【長編化 候補作品】中編 ヒロアカ 轟焦凍夢
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轟SIDE
アイツは、『女』で『個性が無い』のに、誰よりも賢く、速く、強く、勇敢で…
困っている人を見付けたら真っ先に助けに行くような奴で。普段は大人しい癖に、戦闘になると漢らしくて…
俺たちが心が折れそうになった時、歯が立たない敵を前に足がすくんだ時も、アイツが真っ先に奮い立った。
咆哮のように声を上げて向かって行く背中に。個性が無くても諦めない姿に。俺たちは何度も救われた。
俺たちが行動を起こそうとした時には、いつもアイツは既に動き出していて、
気付いた時にはもう…ずっと先にいる。
引き留めようと伸ばした手も声も、届かないぐらい遠くにいる。
雄英高校卒業を控えて、プロヒーローのサイドキックとしても優秀で、
『世界初の無個性ヒーローの卵』として世間の注目を集めていた。
テレビや雑誌でも特集が組まれたり、ファンも多い。
そんな時、敵の襲来の知らせを受けて、それぞれが現場に向かう。
俺が到着すると、既にアイツ…平野も現場にいた。
敵との交戦中、大半を捕縛して、取り残された一般人と怪我人を避難誘導していた俺たちが動くより先に、
敵の増援に気付いた平野がワイヤーで敵の所に飛び立った。
『―――待てっ平野!!』
嫌な、予感がした…。だから咄嗟に手を伸ばした…。
だけど、届かなかった。出会ってから何度もこういう危険な場面はあった。
平野に手を伸ばした事も何度もあった。何度も、俺の手は…アイツに届かなくて…。
掠める事すら出来ない自分に腹が立って、今まで鍛えて、個性も磨いて、経験も積んで来た。
プロになる手前で、学生生活も残りわずかの時期で、少しは強くなったと思っていた。
すぐに平野の援護に向かいたかったが、現場にいたプロとサイドキックは残党の始末と、
避難誘導で手一杯だった。
何度も聞こえる地響きと武器がぶつかり合う音に焦る中、サイドキックの応援が到着して、
俺と緑谷、飯田、爆豪で平野の下へ急いだ。
――ドオォォォンッ!!
『『『『!!』』』』
一際デカイ地響きと土煙が上がって、それを掻き分けて進むと辺りの建物や地面から、
敵の個性と思われる黒い水晶みたいな物が生えて、突き刺さっていた。不気味なぐらい静まり返る中、
敵は全て倒されていたけど平野の姿が無い。手分けして探していると、上から俺の頬に何かが落ちて来た。
――ポタッ パタタ…ッ
『っ何だ?……!?』
手で拭うと、ソレは赤黒い液体…血だった。
咄嗟に上に視線を向けると俺は言葉を失うと同時に、血の気が引いた…。
『――ひら、の…?』
頭上高くまで伸びた黒い水晶。
その先端に体を貫かれて微動だにしない平野。
溢れる血液が体を伝って爪先に流れ、それが地面に血だまりを作っていた。
『ッ平野!!!』
我に返って叫ぶ俺の声に気付いて、緑谷たちも駆け付けて来た。水晶を折って平野を地面に下すと、
血の気が失せた色の顔をした平野を呆然と見詰める俺たち。
『ひらの…さん』
『…、っすぐに救急隊を呼んで来る!!』
そう言って走り出した飯田を見送ると、弾かれたように爆豪が平野の襟元を掴んで揺さぶった。
『――ッおいゴラァ! モブ女ァ!! 何ガラじゃねぇ事してんだ!? 起きろや!!』
『………』
『クソモブ女ァッ!! テメェがこんなトコでくたばるタマかよ!?
いつもみてぇにクソ生意気に笑ってみろや!!!
テメェここで終わる気か!?~~~~起きろってんだよッまだ…
っまだこれからだろうが!!!!!』
『―――かっちゃんッ!! もうやめてよ!!!!』
『ッ……!!』
こんなに取り乱した爆豪は初めて見た。乱暴に揺さぶる手付きとは反対に、爆豪の目は縋るように揺れていた。
背後から制止を掛けて取り押さえる緑谷も、たくさんの涙を溢れさせて、肩と声を震わせて、
自分に言い聞かせるように言った。
『……ひ、平野さんはっもう…死んでるんだ。もう、起きないんだよッ!!』
『ッ!!!』
『…ッ』
緑谷の悲痛な叫びに似た言葉に、現実が痛いぐらいに突き刺さった。救えなかった…間に合わなかった…。
【平野は死んだ】
放心した爆豪の手がゆっくりと離れて、平野の体はゆっくり地面に横たわる。
胴体にデカイ穴を開けて、それでも手に握られた木刀は、強く握られたままだった。
死んでも、離さないなんて…最期の瞬間まで、諦めずに戦っていた証拠だ。
『…流石だな、平野。けど…もう良いんだ…。もう、ゆっくり休め…』
虚ろに開いていた瞼の上に手を乗せて、そっと閉じ、木刀を引き抜くとあっさりと離れた…。
『…っう、ぐ…うぅ…ッ』
『…クソがッ勝ち逃げしやがって…』
『………』
在学中、平野に強い憧れを抱いて、ライバルで友人でありながら熱烈なファンでもあった緑谷。
演習でも実践でも、平野に負かされ続けて、強いライバル心を燃やして来た爆豪。
俺も、何度も平野に負けて、何度も励まされて背中を押されて…いつか追い付きたくて、
この背中に…平野の隣に立てるようになりたかった。
動かなくなった平野を囲うように立つ俺たちの頬には、たくさんの涙が伝っていた…。
アイツは、『女』で『個性が無い』のに、誰よりも賢く、速く、強く、勇敢で…
困っている人を見付けたら真っ先に助けに行くような奴で。普段は大人しい癖に、戦闘になると漢らしくて…
俺たちが心が折れそうになった時、歯が立たない敵を前に足がすくんだ時も、アイツが真っ先に奮い立った。
咆哮のように声を上げて向かって行く背中に。個性が無くても諦めない姿に。俺たちは何度も救われた。
俺たちが行動を起こそうとした時には、いつもアイツは既に動き出していて、
気付いた時にはもう…ずっと先にいる。
引き留めようと伸ばした手も声も、届かないぐらい遠くにいる。
雄英高校卒業を控えて、プロヒーローのサイドキックとしても優秀で、
『世界初の無個性ヒーローの卵』として世間の注目を集めていた。
テレビや雑誌でも特集が組まれたり、ファンも多い。
そんな時、敵の襲来の知らせを受けて、それぞれが現場に向かう。
俺が到着すると、既にアイツ…平野も現場にいた。
敵との交戦中、大半を捕縛して、取り残された一般人と怪我人を避難誘導していた俺たちが動くより先に、
敵の増援に気付いた平野がワイヤーで敵の所に飛び立った。
『―――待てっ平野!!』
嫌な、予感がした…。だから咄嗟に手を伸ばした…。
だけど、届かなかった。出会ってから何度もこういう危険な場面はあった。
平野に手を伸ばした事も何度もあった。何度も、俺の手は…アイツに届かなくて…。
掠める事すら出来ない自分に腹が立って、今まで鍛えて、個性も磨いて、経験も積んで来た。
プロになる手前で、学生生活も残りわずかの時期で、少しは強くなったと思っていた。
すぐに平野の援護に向かいたかったが、現場にいたプロとサイドキックは残党の始末と、
避難誘導で手一杯だった。
何度も聞こえる地響きと武器がぶつかり合う音に焦る中、サイドキックの応援が到着して、
俺と緑谷、飯田、爆豪で平野の下へ急いだ。
――ドオォォォンッ!!
『『『『!!』』』』
一際デカイ地響きと土煙が上がって、それを掻き分けて進むと辺りの建物や地面から、
敵の個性と思われる黒い水晶みたいな物が生えて、突き刺さっていた。不気味なぐらい静まり返る中、
敵は全て倒されていたけど平野の姿が無い。手分けして探していると、上から俺の頬に何かが落ちて来た。
――ポタッ パタタ…ッ
『っ何だ?……!?』
手で拭うと、ソレは赤黒い液体…血だった。
咄嗟に上に視線を向けると俺は言葉を失うと同時に、血の気が引いた…。
『――ひら、の…?』
頭上高くまで伸びた黒い水晶。
その先端に体を貫かれて微動だにしない平野。
溢れる血液が体を伝って爪先に流れ、それが地面に血だまりを作っていた。
『ッ平野!!!』
我に返って叫ぶ俺の声に気付いて、緑谷たちも駆け付けて来た。水晶を折って平野を地面に下すと、
血の気が失せた色の顔をした平野を呆然と見詰める俺たち。
『ひらの…さん』
『…、っすぐに救急隊を呼んで来る!!』
そう言って走り出した飯田を見送ると、弾かれたように爆豪が平野の襟元を掴んで揺さぶった。
『――ッおいゴラァ! モブ女ァ!! 何ガラじゃねぇ事してんだ!? 起きろや!!』
『………』
『クソモブ女ァッ!! テメェがこんなトコでくたばるタマかよ!?
いつもみてぇにクソ生意気に笑ってみろや!!!
テメェここで終わる気か!?~~~~起きろってんだよッまだ…
っまだこれからだろうが!!!!!』
『―――かっちゃんッ!! もうやめてよ!!!!』
『ッ……!!』
こんなに取り乱した爆豪は初めて見た。乱暴に揺さぶる手付きとは反対に、爆豪の目は縋るように揺れていた。
背後から制止を掛けて取り押さえる緑谷も、たくさんの涙を溢れさせて、肩と声を震わせて、
自分に言い聞かせるように言った。
『……ひ、平野さんはっもう…死んでるんだ。もう、起きないんだよッ!!』
『ッ!!!』
『…ッ』
緑谷の悲痛な叫びに似た言葉に、現実が痛いぐらいに突き刺さった。救えなかった…間に合わなかった…。
【平野は死んだ】
放心した爆豪の手がゆっくりと離れて、平野の体はゆっくり地面に横たわる。
胴体にデカイ穴を開けて、それでも手に握られた木刀は、強く握られたままだった。
死んでも、離さないなんて…最期の瞬間まで、諦めずに戦っていた証拠だ。
『…流石だな、平野。けど…もう良いんだ…。もう、ゆっくり休め…』
虚ろに開いていた瞼の上に手を乗せて、そっと閉じ、木刀を引き抜くとあっさりと離れた…。
『…っう、ぐ…うぅ…ッ』
『…クソがッ勝ち逃げしやがって…』
『………』
在学中、平野に強い憧れを抱いて、ライバルで友人でありながら熱烈なファンでもあった緑谷。
演習でも実践でも、平野に負かされ続けて、強いライバル心を燃やして来た爆豪。
俺も、何度も平野に負けて、何度も励まされて背中を押されて…いつか追い付きたくて、
この背中に…平野の隣に立てるようになりたかった。
動かなくなった平野を囲うように立つ俺たちの頬には、たくさんの涙が伝っていた…。