尚の朝は銃兎の昼用の弁当作りから始まる。
警察官である銃兎は外食が出来ないので、昼食は持参か出前か、前もってコンビニで買うかしている。
尚を保護してから、一度弁当を作ってくれた時があって、
量も丁度良くて助かったので尚に弁当を頼む事が増えた。同僚から秘かに

『最近、銃兎さん昼飯時、機嫌と顔色良いな』　
『栄養バランスが良いお弁当作ってくれる人が出来たらしい』　
『銃兎さんについに婚約者か、彼女が…！？』

と噂になっている。

（まあ、彼女でも婚約者でも無く…保護観察の人なんだけどな）

身支度を整えながら、銃兎が苦笑いしながらリビングに行くと、
コーヒーと香ばしい焼いたパンの匂いに頬が緩む。

「おはようございます。尚さん」
「おはようございます。入間さん。今日は少し余裕があるんですね」
「ええ、今日はいつもより遅いんです」
「お弁当、置いときますね」
「ありがとうございます。…ん？」

弁当の包みを見ると、一見するとグレーのシンプルな包みだがよく見ると、
黒いウサギの柄が入っているのに気付いて思わず噴出す。

「ふふっ…ウサギ柄」
「ああソレ、この前理鶯さんに買い物に付き合ってもらった時に見付けて…『銃兎にぴったりだ』って、
毒島さんが言ってたんですよ。つい買っちゃいました」
「ブフッ理鶯…っ」

理鶯がポヤポヤした顔で、尚とコレを選んでいた光景が容易に想像出来て、肩を震わせて笑う銃兎。
そうこうしている内に出勤の時間になって、家を出る。

「いってらっしゃい。気を付けて」
「はい、いってきます」

尚に見送られて車へ向かう銃兎。

「あー…朝から笑ったのはいつぶりだろうな」

エンジンを掛けながら、一人でいた頃よりも穏やかな気持ちで出勤している自分に気付いて、
困った様に笑みを浮かべる。

（絆されてるのか…彼女のいる家は温かい気がする）

今日は早く帰れると良いな…と思いながら、車を走らせる。