【長編化 候補作品】中編 ヒロアカ 轟焦凍夢
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緑谷SIDE
平野さんの棺は火葬場へ送られて、煙突から煙が上がっているのを見ながら、
葬儀場の裏にいる轟くんに声を掛けようと近付く。轟くんはぼんやりと、昇っていく煙を見上げていた。
「………」
「…轟くん」
「…みどりや」
「その…大丈夫?」
「ああ…ただ、実感が無くてよ。本当に平野はもういないって…」
「うん、僕もだよ。嘘みたいだよね…でも、嘘じゃ、ないんだよね…」
「ああ…」
散々泣き腫らしたのに、枯れる事を知らないのか、僕の目から涙が溢れる。
僕は袖で涙を拭うと轟くんは独り言のように呟いた。
「……俺は、やっぱり馬鹿だ」
「え?」
「ずっとアイツに追い付きてぇって思ってた。アイツより強くなって、
いつか涼しい顔して横に並んでやるんだって、いつか負かしてやるんだって。
そう、思ってた」
「うん」
「それはずっと、アイツの事を『ライバル』だとか『友達』だからだとか思ってた。
けど、違ったんだ」
「え」
俯き気味だった轟くんがゆっくりとこっちに視線を向けると、轟くんは泣いていた。
綺麗な顔を僅かに歪ませて、苦しそうに口を開く。
「おれ…アイツが、―――平野が好きなんだ…っ」
「―――ッ!!」
気付いていた。クラスメイトの誰もが…僕や、あのかっちゃんまでもが。
だけど轟くんも、平野さんも、そういう事に疎いというか、興味が無いのかと思っていた。
純粋にライバルとして、互いを見ているのかと思っていた。
だけどそれは、轟くんは違ったようだ…。やっぱり…と思った反面、ショックだった。
だって、想いに気付いても、平野さんはもういないんだから…。
何で、もっと早くに気付けなかったの…? そう口から出そうになる言葉を飲み込んでいると、
轟くんも同じ事を思っていたんだろう。自嘲した顔で俯くと、静かに涙が落ちて行く。
「な? 馬鹿だろ? 今更気付いたってもう…遅ぇのに。
いつからか、アイツを見ると身体が熱くなるのも、
アイツの事を目で追っちまうのも、
アイツの言動がいちいち気になるのも、全部ライバルだから…負けたくねぇからだって、
本気で思ってたんだ…」
「ッ…とど、ろ…く…」
僕は、平野さんに強い憧れと尊敬を抱いていた。
きっと他のクラスメイト達もそうだろう…。
だけど、轟くんはその尊敬と混ざって、平野さんに対して恋愛的な想いがあったんだ…。
彼がその想いに気付くのが、もう少し早かったら…その想いを、平野さんに伝えていたなら…
「…献花の時、何か言わねぇとって思ったんだけど、頭真っ白になって何も言えなかった。
頭にこびりついて離れねぇんだ。あの光景が…
水晶に身体を貫かれてる平野の姿が。ずっと離れねぇんだ。
あの時は混乱とショックで分からなかったけど、棺に入ってる平野を見て
気付いたんだ…自分が、アイツの事…女として、惚れてたんだって…」
轟くんが懐のポケットから出したある物がキラリと光った。
「それ…」
「ああ、平野のだ…」
深い真紅の楕円形のシンプルな石が付いたシルバーチェーンのネックレス。
平野さんがいつも身に着けていた物だ。
「……あの時に、敵の攻撃を受けて千切れたんだろうな。
たまたま見付けて拾って、棺に入れてやろうと思ったんだけど…
そのまま持って来ちまった」
「…持っててあげたら? 轟くんになら、平野さんも嬉しいと思うよ…」
「そうか…じゃあ、そうする」
愛おしそうに、切なそうにネックレスを見る轟くんを見ていると、胸が痛んだ…。
雄英高校を卒業した僕たちはそれぞれプロとしての道を歩み出した。
強い個性と整ったルックスで人気を獲得している轟くん。
平野さんが亡くなって、轟くんは一層ヒーロー活動に力を入れていた。
一見すると何も変わっていないように見えるけど、僕らには分かる。
轟くんはあの日以来、何かを振り払うように敵と戦っている。
纏う空気も雰囲気も、悲し気な影がある。それでもヒーローとして人々を救う姿は立派でもあり、
見ていて少し痛々しかった。
プロになれば、私情は関係ない。仕事は待ってはくれない。だからいつも通りに活動する。当たり前の事だ。
だから轟くんも僕らもヒーローとして、一人でも多くの人を救う。
そしてもう一つ変わった事は、轟くんがプライベートでも仕事でも、あのネックレスを着ける様になった事。
形見として、お守りとして着けているって言っていた。
「コレがあると、アイツが近くにいる気がして…
アイツの分まで、しっかりヒーローとしてやっていかねぇとって思えるんだ」
って、瞳を細めて石を撫でる轟くんに、どうしようもなく悲しくて、切なくなった。
ふとした時に平野さんを思い出す。綺麗な黒髪をなびかせて、真っ直ぐ伸びた勇ましい背中が忘れられない。
ああ、どうしてここに、彼女はいないんだろう…
時間を戻せるなら、こんな悲しい未来にならないように出来るのかな…?
平野さんの棺は火葬場へ送られて、煙突から煙が上がっているのを見ながら、
葬儀場の裏にいる轟くんに声を掛けようと近付く。轟くんはぼんやりと、昇っていく煙を見上げていた。
「………」
「…轟くん」
「…みどりや」
「その…大丈夫?」
「ああ…ただ、実感が無くてよ。本当に平野はもういないって…」
「うん、僕もだよ。嘘みたいだよね…でも、嘘じゃ、ないんだよね…」
「ああ…」
散々泣き腫らしたのに、枯れる事を知らないのか、僕の目から涙が溢れる。
僕は袖で涙を拭うと轟くんは独り言のように呟いた。
「……俺は、やっぱり馬鹿だ」
「え?」
「ずっとアイツに追い付きてぇって思ってた。アイツより強くなって、
いつか涼しい顔して横に並んでやるんだって、いつか負かしてやるんだって。
そう、思ってた」
「うん」
「それはずっと、アイツの事を『ライバル』だとか『友達』だからだとか思ってた。
けど、違ったんだ」
「え」
俯き気味だった轟くんがゆっくりとこっちに視線を向けると、轟くんは泣いていた。
綺麗な顔を僅かに歪ませて、苦しそうに口を開く。
「おれ…アイツが、―――平野が好きなんだ…っ」
「―――ッ!!」
気付いていた。クラスメイトの誰もが…僕や、あのかっちゃんまでもが。
だけど轟くんも、平野さんも、そういう事に疎いというか、興味が無いのかと思っていた。
純粋にライバルとして、互いを見ているのかと思っていた。
だけどそれは、轟くんは違ったようだ…。やっぱり…と思った反面、ショックだった。
だって、想いに気付いても、平野さんはもういないんだから…。
何で、もっと早くに気付けなかったの…? そう口から出そうになる言葉を飲み込んでいると、
轟くんも同じ事を思っていたんだろう。自嘲した顔で俯くと、静かに涙が落ちて行く。
「な? 馬鹿だろ? 今更気付いたってもう…遅ぇのに。
いつからか、アイツを見ると身体が熱くなるのも、
アイツの事を目で追っちまうのも、
アイツの言動がいちいち気になるのも、全部ライバルだから…負けたくねぇからだって、
本気で思ってたんだ…」
「ッ…とど、ろ…く…」
僕は、平野さんに強い憧れと尊敬を抱いていた。
きっと他のクラスメイト達もそうだろう…。
だけど、轟くんはその尊敬と混ざって、平野さんに対して恋愛的な想いがあったんだ…。
彼がその想いに気付くのが、もう少し早かったら…その想いを、平野さんに伝えていたなら…
「…献花の時、何か言わねぇとって思ったんだけど、頭真っ白になって何も言えなかった。
頭にこびりついて離れねぇんだ。あの光景が…
水晶に身体を貫かれてる平野の姿が。ずっと離れねぇんだ。
あの時は混乱とショックで分からなかったけど、棺に入ってる平野を見て
気付いたんだ…自分が、アイツの事…女として、惚れてたんだって…」
轟くんが懐のポケットから出したある物がキラリと光った。
「それ…」
「ああ、平野のだ…」
深い真紅の楕円形のシンプルな石が付いたシルバーチェーンのネックレス。
平野さんがいつも身に着けていた物だ。
「……あの時に、敵の攻撃を受けて千切れたんだろうな。
たまたま見付けて拾って、棺に入れてやろうと思ったんだけど…
そのまま持って来ちまった」
「…持っててあげたら? 轟くんになら、平野さんも嬉しいと思うよ…」
「そうか…じゃあ、そうする」
愛おしそうに、切なそうにネックレスを見る轟くんを見ていると、胸が痛んだ…。
雄英高校を卒業した僕たちはそれぞれプロとしての道を歩み出した。
強い個性と整ったルックスで人気を獲得している轟くん。
平野さんが亡くなって、轟くんは一層ヒーロー活動に力を入れていた。
一見すると何も変わっていないように見えるけど、僕らには分かる。
轟くんはあの日以来、何かを振り払うように敵と戦っている。
纏う空気も雰囲気も、悲し気な影がある。それでもヒーローとして人々を救う姿は立派でもあり、
見ていて少し痛々しかった。
プロになれば、私情は関係ない。仕事は待ってはくれない。だからいつも通りに活動する。当たり前の事だ。
だから轟くんも僕らもヒーローとして、一人でも多くの人を救う。
そしてもう一つ変わった事は、轟くんがプライベートでも仕事でも、あのネックレスを着ける様になった事。
形見として、お守りとして着けているって言っていた。
「コレがあると、アイツが近くにいる気がして…
アイツの分まで、しっかりヒーローとしてやっていかねぇとって思えるんだ」
って、瞳を細めて石を撫でる轟くんに、どうしようもなく悲しくて、切なくなった。
ふとした時に平野さんを思い出す。綺麗な黒髪をなびかせて、真っ直ぐ伸びた勇ましい背中が忘れられない。
ああ、どうしてここに、彼女はいないんだろう…
時間を戻せるなら、こんな悲しい未来にならないように出来るのかな…?