――銃兎宅

「ふー…今日はお疲れさまでしたね。尚さん疲れてませんか？」
「いえ大丈夫です。私の物を揃えるために皆さん付き合ってくれたんですし…
今日は色々とありがとうございました。たくさん買ってもらっちゃって…」
「いえいえ、良いんですよ。今日買った物はここに仕舞って下さいね。小物類はこっちを使って下さい」
「ありがとうございます」

買った物を仕舞い、遅めの夕食を取る事にした。
銃兎の仕事が忙しく、一緒に食事する機会があまり無い。簡単な物を作って一緒のテーブルにつく。

「いただきます」
「いただきます」

適当にテレビをつけながら、少し談笑しながら箸を進める。
尚の手料理は、仕事から遅く帰って来ても温めて食べられる様に用意されている。
初めて食べた時から味付けが気に入って、不思議と銃兎の箸も進む。

（すっかり胃袋掴まれてる気がするな…）

食事の時、銃兎は気になる事があった。

（彼女は基本的に素直で、反抗もして来ない。それは有り難いが…少し心配だな。
従順なのは、自分が記憶も無い上に保護扱いだからで、相手が警察官だから疑っていないんだろうが、
もしも初対面の相手に言い様に言いくるめられたら…
悪人相手だったら…下手したら誘拐されて、監禁か軟禁されても可笑しくない。）

素直過ぎるのも問題だと思い、少し警戒心を持つように指導する事にした。

「尚さん、少し…いくつか約束して下さい」
「はい…？」

お茶を飲んでいた尚はグラスを置いて、銃兎に視線を向けると、銃兎はテーブルに腕を突いて指を組む。

「まず、この先『初対面の相手の言葉を鵜呑みにしない事』　
『何かあったら、私か左馬刻、理鶯にまず相談する事』　
『出かける時は必ず何処に行くのか連絡する事』　とりあえずこれぐらいですかね…約束して頂けますか？」
「はい、分かりました」
「左馬刻からスマホもらってますよね？　私達の連絡先を入れておきますね」
「お願いします」

尚のスマホに連絡先を追加して返す。これで一安心と息をついて、思い付いた様に銃兎が一言。

「あと…もう少し食べる量を増やして行きましょうね」
「あ、はい…頑張ります」

にっこり笑顔の銃兎に、少し顔が引き攣る尚。
一緒に食事をする時に気になっていた尚の食の細さも改善していく事になった。