翌日。

昨日の一件を知らない守羅と愛花が、そっとリビングに入ると、盗み見るように朝食を取る我愛羅を見上げる。

「父さま…」

「父しゃま…」

「ん？ああ、お早う守羅、愛花」

『えっ？』

てっきり無表情で顔を背けられると思っていた二人、しかし帰って来たのは

以前の『大好きな父』の柔らかな笑顔だった。

混乱して母を見上げると、尚は若干泣き腫らした目を細めて微笑む。

「お父さんの記憶、戻ったんだよ」

『！！』

尚の一言に、守羅と愛花がもう一度、ばっと我愛羅を見上げると、

我愛羅が椅子から立ち上がって床に膝をついて両腕を広げる。

「おいで」

『～～～～ッうわああああんっ父さまあああ！！』

思い切り胸に飛び込んで来た二人を、我愛羅が受け止め抱き締める。

「寂しい思いをさせて、すまなかったな…」

「うああああんッ父さまあああ！！」

「うわああああんッ！！」

ボロボロと二人の瞳から溢れ出るのは、尚が流したのと同じ清泪石。

今まで気丈に振舞っていた分、溜まりに溜まった不安や恐怖が一気に爆発した。

二人が泣き止むまで、いつまでも我愛羅は二人の小さな体を抱き締めて頭を撫で続けた。

その様子を見ていた尚もまた涙が込み上げて来たが、何とか堪えて心のそこから安堵した。

待ち焦がれた日々が、戻って来た瞬間だった。

その日から数日、溜まり続けた仕事に追われてたが、何とか終わらせて、

我愛羅は尚と寝室でくつろいでいた。

「でも、何でナルトくんの頭突きで思い出したのかな？」

「元々、術者が死んで時間が経てば効力が薄れるものだったのかも知れん。
ナルトのアレはきっかけを作ったのだろうな…」

今にして思えば…と語る我愛羅に、尚はベットで横になる我愛羅に擦り寄る。

「もうこんなのは嫌だよ？」

「分かっている。もう心配無い」

そう言って尚にキスを落とすと、くすぐったそうに尚が身をよじる。

「だが、人の縁とは不思議なものだな」

「ん？」

我愛羅が真剣な表情で見詰めて来るので、尚は視線を泳がせてしまう。

「オレにはお前しか要らない。今までも、これからも…永劫にお前一人を愛していく」

「うん」

「付いて来てくれるか？こんなオレに…」

「もちろんだよ。嫌がってもまとわりついてやるんだから」

イタズラに笑う尚に、我愛羅はフッと笑う。

「心強いな。…尚、愛してる」

「私も、愛してる」

ごく自然のことの様にキスを交わす。それはふと、二人に結婚式の誓いのキスを思い出させた。

（きっとオレは）

（私は）

（何度でも、このヒトに恋をする…）

深い孤独に囚われた二人は、導かれる様に出逢い、惹かれ合い、恋をして、結ばれた。

信頼以上の固い絆は、この先も紡がれて行くだろう…

どんな『縁』よりも、強く、深く、『愛』という名で永遠に…。