「尚」

朝、温かい日差しが差し込む中で

我愛羅の腕に抱かれて目覚めるのが習慣になりつつある。

「おはよ、我愛羅」

「おはよう」

さらっ…と我愛羅が尚の髪を梳いて、尚はそんな我愛羅を見上げて微笑み、

我愛羅もそれに幸せそうに微笑みを返して尚の額へキスを落とす。






微睡みの中で、二人が甘い時間を過ごしていた時、

砂の里から少し離れた岩の高台から里の方向へ手をかざす男が、口角を上げる。

「見付けたよ、尚…」

男の手の平には、花をかたどった模様があり、

その花が何かに反応して光を帯びている。

黒いマントに身を包んだ男が、ゆっくりと、里へ足を踏み入れて行った…。






「ぷはぁ…！尚の料理はいつも美味いじゃん！」

「ホントにな、尚の作った料理を食べるとホッとするよ」

「美味かった」

四人で夕飯を楽しんで談笑する。尚

は食器を洗いながら照れ笑いを浮かべた。

「ありがとう、皆いっぱい食べてくれるから作り甲斐があるよ」

「カンクロウは食い過ぎだがな」

「太るぞ」

「テマリも我愛羅も人の事言えんのかよ？」

「私はお前ほど食べてないからな」

「オレもだ」

「どーだか」

三姉弟の会話を聞きながら、洗い物を終える。

テマリとカンクロウが自室へ戻って、尚も我愛羅と寛いでいた。

読書をする尚を、我愛羅が背後から抱き締める。

「ふふふっ何？我愛羅、くすぐったいよ」

「尚…」

「もう…」

首筋に擦り寄る我愛羅の髪を梳きながら、

尚は我愛羅に軽く頭を乗せる。

――ズキンッ

「っ！」

「どうした？」

ぴくんっと動いた肩から、我愛羅が顔を上げると、

尚が若干眉間にシワを寄せていた。

「尚？」

心配になって顔を覗き込むと、尚の額から汗が滲んできた。

「ん…っごめん我愛羅、何だか胸が…」

苦悶の表情で胸元を握りしめる尚の前へ我愛羅が回り込んで、

ソファーに座る尚の側に床に膝をつく。

「見せてみろ」

「え？…あっ」

言うと同時に、我愛羅が尚の胸元を開くと、

そこには歪な花の模様があった。しかも、微かに光を帯びている。

「何だ、これは…？」

「っ………」

胸の花を見た途端に、尚が顔を強張らせた。

（まさか…！）

尚の脳裏に、一人の男の顔がよぎり、

同時に花の模様の光が強くなり急に痛みも増した。