特別編 新時代の風 前篇
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
砂の里の外れを掛ける四つの影。小さなオアシスで、尚が薬草を採っていた。
「尚様、そろそろ里へ戻りましょう」
「はい」
必要な量を採り終え、尚が護衛に付き添う上忍三人とオアシスを出ようと踵を返す。
砂塵が吹き荒れる砂漠は視界が悪い。
たまに大きな砂嵐に遭遇しかねないため、あまり長居は出来ないのだ。
「尚様、お疲れではありませんか?」
「大丈夫です。ありがとう」
隣を掛けるくノ一の気遣いに笑顔を返すと、前にいた上忍の表情が曇り出した。
「ん、何だ?」
「どうした?」
「あれを見ろ」
「?」
前方に動く何かを見付けて、一行の足が止まる。
「何?あれ、動いてる?」
砂塵に阻まれて正体が見えない。四人が目を凝らしていると、その何かが突然巨大化した。
『!?』
――ゴアアアアアッ!!
巨大な竜巻、砂嵐だった。気付いた時には、全員が呑み込まれていた。
「何故、こんな突然にっ」
「ぐっ…くそっ前が見えん!!尚様!尚様を御守りしろ!!」
「尚様!どちらにおいでですか!?尚様ッ!!」
竜巻の中で、互いがどこにいるのかも分からない中で声を掛け合うが、嵐の中では届かない。
そして尚も、一人はぐれ、彷徨っていた。
「くっ…方向が、分からないっ」
マントのフードを深く被り、腕で防ぎながら進むが視界が開ける様子はない。
我愛羅から、砂嵐に遭遇した時の対処法は教わっているが、こうも大規模な砂嵐には対応しきれない。
(無闇に彷徨うのは体力を削る…せめて、風をやり過ごせる場所があれば…!)
頭の中の地形の地図を必死に思い出す。
大体の場所からして、近くに小さな遺跡があったはずだと、そこを目指す。
何とか遺跡まで辿り着き、その場に膝を着く。
「はぁ、はぁっ誰か、誰かいますかっ?」
護衛の三人が先に来ているかも知れないと、声を掛けるが、その声は空しく響くだけだった…。
「私しか、いないみたいね…」
体に付いた砂を払って腰を下ろす。
(あの三人なら大丈夫…私よりこういう環境に慣れているはず、心配するべきは私自身。
いつこの砂嵐が止むのか分からない以上、ここから動けない…)
荒れ狂う砂を見上げながら、尚は呟いた。
「夜までに帰るって、愛花と約束したのにな…」
その小さな呟きも、静かに空気に溶けて行った…
――カタンッ…!
「!」
遺跡の奥から聞こえた物音に、バッと立ち上がってマントの下で、腰に差した短刀の柄を握る。
臨戦態勢で、気配を探る。数秒の静寂が、奥から伸びて来た何かが切り裂かれた。
――ビュオッ!!
「っ!」
ガゴッ!と反射的に抜刀した刃で払う。
(この感覚…傀儡!)
長い尾のような物が、シュルリと奥の闇へ戻るとその闇から人影が現れた。ガタイの良い男だった。
「流石は風影の妻。一筋縄ではいかんか…」
ニイィっと笑う男に、尚の瞳が冷たく冴える。
「何が目的ですか」
構えたまま問うと、男は笑みを深めた。
「そりゃあ…アンタの命、それが無理なら捕えて、アンタの旦那を誘き出すかな?」
(反逆者、もしくは依頼を受けて我愛羅の命を狙う賞金稼ぎ…)
冷静に相手の正体にアタリをつけて、更に問う。
「この砂嵐は、あなたが?」
「ああ、そうさ。しばらくは止まないから、頼みの護衛も来ないぜ?」
得意げな男を前に、尚は怯まない。
(傀儡使いなら、接近戦は苦手…?
でも、接近戦に使える術を有しているかも知れないし、仕掛けてみようか…)
間合いを測っていると、足元の地面が割れた。
――ドオオオンッ!!
「っ!!」
反応が遅れ、地面から飛び出した傀儡の一撃を喰らってしまった。
「あああッ!」
傀儡とは思えない重い攻撃に、尚は壁の岩に体を打ち付けた。
――ドオンッ!!
「かはっ…!」
ドサッと地面に伏した尚の手から、短刀が擦り落ちる。
カラン…と軽い音が響く。
頭上で薄ら笑いを浮かべる男の足元で、尚は薄れる意識の中、愛する子供と夫の姿を思っていた。
(我愛羅、守羅、愛花…ごめん。私、帰れない…)
意識を失った尚を、男が担ぎそのまま闇の中へと連れ去って行った。
「尚様、そろそろ里へ戻りましょう」
「はい」
必要な量を採り終え、尚が護衛に付き添う上忍三人とオアシスを出ようと踵を返す。
砂塵が吹き荒れる砂漠は視界が悪い。
たまに大きな砂嵐に遭遇しかねないため、あまり長居は出来ないのだ。
「尚様、お疲れではありませんか?」
「大丈夫です。ありがとう」
隣を掛けるくノ一の気遣いに笑顔を返すと、前にいた上忍の表情が曇り出した。
「ん、何だ?」
「どうした?」
「あれを見ろ」
「?」
前方に動く何かを見付けて、一行の足が止まる。
「何?あれ、動いてる?」
砂塵に阻まれて正体が見えない。四人が目を凝らしていると、その何かが突然巨大化した。
『!?』
――ゴアアアアアッ!!
巨大な竜巻、砂嵐だった。気付いた時には、全員が呑み込まれていた。
「何故、こんな突然にっ」
「ぐっ…くそっ前が見えん!!尚様!尚様を御守りしろ!!」
「尚様!どちらにおいでですか!?尚様ッ!!」
竜巻の中で、互いがどこにいるのかも分からない中で声を掛け合うが、嵐の中では届かない。
そして尚も、一人はぐれ、彷徨っていた。
「くっ…方向が、分からないっ」
マントのフードを深く被り、腕で防ぎながら進むが視界が開ける様子はない。
我愛羅から、砂嵐に遭遇した時の対処法は教わっているが、こうも大規模な砂嵐には対応しきれない。
(無闇に彷徨うのは体力を削る…せめて、風をやり過ごせる場所があれば…!)
頭の中の地形の地図を必死に思い出す。
大体の場所からして、近くに小さな遺跡があったはずだと、そこを目指す。
何とか遺跡まで辿り着き、その場に膝を着く。
「はぁ、はぁっ誰か、誰かいますかっ?」
護衛の三人が先に来ているかも知れないと、声を掛けるが、その声は空しく響くだけだった…。
「私しか、いないみたいね…」
体に付いた砂を払って腰を下ろす。
(あの三人なら大丈夫…私よりこういう環境に慣れているはず、心配するべきは私自身。
いつこの砂嵐が止むのか分からない以上、ここから動けない…)
荒れ狂う砂を見上げながら、尚は呟いた。
「夜までに帰るって、愛花と約束したのにな…」
その小さな呟きも、静かに空気に溶けて行った…
――カタンッ…!
「!」
遺跡の奥から聞こえた物音に、バッと立ち上がってマントの下で、腰に差した短刀の柄を握る。
臨戦態勢で、気配を探る。数秒の静寂が、奥から伸びて来た何かが切り裂かれた。
――ビュオッ!!
「っ!」
ガゴッ!と反射的に抜刀した刃で払う。
(この感覚…傀儡!)
長い尾のような物が、シュルリと奥の闇へ戻るとその闇から人影が現れた。ガタイの良い男だった。
「流石は風影の妻。一筋縄ではいかんか…」
ニイィっと笑う男に、尚の瞳が冷たく冴える。
「何が目的ですか」
構えたまま問うと、男は笑みを深めた。
「そりゃあ…アンタの命、それが無理なら捕えて、アンタの旦那を誘き出すかな?」
(反逆者、もしくは依頼を受けて我愛羅の命を狙う賞金稼ぎ…)
冷静に相手の正体にアタリをつけて、更に問う。
「この砂嵐は、あなたが?」
「ああ、そうさ。しばらくは止まないから、頼みの護衛も来ないぜ?」
得意げな男を前に、尚は怯まない。
(傀儡使いなら、接近戦は苦手…?
でも、接近戦に使える術を有しているかも知れないし、仕掛けてみようか…)
間合いを測っていると、足元の地面が割れた。
――ドオオオンッ!!
「っ!!」
反応が遅れ、地面から飛び出した傀儡の一撃を喰らってしまった。
「あああッ!」
傀儡とは思えない重い攻撃に、尚は壁の岩に体を打ち付けた。
――ドオンッ!!
「かはっ…!」
ドサッと地面に伏した尚の手から、短刀が擦り落ちる。
カラン…と軽い音が響く。
頭上で薄ら笑いを浮かべる男の足元で、尚は薄れる意識の中、愛する子供と夫の姿を思っていた。
(我愛羅、守羅、愛花…ごめん。私、帰れない…)
意識を失った尚を、男が担ぎそのまま闇の中へと連れ去って行った。