最終話 『愛』
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「我愛羅、ちょっと一緒に散歩でも行かない?」
特に何をするでもなく、風影邸の屋上から街を見下ろす我愛羅に、尚が言うと、
我愛羅は無言でこちらを向いた。これは了承の意味だ。
ニコッと笑って、尚が歩き出す後ろを、我愛羅も着いて来る。
「お散歩って言っても、この建物の中なんだけどね。我愛羅に見せたい物があるんだ」
「………」
着いた先は、尚が管理する植物園。扉を開けると、色んな草花達が二人を出迎えた。
「これは…」
「ふふっすごいでしょ?この植物達、皆ここに自生してるんだよ?」
「自生…?砂の里に植物が自生するなど、ごく少数だろう?」
「私の生まれつきの能力で、この子たちは自生出来る様にしてるの。あ、ほらこっち来て我愛羅!」
小走りに奥へ進む尚の後を追うと、そこには薬草たちとは違う、鮮やかな花が咲いていた。
「…アデニウム」
ポツリと零す我愛羅に、尚が微笑する。
「あ、知ってる?砂漠の薔薇」
「そのぐらい知っている」
馬鹿にしてるのか、と言いたげな我愛羅に、尚はアデニウムの花をそっと撫でる。
「この花は、私にとっては特別な花なんだよ?」
「?」
嬉しそうな、それでいて悲しそうな瞳に、我愛羅は首を捻る。
「結婚式に、我愛羅が選んでくれたの…」
「!」
尚の言葉に、我愛羅がぴくっと反応する。
(オレが…?)
「結婚指輪にも、この花を掘ってるんだけど。『この花は何?』って聞いたら、
『今度見せてやる』って言って、式の当日まで内緒にしてて、
ヴェールにこの花を飾ってくれてた時はびっくりしたよ」
昔を馳せる尚に、我愛羅は切なくなる。それは、自分であって、自分では無いから…。
「我愛羅、ずっと一緒だよ?」
「何だ?」
突然の言葉に、我愛羅が意味が分からずにいると、尚は伏せ目がちに、微笑む。
「だって、約束したものね…小さい頃に、『大人になってもお互いの事を忘れないでいたら、結婚しよう』って
…ずっと一緒にいるって…」
「っ!」
――ツキンッと頭が痛くなる。
『ずっと一緒』『大人になったら』そんな会話を、確かにしていた。ずっと昔、確かに…。
『絶対だよ?忘れないでねっ?』
そう何度も、誰かに念を押した。何度も何度も…それは誰だった?
「っ…!」
フラリ…と額を抑えてふらつく我愛羅を、尚が支える。
「ごめんっ我愛羅!無理に思い出さなくて良いよ!ごめんねっ!」
「は、なせ…」
「え?」
「もっと、話せ。お前の知っている事を…っ」
「でも…」
「何でもいい…っ」
「…分かった。部屋に行こう」
我愛羅を支えて、尚は自分の部屋へ上がった。
我愛羅をリビングのソファーに座らせて、尚は部屋から数冊のアルバムを持って来た。
「これ、結婚したばかりの頃からのアルバム」
並んで座って、ページをめくって行く。
何気ない日常の写真や、旅行先での写真、守羅と愛花の成長を収めた写真…
さまざまな写真が収められていた。
「………」
どれも覚えのないはずなのに、妙に懐かしい。
「あ、ほらコレ!結婚式の写真」
尚が指さしたのは、純白のタキシード姿でドレス姿の尚を抱き上げて、
たくさんの人に囲まれながら幸せそうに笑っている自分の姿。
新婚旅行で撮った写真、子供達との思い出。
未来での自分がどれ程にこの家族を大切にしていたのか、今の我愛羅でも理解出来た。
ページをめくるにつれて、我愛羅の頭痛も激しくなるが、我愛羅は屈することなく自分の記憶を辿って行く。
「お前は、幸せなのか…?」
「どうして?」
弱々しい我愛羅の声に、尚は穏やかに返す。
「オレの過去を知らんわけではないだろう…数多くの命を手に掛けた血生臭い男を、
何故お前はそうも信じていられる…?まして、今のオレはお前達と他人も同然だろう」
「例え貴方が全てを忘れても、私は貴方から離れる気はないよ。私には、我愛羅でないと駄目だから…」
そう言うと尚は瞳を優しく細めた。
「我愛羅が、前に『お前以外を、もう女として見れない。それほどに焦がれて、想っている』って
言ってくれたのと同じ、私も…我愛羅以外のヒトを愛せないよ…」
『例えどんなに血にまみれても、側にいる』そう告げる尚に、一切の迷いも後悔も感じない。
一種の『依存』に近い二人。だがそこには確かな『愛』がある。
いつの間にか日が暮れて、我愛羅はぼんやりと部屋から夜空を見上げていた
特に何をするでもなく、風影邸の屋上から街を見下ろす我愛羅に、尚が言うと、
我愛羅は無言でこちらを向いた。これは了承の意味だ。
ニコッと笑って、尚が歩き出す後ろを、我愛羅も着いて来る。
「お散歩って言っても、この建物の中なんだけどね。我愛羅に見せたい物があるんだ」
「………」
着いた先は、尚が管理する植物園。扉を開けると、色んな草花達が二人を出迎えた。
「これは…」
「ふふっすごいでしょ?この植物達、皆ここに自生してるんだよ?」
「自生…?砂の里に植物が自生するなど、ごく少数だろう?」
「私の生まれつきの能力で、この子たちは自生出来る様にしてるの。あ、ほらこっち来て我愛羅!」
小走りに奥へ進む尚の後を追うと、そこには薬草たちとは違う、鮮やかな花が咲いていた。
「…アデニウム」
ポツリと零す我愛羅に、尚が微笑する。
「あ、知ってる?砂漠の薔薇」
「そのぐらい知っている」
馬鹿にしてるのか、と言いたげな我愛羅に、尚はアデニウムの花をそっと撫でる。
「この花は、私にとっては特別な花なんだよ?」
「?」
嬉しそうな、それでいて悲しそうな瞳に、我愛羅は首を捻る。
「結婚式に、我愛羅が選んでくれたの…」
「!」
尚の言葉に、我愛羅がぴくっと反応する。
(オレが…?)
「結婚指輪にも、この花を掘ってるんだけど。『この花は何?』って聞いたら、
『今度見せてやる』って言って、式の当日まで内緒にしてて、
ヴェールにこの花を飾ってくれてた時はびっくりしたよ」
昔を馳せる尚に、我愛羅は切なくなる。それは、自分であって、自分では無いから…。
「我愛羅、ずっと一緒だよ?」
「何だ?」
突然の言葉に、我愛羅が意味が分からずにいると、尚は伏せ目がちに、微笑む。
「だって、約束したものね…小さい頃に、『大人になってもお互いの事を忘れないでいたら、結婚しよう』って
…ずっと一緒にいるって…」
「っ!」
――ツキンッと頭が痛くなる。
『ずっと一緒』『大人になったら』そんな会話を、確かにしていた。ずっと昔、確かに…。
『絶対だよ?忘れないでねっ?』
そう何度も、誰かに念を押した。何度も何度も…それは誰だった?
「っ…!」
フラリ…と額を抑えてふらつく我愛羅を、尚が支える。
「ごめんっ我愛羅!無理に思い出さなくて良いよ!ごめんねっ!」
「は、なせ…」
「え?」
「もっと、話せ。お前の知っている事を…っ」
「でも…」
「何でもいい…っ」
「…分かった。部屋に行こう」
我愛羅を支えて、尚は自分の部屋へ上がった。
我愛羅をリビングのソファーに座らせて、尚は部屋から数冊のアルバムを持って来た。
「これ、結婚したばかりの頃からのアルバム」
並んで座って、ページをめくって行く。
何気ない日常の写真や、旅行先での写真、守羅と愛花の成長を収めた写真…
さまざまな写真が収められていた。
「………」
どれも覚えのないはずなのに、妙に懐かしい。
「あ、ほらコレ!結婚式の写真」
尚が指さしたのは、純白のタキシード姿でドレス姿の尚を抱き上げて、
たくさんの人に囲まれながら幸せそうに笑っている自分の姿。
新婚旅行で撮った写真、子供達との思い出。
未来での自分がどれ程にこの家族を大切にしていたのか、今の我愛羅でも理解出来た。
ページをめくるにつれて、我愛羅の頭痛も激しくなるが、我愛羅は屈することなく自分の記憶を辿って行く。
「お前は、幸せなのか…?」
「どうして?」
弱々しい我愛羅の声に、尚は穏やかに返す。
「オレの過去を知らんわけではないだろう…数多くの命を手に掛けた血生臭い男を、
何故お前はそうも信じていられる…?まして、今のオレはお前達と他人も同然だろう」
「例え貴方が全てを忘れても、私は貴方から離れる気はないよ。私には、我愛羅でないと駄目だから…」
そう言うと尚は瞳を優しく細めた。
「我愛羅が、前に『お前以外を、もう女として見れない。それほどに焦がれて、想っている』って
言ってくれたのと同じ、私も…我愛羅以外のヒトを愛せないよ…」
『例えどんなに血にまみれても、側にいる』そう告げる尚に、一切の迷いも後悔も感じない。
一種の『依存』に近い二人。だがそこには確かな『愛』がある。
いつの間にか日が暮れて、我愛羅はぼんやりと部屋から夜空を見上げていた