その日は先生が体調を崩していて、私は少し孤児院から離れた森まで、風邪に効く木の実を取りに行っていた。

院内で風邪が流行りだして、年下の子たちも数名寝込んでいたので、

その子たちの分もと時間を忘れて摘んでいると、いつの間にか日が暮れていた。

「うわぁ…暗くなっちゃった！先生に怒られるっ　はやく帰らないと！」

小さめの籠に、木の実をいっぱいに詰めて帰路を急ぐ。

（これを食べたら、先生も皆も元気になるよね！）

息を切らせながら走っていると、段々院の方角の空が明るいことに気付いた。

「？」

（あの赤いの…なんだろう？）

視界が開けた場所について、目に飛び込んで来たのは、業火に包まれる孤児院と、

その門の目に倒れている子供達の姿だった…。

「―――ッ！？」

――ドサッ！

木の実の入った籠が腕からすり抜け、地面に落ちる。

あまりに衝撃的過ぎて、私は数秒固まっていた。

（っそうだ！先生！…先生は！？）

辺りには子供たちと数名の他の先生たちの亡骸があったが、先生の姿が見当たらない。

私は混乱しながら、院の裏に走った。

そして見付けた。血にまみれながら、微かに息のある大好きな人を…。

「先生っ！」

「うっ…尚ちゃん、良かった…無事だったのね…」

先生の側へ駆け寄ると、先生は力なく微笑んだ。

「な、何があったの？なんで孤児院が燃えてるの？なんでっ皆…死んでるの！？」

私の言葉に、先生は一瞬顔を歪めたが、すぐに真剣な顔つきになって私に言った。

「尚ちゃん、逃げなさい」

「え…？」

先生の言った事が、理解できなかった。