「尚ちゃん。貴女は化け物でも、捨てられたわけでもないの…
貴女はお母さんとお父さんに、ちゃんと愛されて、望まれて産まれた子」

私の肩に先生が手を置いて、優しい瞳で言った。

「貴女が産まれるのを、お父さんがどれほど喜んでいたか…
貴女を独り残していく二人が、どんなに辛かったか…！
先生には分かるわ。だからこそ自分の中に流れる血を、その能力（チカラ）を誇りなさい。
そして、お母さんたちの夢を叶えるのよ」

「お母さんたちの、夢…？」

首を傾げる私に、先生は涙を浮かべて頷いた。

「尚ちゃんが、幸せになる事よ」

「幸せ？　どうすればいいの？」

「どんなに辛い時間が続いても、決して諦めない事、そして…人の心の痛みが分かる優しい人である事。
そうあり続ければ、いつか尚ちゃんだけを愛してくれる人が現れるわ…」

「私だけを…ほんとうに？　そんな人いるかな…？」

「大丈夫、自信を持って！尚ちゃんはとても優しい子よ？
先生は知ってるわ、尚ちゃんは小さい子たちの面倒も進んで見てくれるし、動物やお花にだって優しい！
尚ちゃんのそうゆうところ、先生大好きよ！」

「えへへ…」

嬉しいのと照れ臭いのとで顔が熱いけど、先生に大丈夫だと、好きだと言われると頑張れる気がした…。

私は、先生の様な優しく、温かい、強い女性になりたいと思った。

そんな矢先のこと…あの『悪夢の夜』が来たんだ。