モノクロな日常からヘンテコな世界へ
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…思えば私の人生とは何だったのか。
子供の頃からオヤというモノの存在はおぼろげで、ハハオヤらしき女は家に毎回違う男を連れ込んで、
たまに顔を出すチチオヤらしき男は毎回私に暴力を振るい、
ハハオヤも一緒になって暴言と暴力を繰り返した。
ほとんど行っていなかった学校でも、暴力と暴言の的にされ続けた。
流れで学生時代がいつの間にか終わっていて、社会人になって家を出たは良いけど、
職場でも特に目立つ事も無く、ただただ真面目に仕事をしていた。
それでも理不尽な嫌がらせの的にされ、それでも我慢していたが…。
『なんでアンタなんかが評価されるのよ!?』
『私の方が可愛いし、仕事だって出来るのに!!』
『アンタ、上司に色目でも使ったんでしょう!?』
「………」
(まただよ…)
正直、慣れてはいてもげんなりする。
周りでキーキーとうるさい女性社員を冷めた目で見つつ、口ではそれっぽいフォローを入れておく。
まあ、意味は無いが。
嫌がらせをしても特に気にしていない様子の私の態度が気に入らないのか、嫌がらせはエスカレート。
上司が見ていない所で、蹴ったり、物で殴ったりは日常茶飯事になった。
そもそも仕事の成績は、真面目で効率的な方が評価されるのは当たり前。
容姿の良し悪しは完全に見る側の好み。
上司に色目を使ったかどうかに関しては…そんな時間の無駄な事をするはずは無いし、
こんなのに色仕掛けされても引っ掛かる輩はいないだろう。
仕事しに行っているんだか、殴られに行ってるんだかもう分からなくなっていた頃、
それは起きた。
「……って話聞いてんの!? なんとか言いなさいよ!!」
「知りません」
「はあ!? なにそれアンタふざけてんの!?」
なんでこうなったのか…残業が終わってもう終電も無い。
重い身体を引きずって会社を出ると、後ろから以前にネチネチと言って来た同僚女性が二人、
走って追い付いて来て、私を両サイドから挟む様にして歩いて来る。
…うっとおしい。
「だからさぁ鈴木部長に、ちょっと言ってもらえれば良いのよ。アンタ部長に気に入られてるんでしょ?」
「特にそういう事はありません。進言したいならご自分で直接お願いします」
「アンタ、ホントに生意気ね」
「そうよ!こっちがこんだけ頭下げて頼んでやってるのにさぁ」
…一度も頭を下げてないし、頼んでくれなんて頼んでもいないのに何を言っているのか。
連日の嫌がらせや仕事のストレスで、私の言動はどんどん感情の無い機械的なモノになり、
それがこの二人の癪に障ったらしい。
「~~~~マジでムカつくッ!!このクソ女!!」
――ドンッ! ズルッ!!
左側にいた女性は大柄で、疲労困憊な体と精神ではその体重を支えられるはずもなく、
私の体はそのまま横に傾いて行き、右側にいた女性は避けたが、ここで問題。
問題その1 私の住んでいるのは港町で、至る所に深い水路などがある。
問題その2 その日帰り道に歩いていたのは水路のすぐ側。
問題その3 私の心身はどちらも極限状態。
この条件で、導き出される答えは…?
答え 女性の体重に耐えたれず、そのまま水路に落ちる。
――バッシャアアアン!!
「は!? え、ちょ…」
「ちょっとどうすんのよ!? ………え、上がって来ないんだけど!?」
「え、え…!? し、知らない! 私何もしてないから!!」
「ちょっと待ってよ!置いて行かないでよ!!」
――ゴポ…ゴポポ…!
「………」
(…つめたい)
酸素の泡が水面に向かって上がっていくのをぼんやりと見ながら、
どんどん冷えて行く体と、どんどん苦しくなる呼吸さえもどこか他人事のようだ。
肩に掛けていた鞄から、ポーチや定期入れ、財布、手帳、
作り掛けの仕事の資料などがこぼれ落ちていく。
(あーあ…資料、作りかけだったのに…)
酸素不足でぼんやりとした頭でも仕事の事が過る自分に嫌気がさす。
ゆらゆらと沈んでいくのを感じながら、唐突にドッと何かが心に押し寄せて来た。
それは疲労なのか、絶望なのかは分からないが…。
(ああ…なんかもういいか……うん、もう、いいや…)
鞄の紐を持っていた手を放すと、鞄がそのまま水底へ吸い込まれていく。
そのまま体の力も抜いてしまうと、一気に沈むスピードが増した気がした。
「ごぼぼ…っ!」
肺に残っていた僅かな酸素を吐き出すと、グン…と体が重くなる。
酸素の代わりに大量に入って来る海水。
視界が暗くなって来る。
「―――……」
(このまま死んでしまえたら、もう職場に行かなくても良いし、何もしなくていい…
面倒な人の相手もしなくていい、将来の不安も無くなるし…私なんて、いてもいなくても、
別にどっちでもいいだろうし…このまま消えてしまおう…それがいい…)
キット ソレガ イイ…
いつの間にか流されていたらしく、水面から月の光が降り注いでくる。
意識が途切れる直前に見たのは、白んだ月の光だった。
意識がなくなって海中を漂う尚の体が月の光に包まれた瞬間、
体がみるみる泡に変わって、そのまま跡形もなく消えて行った。
子供の頃からオヤというモノの存在はおぼろげで、ハハオヤらしき女は家に毎回違う男を連れ込んで、
たまに顔を出すチチオヤらしき男は毎回私に暴力を振るい、
ハハオヤも一緒になって暴言と暴力を繰り返した。
ほとんど行っていなかった学校でも、暴力と暴言の的にされ続けた。
流れで学生時代がいつの間にか終わっていて、社会人になって家を出たは良いけど、
職場でも特に目立つ事も無く、ただただ真面目に仕事をしていた。
それでも理不尽な嫌がらせの的にされ、それでも我慢していたが…。
『なんでアンタなんかが評価されるのよ!?』
『私の方が可愛いし、仕事だって出来るのに!!』
『アンタ、上司に色目でも使ったんでしょう!?』
「………」
(まただよ…)
正直、慣れてはいてもげんなりする。
周りでキーキーとうるさい女性社員を冷めた目で見つつ、口ではそれっぽいフォローを入れておく。
まあ、意味は無いが。
嫌がらせをしても特に気にしていない様子の私の態度が気に入らないのか、嫌がらせはエスカレート。
上司が見ていない所で、蹴ったり、物で殴ったりは日常茶飯事になった。
そもそも仕事の成績は、真面目で効率的な方が評価されるのは当たり前。
容姿の良し悪しは完全に見る側の好み。
上司に色目を使ったかどうかに関しては…そんな時間の無駄な事をするはずは無いし、
こんなのに色仕掛けされても引っ掛かる輩はいないだろう。
仕事しに行っているんだか、殴られに行ってるんだかもう分からなくなっていた頃、
それは起きた。
「……って話聞いてんの!? なんとか言いなさいよ!!」
「知りません」
「はあ!? なにそれアンタふざけてんの!?」
なんでこうなったのか…残業が終わってもう終電も無い。
重い身体を引きずって会社を出ると、後ろから以前にネチネチと言って来た同僚女性が二人、
走って追い付いて来て、私を両サイドから挟む様にして歩いて来る。
…うっとおしい。
「だからさぁ鈴木部長に、ちょっと言ってもらえれば良いのよ。アンタ部長に気に入られてるんでしょ?」
「特にそういう事はありません。進言したいならご自分で直接お願いします」
「アンタ、ホントに生意気ね」
「そうよ!こっちがこんだけ頭下げて頼んでやってるのにさぁ」
…一度も頭を下げてないし、頼んでくれなんて頼んでもいないのに何を言っているのか。
連日の嫌がらせや仕事のストレスで、私の言動はどんどん感情の無い機械的なモノになり、
それがこの二人の癪に障ったらしい。
「~~~~マジでムカつくッ!!このクソ女!!」
――ドンッ! ズルッ!!
左側にいた女性は大柄で、疲労困憊な体と精神ではその体重を支えられるはずもなく、
私の体はそのまま横に傾いて行き、右側にいた女性は避けたが、ここで問題。
問題その1 私の住んでいるのは港町で、至る所に深い水路などがある。
問題その2 その日帰り道に歩いていたのは水路のすぐ側。
問題その3 私の心身はどちらも極限状態。
この条件で、導き出される答えは…?
答え 女性の体重に耐えたれず、そのまま水路に落ちる。
――バッシャアアアン!!
「は!? え、ちょ…」
「ちょっとどうすんのよ!? ………え、上がって来ないんだけど!?」
「え、え…!? し、知らない! 私何もしてないから!!」
「ちょっと待ってよ!置いて行かないでよ!!」
――ゴポ…ゴポポ…!
「………」
(…つめたい)
酸素の泡が水面に向かって上がっていくのをぼんやりと見ながら、
どんどん冷えて行く体と、どんどん苦しくなる呼吸さえもどこか他人事のようだ。
肩に掛けていた鞄から、ポーチや定期入れ、財布、手帳、
作り掛けの仕事の資料などがこぼれ落ちていく。
(あーあ…資料、作りかけだったのに…)
酸素不足でぼんやりとした頭でも仕事の事が過る自分に嫌気がさす。
ゆらゆらと沈んでいくのを感じながら、唐突にドッと何かが心に押し寄せて来た。
それは疲労なのか、絶望なのかは分からないが…。
(ああ…なんかもういいか……うん、もう、いいや…)
鞄の紐を持っていた手を放すと、鞄がそのまま水底へ吸い込まれていく。
そのまま体の力も抜いてしまうと、一気に沈むスピードが増した気がした。
「ごぼぼ…っ!」
肺に残っていた僅かな酸素を吐き出すと、グン…と体が重くなる。
酸素の代わりに大量に入って来る海水。
視界が暗くなって来る。
「―――……」
(このまま死んでしまえたら、もう職場に行かなくても良いし、何もしなくていい…
面倒な人の相手もしなくていい、将来の不安も無くなるし…私なんて、いてもいなくても、
別にどっちでもいいだろうし…このまま消えてしまおう…それがいい…)
キット ソレガ イイ…
いつの間にか流されていたらしく、水面から月の光が降り注いでくる。
意識が途切れる直前に見たのは、白んだ月の光だった。
意識がなくなって海中を漂う尚の体が月の光に包まれた瞬間、
体がみるみる泡に変わって、そのまま跡形もなく消えて行った。