最終話 『愛』
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「我愛羅、そろそろ休まないと…」
「………」
ぼぅっとしている我愛羅に、尚は昔の話をしたのはいけなかっただろうかと、不安に思い始めた頃、
急に我愛羅の顔つきが変わった。
「っ!」
神経を研ぎ澄まして、辺りを警戒する。
「どうしたの?」
「………」
黙って臨戦態勢に入る我愛羅。すると突然室内に人影が現れた。
――シュンッ!
「!」
「よぉ!」
金髪の男が陽気に手を挙げて我愛羅に笑い掛けるが、我愛羅は眉ひとつ動かさずにじっと男、ナルトを睨む。
「何者だ…」
「ナルトくんっ?」
尚が驚いて声を上げると、我愛羅は怪訝な顔で二人を見る。
「よっ姉ちゃん!さっき書状読んで、じっとしてらんねぇから来ちまった!」
「書状?」
「オレが出したんだ」
いつの間にか部屋に入っていたカンクロウが告げると、我愛羅はますます剣呑な視線をナルトに向ける。
「ホントに昔の我愛羅だな…下忍の、初めて会った頃のそのまんまだ」
どこか懐かしむ様な、寂し気なナルトに我愛羅は唸る。
「貴様など知らん。とっとと失せろ、さもなくば殺すぞ…」
「我愛羅!」
出て来ようとする尚を、ナルトが制すると、ナルトはゆっくりと声を掛ける。
「なぁ我愛羅、ホントに忘れちまったのか?自分のことも、家族のことも、
お前ってばスゲェ努力して風影にまでなったんだぞ?」
「くどい」
ゾアアアッと砂がナルトに襲い掛かるが、ナルトは軽くそれをかわす。
「ッ思い出せってばよ!じゃねぇと後悔すんのはお前だぞ!」
「貴様に、そんなことを言われる筋合いはない!」
狭い室内で攻防する二人から、カンクロウは尚を守りつつ様子を窺う。
「ずっと一人で生きて来て、やっと大切なものが見付かったって言ってたじゃねぇか!
これ以上、自分の嫁さんと子供を悲しませんなよッ!」
「ッ黙れ!!」
ナルトの言葉のひとつひとつに、頭を殴られるような痛みに教われて、
我愛羅は顔を歪めながら手をかざして砂を操る。
砂の波がナルトを覆おうとした時、あと一歩の所でナルトがかわし、
我愛羅の頭上に飛びあがると一気に急降下する。
「っんの!馬鹿野郎が!!」
――ゴッ!!
「!?」
砂が追い付く前に我愛羅の目の前に着地したナルトが我愛羅の胸元を掴み、
勢いそのままに痛烈な頭突きを繰り出した。
瞬間、我愛羅の全身に電撃に打たれたような衝撃が走り、脳内を様々な記憶が駆け抜けて行く…。
――『我愛羅!』
いつも頭の中で響いていた、温かな優しい声。
幼い頃、孤独の中で震えていたオレに最初に歩み寄ってくれたヒト…。
たくさんの愛情を注いでくれた。たくさんの幸せをくれた。生涯愛すると誓った。
オレに道を示してくれた。
オレを、信じて、愛してくれた。
オレに家族の温もりをくれた。
彼女の側でないと、生きていけない…オレの唯一無二の存在…。
ああ、何故忘れる事が出来たのか…オレは何と言うことをしてしまったんだ。
きっと傷付けただろう…悲しかっただろう…なのに、お前はオレの側にいてくれた。笑顔を向けてくれた…。
――尚…。
「っオレは、何を…?」
「我愛羅っ!」
膝をついた我愛羅の側に、尚が駆け寄って顔を覗き込む。
「我愛羅、大丈夫!?」
「尚…」
「…え、我愛羅?今…?」
久しぶりに呼ばれた名前に、尚が目を丸くしていると、腕を引かれて強く抱き締められた。
「っ尚、すまない!オレはっオレはお前に、お前達に酷いことを!許してくれ…っ」
「……が、我愛羅、思い出したの?術が解けたのっ!?」
「っああ、ただいま尚」
「~~~~~っ我愛羅!」
我愛羅の『ただいま』を聞いた途端に、尚の瞳からぶあっと清泪石が溢れだし、
我愛羅にしがみつくように抱き付く。
「我愛羅っ我愛羅~~!」
「すまない、心配掛けた…」
「全くだってばよ!」
「いっつも振り回されるこっちの身にもなれっての!」
やれやれと苦笑するナルトとカンクロウだが、その表情は、ほっと安堵していた。