モノクロな日常からヘンテコな世界へ
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病院を出て車の中で。
「なんというか、淡々としてたな」
「おう、実感が無いってものあるんだろうけどな…」
病院内では吸えなかったタバコに火をつけて、それぞれ煙を吐き出す。
開けた窓から出て行く煙を見ながら、理鶯は口を開く。
「自身の過去も、家族や友人の事も忘れてしまって…心細いだろうに。そんな状況でも気丈なものだ…」
「状況に頭が着いて来ていないと言うのもあるだろうが、それにしても他人事のようだったな」
「記憶が無ぇんだ…ある意味他人事だろうよ」
左馬刻が吐き出した紫煙が、夜空に飛散して消えて行く…。
三人の脳裏に尚の姿が浮かぶ。全てを失っても彼女の瞳は虚ろで光が無かった。
表情も乏しく、先の不安よりも諦めの方が強そうな印象を受けた。
彼女が受けたであろう心の傷がそれほどまでに深いと言っている様で、
左馬刻は『胸糞悪ぃ…』と呟いてタバコを消し潰す。
一本を吸い切った銃兎が車を発進させながら、ある可能性を口にする。
「彼女の記憶喪失の原因は、強い精神的なストレスって話だが…
もしかしたらヒプノシスマイクの影響も考えられる」
「違法マイクによる襲撃の被害者の可能性…という事か」
「その線もあるな」
「一応、捜索願いの他に被害届も確認してみるが…彼女の記憶を戻す方法は、今の所は見当が付かねぇが…」
「その辺りなら、先生に聞いてやるよ」
「シンジュクの神宮寺寂雷か?」
「おう」
天才医師と名高く、回復系のラップを扱う神宮寺寂雷とは旧知の仲である左馬刻に
治療の依頼の相談を任せる事になり、銃兎は警察署での行方不明者の捜索願いなどが無いかの調査、確認、
尚のお見舞いは基本的に理鶯。と言う事で話がまとまった。
――病室
「………」
医師から『ヒプノシスマイクによる精神干渉が記憶障害を起こした可能性もある』と説明され、
ヒプノシスマイクという物の存在を知った。
そのマイクを介して発せられた言葉は、人の交感神経・副交感神経に様々な作用を起こすという…。
「………」
静まり返る病室のベッドの中で、もう何時間もただ天井を見詰めながら、
霞掛かった記憶を思い出そうとしてみても何も浮かんで来ない。
何処に住んでいたか、家族は? 友人は? 学校は何処だった? 職場の所在、仕事内容は?
記憶を探ろうとしても、頭の奥が痛むだけだった…。
カーテンの隙間から見える光が僅かに灯る街は見覚えが無く、微塵も懐かしさを感じない。
しかし、さほど不安も恐怖も感じない自分に戸惑う事も無く。
どんよりとした重さを孕んだ感情が広がる中、眠気が訪れる事は無かった。
彼女も彼らも、誰も知らない。
そこが自分が生まれた場所ではないどころか、世界そのものが別物である事を。
思わぬ形で世界を渡った事実を知らぬまま、新たな世界での生活が幕を開けた…。
「なんというか、淡々としてたな」
「おう、実感が無いってものあるんだろうけどな…」
病院内では吸えなかったタバコに火をつけて、それぞれ煙を吐き出す。
開けた窓から出て行く煙を見ながら、理鶯は口を開く。
「自身の過去も、家族や友人の事も忘れてしまって…心細いだろうに。そんな状況でも気丈なものだ…」
「状況に頭が着いて来ていないと言うのもあるだろうが、それにしても他人事のようだったな」
「記憶が無ぇんだ…ある意味他人事だろうよ」
左馬刻が吐き出した紫煙が、夜空に飛散して消えて行く…。
三人の脳裏に尚の姿が浮かぶ。全てを失っても彼女の瞳は虚ろで光が無かった。
表情も乏しく、先の不安よりも諦めの方が強そうな印象を受けた。
彼女が受けたであろう心の傷がそれほどまでに深いと言っている様で、
左馬刻は『胸糞悪ぃ…』と呟いてタバコを消し潰す。
一本を吸い切った銃兎が車を発進させながら、ある可能性を口にする。
「彼女の記憶喪失の原因は、強い精神的なストレスって話だが…
もしかしたらヒプノシスマイクの影響も考えられる」
「違法マイクによる襲撃の被害者の可能性…という事か」
「その線もあるな」
「一応、捜索願いの他に被害届も確認してみるが…彼女の記憶を戻す方法は、今の所は見当が付かねぇが…」
「その辺りなら、先生に聞いてやるよ」
「シンジュクの神宮寺寂雷か?」
「おう」
天才医師と名高く、回復系のラップを扱う神宮寺寂雷とは旧知の仲である左馬刻に
治療の依頼の相談を任せる事になり、銃兎は警察署での行方不明者の捜索願いなどが無いかの調査、確認、
尚のお見舞いは基本的に理鶯。と言う事で話がまとまった。
――病室
「………」
医師から『ヒプノシスマイクによる精神干渉が記憶障害を起こした可能性もある』と説明され、
ヒプノシスマイクという物の存在を知った。
そのマイクを介して発せられた言葉は、人の交感神経・副交感神経に様々な作用を起こすという…。
「………」
静まり返る病室のベッドの中で、もう何時間もただ天井を見詰めながら、
霞掛かった記憶を思い出そうとしてみても何も浮かんで来ない。
何処に住んでいたか、家族は? 友人は? 学校は何処だった? 職場の所在、仕事内容は?
記憶を探ろうとしても、頭の奥が痛むだけだった…。
カーテンの隙間から見える光が僅かに灯る街は見覚えが無く、微塵も懐かしさを感じない。
しかし、さほど不安も恐怖も感じない自分に戸惑う事も無く。
どんよりとした重さを孕んだ感情が広がる中、眠気が訪れる事は無かった。
彼女も彼らも、誰も知らない。
そこが自分が生まれた場所ではないどころか、世界そのものが別物である事を。
思わぬ形で世界を渡った事実を知らぬまま、新たな世界での生活が幕を開けた…。