里に帰還し、医療班に尚の診察を頼むと、

医者は尚の状態に目を見開いた。

「ここまで衰弱していて、命があるのは奇跡です。早急に入院していただかないと！」

出来る限りの治療を施され、尚の腕に点滴がつけられる。

あれから数日、尚は一度も目を覚まさない。

我愛羅は時間が出来れば病室へ出向き、尚の手を握って語り掛ける。

「尚、今日もいい天気だぞ。
テマリもカンクロウも、お前を心配してる…早く起きてくれ」

静かに眠る尚に、我愛羅は不安に駆られる。

（このまま、目覚めないのではないか…？）

はっとして、すぐにその考えを打ち消すように頭を振る。

（諦めるな！何か方法があるはずだ…オレが弱気になってどうする！）

我愛羅は仕事の合間に医療に関しての資料を読み漁って、なんとか尚を回復出来ないものかと、

木の葉の火影である綱手にも連絡を入れ、自分が出来る限り尽力した。

砂の里の医療班も、必死に試行錯誤している。そんな中、一つの方法が提案された。

「チャクラによる細胞の活性？」

我愛羅は医療班のトップの男に呼ばれた。その男が言うには、

大量のチャクラを患者の体内へ流し込み、

一気に細胞を活性化させれば、意識が戻る可能性がある。というものだ。

「はい、ただし問題が…」

「何だ？」

「この治療に用いられるチャクラは、かなりの量が必要で、
上忍や暗部であっても持ち堪えられるかどうか…
逆に治療の最中にチャクラが尽きてしまう危険性が考えられます。
余程チャクラを多く持っている者がいなければ…」

男の話に、我愛羅はしばらく思案して顔を上げた。

「オレのチャクラを使えばどうなる？」

「え？風影様の、チャクラを…ですか？」

「仮にオレのチャクラを使ったら、あいつの容体は回復するのか？」

まさか我愛羅が名乗りを上げるとは思わなかった男が、少しどもりながら。

「え、ええ…それは。風影様のチャクラなら、量も十分でしょうし…かなりの回復が見込めると思いますが…」

男の返答に、我愛羅がほっと息をつく。

「なら、オレのチャクラを使ってくれ」

「は、はい…承知しました」

意思の強い瞳の圧におされ、男はあっけにとられたまま返事をしていた。

チャクラによる治療は、翌日に行われることになった。