同時に口寄せされたガマ親分も時間となり、

煙となって消え、その衝撃でナルトと我愛羅が吹き飛ばされた。

「はぁ…はぁ、はぁ…っ」

「はっ…はぁ…流石にオレももう、空っぽだってばよ…お前もだろ？」

「はぁ…っはぁ…」

「お互い似た者同士、これで最後にしようぜ…！」

張り詰める空気が二人を包む。そして、ガマ親分のドスが消えた音を合図に、

二人が同時に飛び出し、拳を振り上げる。

――バキィッ！！

ナルトの拳が我愛羅にめり込む。二人はそのまま森の中へ落ちていった…。

ドサッ！

「ぐっ…！」

「うっ…！」

地面に叩き付けられ、お互いに起き上がることも出来ない。

「はぁ…は…」

ナルトは少しづつ、地を這って我愛羅に近づく。我愛羅は近づいて来るナルトを睨む。

（何故、こいつはこれほどに強い…！？）

勝ち続けることが自分の存在を確かなものにする。なら、今ナルトに敗れた自分は何なのか。

我愛羅は顔を歪め、歯を食いしばる。

「っ…！」

（オレの存在は消えない！消えないっ！消えてたまるかっ！！）

「くっ…う…！」

ナルトは地を這いながら、自分の過去を思い出し、我愛羅の言葉を思い出していた。

『奴らにとって消し去りたい過去の遺物だ。…では、オレはなんのために存在し、生きているのか…！』

そして、波の国で戦った少年…ハクの言葉も。

『自分のことをこう思った、いや…そう思わざるを得なかった。そして、それが一番辛いことだと知った…』

『自分がこの世に、まるで必要とされない存在だということです…』

目前に迫るナルトに、我愛羅が叫ぶ。

「く、来るな…！」

「っ…独りぼっちの、苦しみは…半端じゃねぇよな」

「！！」

ナルトの言葉に、我愛羅が目を見開く。

「お前の気持ちは、なんでかなぁ…痛いほど分かるんだってばよ…」

胸が抉られるような、孤独の痛み。ナルトもよく知っていた…。

だからこそ、復讐と殺意に駆られた我愛羅の気持ちも理解できる。

ナルトの目には、深い悲しみが浮かんでいた。

「だけどオレにはもう、大切な人達が出来たんだ…！」

もう、前進する力も尽きたナルトだが、その目はまだ闘志を宿していた。

「オレの、大切な人達…傷付けさせねぇ！
…でなきゃ、お前殺してでも、オレはお前を止めるぞ…っ！」

「なんで…なんでお前は他人のためにここまでっ…！」

「…独りぼっちの、あの地獄から救ってくれた！
オレの存在を認めてくれた！大切な、皆だから…！」

「………」

ナルトの言葉に、我愛羅は空を仰ぐ。そこに夜叉丸の姿が浮かんだ。

『愛情は、自分の身近にいる大切な人に尽くしてあげたいと、慈しみ、見守る心…』

（愛情…）

次に浮かんだのは、優しく微笑む尚の姿…。

『たとえ姿が見えなくても、声が届かなくても、私はいつも我愛羅を想っています…』

（尚…。だからこいつは強いのか…）

一度断ち切った誰かとの繋がり、もしも今もそれを諦めずにいれば、

今の自分は違っていたのだろうか…。

我愛羅がそう考えていると、サスケがサクラを捕えていた砂がなくなったことをナルトに告げた。