もっと『女として』のアイツを、『平野自身』を見ていれば良かった。
アイツは俺の事も、他の奴らの事も、よく見て気遣ってくれたのに。
いくら強い個性を持っていて、将来を有望視されて、たくさんの人に褒められても…
俺は『大切な女性(ヒト)一人守れなかった情けない男』でしかない。
「………」
家で独り、首から下げた平野の形見をぼんやりと見詰めて撫でる。
「……もう一度、逢いてぇな」
こんな事言ってる俺を見たら、アイツは『しっかりしろ』って、困ったみてぇに笑うんだろうな…。
そう思うと少し笑えて、飯でも食うかとベッドから腰を上げた時、気配を感じた。
『――強い後悔の香りがしますねェ…アナタ』
「!?」
咄嗟に距離を取ると、マントとフードで顔と全身を覆った男か女か分からねぇ奴が、
ベランダの窓越しに俺を見ていた。
『ヒーロー・ショート…いえ今は、轟焦凍と呼びましょうか』
「敵か…」
自宅までつけられていたなら気配で分かったはず…いつからそこにいた?
そう考えていると、奴は楽しそうに笑った。
『ワタシがここに現れたのが不思議ですか?
ワタシはアナタの心に強く残る後悔に引き寄せられて来たんですよ』
「俺の、後悔…」
『そう、アナタは大切な人への気持ちに気付くのが遅れた。
そしてその大切な人を守れず、死なせてしまった。
そんなに強い個性と実力があるにも関わらず…』
「!!」
『その人はいつもアナタの超えるべき目標として、前に立ち続けてくれた。
時に励まし、時に競い、時にアナタを救ってくれた。
強力なライバルであり、アナタの人生を変えてくれた恩人でもある』
「……何だ、お前」
まるで今までの俺たちを見て来たような言い方に驚いていると、ソイツはありえねぇ事を言った。
『逢いたいですか? 彼女に…』
「な…」
『もう一度、逢いたいですか?』
ニヤケた顔で聞いて来るソイツに苛立って、個性の氷が腕を覆い始める。冷気も上がって部屋が凍り出した。
「…ふざけんな、そんなこと出来たら悩んでねぇんだよッ くだらねぇ事言ってねぇで…」
『ふざけてませんよ』
「!」
急に真面目な声に変わった奴に、氷が止まる。
『ふさけていません。本気です。本当にやり直したいなら、ワタシの個性でお手伝いしましょう。
…といっても未来が変わる確証もありませんが』
「……本当に、やり直せるのか?」
『ええ、まあ頑張ってもらうのは【過去のアナタ】ですが』
「どういう意味だ?」
『私の個性はかなり変わっていましてね…【過去の自分に対して一時的に感情をリンクさせる】という物で、
つまり過去のアナタへ今のアナタの感情をリンクさせると言う事になります』
「俺の…感情を…過去へ…」
いつの間にか、ソイツの言葉を真に受けていた。それほど俺は思い詰めていた。
もしも、もう一度『あの頃に戻れるなら…』そう思うと、縋りたいとさえ思っちまった…。
グッっと胸元のネックレスを握ると、俺の想いを汲み取ったらしい奴の手が光る。
『では、よろしいですね…?』
――パアアァァァ…!
「!」
白い光に包まれて、俺は思わず目を閉じた。
吸い取られるように意識が遠くなっていく…朦朧とした意識で、
真っ白な世界で、アイツの背中が見えた。
いつも追い掛けた小さな背中…。見えているのにいつも届かなかった背中…。
手を伸ばすとアイツは振り返って笑った。見慣れた自信に満ちた凛々しい笑顔で、こっちに手を伸ばして来る。
「ひらの…おれ、」
『―――――。』
意識が途切れる瞬間、平野がなんて言ったのかは分からねぇ…
俺の名を呼んだような…何か別の言葉だったような…。
俺の手は届いたのか?
なあ平野…もう一度逢えたら、俺はお前に…―――――。
もし、時間を戻せるなら…俺は雄英の1年だった頃に戻りたい。
そして、平野が一人ですっ飛んで行かない様に何が何でも強くなって、
今度こそ側で、どんな敵からも守ってやりてぇ…。
高校を卒業して、夢だったヒーローになっても、ずっと心の中のモヤが取れない。
『新人ヒーローナンバーワン』だとか、『ハイスペックな強個性』だとか言われても、
いつも素直に喜べねぇ…。だって『ナンバーワン』は、アイツだから…。
みんな忘れて行く…アイツの存在を。日が経つごとに忘れて行く。
あんなに強かったアイツを、あんなに人の為に頑張ってたアイツを、
まるで最初からいなかったみたいに…。
今思うと、俺は平野の『強い部分』しか見ていなかった。
『ヒーローを目指すライバルとして』でしか見ていなかったから、
アイツの逞しい部分しか意識していなかった。
平野だって辛い時や、苦しい時があったはずなのに…
記憶の中のアイツは自信に満ちた笑顔か、静かに前を見据える凛々しい顔か、
仲間に笑い掛けてる顔しか思い出せない。泣いてる顔なんて、見た事ねぇ。
俺がそれだけ『見ていなかった』んだ。
もっと『女として』のアイツを、『平野自身』を見ていれば良かった。
アイツは俺の事も、他の奴らの事も、よく見て気遣ってくれたのに。
いくら強い個性を持っていて、将来を有望視されて、たくさんの人に褒められても…
俺は『大切な女性(ヒト)一人守れなかった情けない男』でしかない。
「………」
家で独り、首から下げた平野の形見をぼんやりと見詰めて撫でる。
「……もう一度、逢いてぇな」
こんな事言ってる俺を見たら、アイツは『しっかりしろ』って、困ったみてぇに笑うんだろうな…。
そう思うと少し笑えて、飯でも食うかとベッドから腰を上げた時、気配を感じた。
『――強い後悔の香りがしますねェ…アナタ』
「!?」
咄嗟に距離を取ると、マントとフードで顔と全身を覆った男か女か分からねぇ奴が、
ベランダの窓越しに俺を見ていた。
『ヒーロー・ショート…いえ今は、轟焦凍と呼びましょうか』
「敵か…」
自宅までつけられていたなら気配で分かったはず…いつからそこにいた?
そう考えていると、奴は楽しそうに笑った。
『ワタシがここに現れたのが不思議ですか?
ワタシはアナタの心に強く残る後悔に引き寄せられて来たんですよ』
「俺の、後悔…」
『そう、アナタは大切な人への気持ちに気付くのが遅れた。
そしてその大切な人を守れず、死なせてしまった。
そんなに強い個性と実力があるにも関わらず…』
「!!」
『その人はいつもアナタの超えるべき目標として、前に立ち続けてくれた。
時に励まし、時に競い、時にアナタを救ってくれた。
強力なライバルであり、アナタの人生を変えてくれた恩人でもある』
「……何だ、お前」
まるで今までの俺たちを見て来たような言い方に驚いていると、ソイツはありえねぇ事を言った。
『逢いたいですか? 彼女に…』
「な…」
『もう一度、逢いたいですか?』
ニヤケた顔で聞いて来るソイツに苛立って、個性の氷が腕を覆い始める。冷気も上がって部屋が凍り出した。
「…ふざけんな、そんなこと出来たら悩んでねぇんだよッ くだらねぇ事言ってねぇで…」
『ふざけてませんよ』
「!」
急に真面目な声に変わった奴に、氷が止まる。
『ふさけていません。本気です。本当にやり直したいなら、ワタシの個性でお手伝いしましょう。
…といっても未来が変わる確証もありませんが』
「……本当に、やり直せるのか?」
『ええ、まあ頑張ってもらうのは【過去のアナタ】ですが』
「どういう意味だ?」
『私の個性はかなり変わっていましてね…【過去の自分に対して一時的に感情をリンクさせる】という物で、
つまり過去のアナタへ今のアナタの感情をリンクさせると言う事になります』
「俺の…感情を…過去へ…」
いつの間にか、ソイツの言葉を真に受けていた。それほど俺は思い詰めていた。
もしも、もう一度『あの頃に戻れるなら…』そう思うと、縋りたいとさえ思っちまった…。
グッっと胸元のネックレスを握ると、俺の想いを汲み取ったらしい奴の手が光る。
『では、よろしいですね…?』
――パアアァァァ…!
「!」
白い光に包まれて、俺は思わず目を閉じた。
吸い取られるように意識が遠くなっていく…朦朧とした意識で、
真っ白な世界で、アイツの背中が見えた。
いつも追い掛けた小さな背中…。見えているのにいつも届かなかった背中…。
手を伸ばすとアイツは振り返って笑った。見慣れた自信に満ちた凛々しい笑顔で、こっちに手を伸ばして来る。
「ひらの…おれ、」
『―――――。』
意識が途切れる瞬間、平野がなんて言ったのかは分からねぇ…
俺の名を呼んだような…何か別の言葉だったような…。
俺の手は届いたのか?
なあ平野…もう一度逢えたら、俺はお前に…―――――。