狂花の呪縛 前篇
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夜が明けて、我愛羅はすぐに数人の忍に孔明を追わせたが、
捕らえることは出来なかった。
「………」
表情こそ冷静だが、我愛羅は内心、今すぐにでも飛び出して行きたい衝動を抑えていた。
「我愛羅!分かったぞ、あの孔明とかいう男の素性が!」
「!話してくれ」
部屋に入ってきたテマリが、孔明の詳細を語りだした。
「砂と木の葉の間にある小国の領主の息子で、
呪術の開発に長けた国で、孔明はその中でもかなりの使い手らしい。
我愛羅の砂がすり抜けたのは恐らく灼遁を併用した蜃気楼を使ったんだろう。
幻術と似ているが少し違うな…」
「なんにしろ、事は一刻を争う。すぐに出立するぞ」
「待て!お前自ら出向く気か!?」
「当然だ」
「捜査に向かわせた奴らの報告を待て!迂闊に動くのは危険だ」
「残念だが、それは無理じゃん」
「カンクロウ…」
部屋に入ってきたカンクロウが、神妙な面持ちで捜査に出た忍達が返り討ちにされて、
満身創痍で帰って来たと知らされ、テマリも我愛羅も顔を歪めた。
「行くしかないな」
「…仕方ないな」
「行くぞ」
我愛羅の砂に乗って、三人は尚が捕えられている小国へ急いだ。
砂と木の葉の間にある小国。
孔明の屋敷では、結婚式の準備が着々と進んでいた。
「孔明様、尚様の支度が整いました」
「そうか」
婚礼衣装に身を包んだ孔明が、側近の老婆に視線を向けると、老婆は一礼して去って行った。
一方、尚は漆黒のウェディングドレスを着て鏡の前に立っていた。
屋敷に着くなり、孔明に薬を飲まされ体の自由が利かない。
何故か孔明の言葉にだけ従わされる。
(どうしよう…このままじゃ私、あの人と…逃げたいのに体が動かないし…)
何で自分はこうも災難にみまわれるのか、我愛羅達と想いが通じたと思った矢先にこれだ。
「はぁ…」
重い溜め息が零れる。
この人形のように自由の利かない体は、大きな姿見の前から動いてくれない。
(新婦のウェディングドレスが黒一色って、趣味悪い…)
漆黒のドレスにヴェール、そして首と手足にいつも通りに嵌る枷が重い…。
(我愛羅達、怪我してないかな…)
去り際に見た壁に押し付けられる我愛羅達の姿に胸が痛む。
(我愛羅…)
「尚、行こうか」
扉が開き、孔明が手を差し出すと、尚の手が、足が、勝手に孔明の方へ向く。
「とても綺麗だよ、さぁ二人で幸せになろう」
孔明と腕を組んで歩き出す。
その間も尚の心は重く暗い。想うのはただ一人、我愛羅の姿…。