「うん。だって、死んじゃうわけじゃないし、二人が大きくなって強い忍になれば、
私の居る里にお仕事に来るかも知れない。その時はまた会いたいな」

いつも通りの優しい尚に、二人は涙を堪える。

「じゃあ、その時までに…私はせったいに強くなる！」

「オレも！ぜってー尚をびっくりさせえてやるからな！」

「うん！」

（この子たちは、本当に強くなるんだろうな…）

幼い姉弟の将来の可能性に、尚は心からエールを送るのだった。


つい最近、尚は我愛羅の暴走を目の当たりにした。

深い眠りについた我愛羅の隙をついて、守鶴が暴れ出したのだ。

我愛羅は精神と肉体の半分を乗っ取られ、尚が側へ駆け寄ろうとするのを、羅砂に止められた。

だが、羅砂の制止を振り切って、尚が身を挺して我愛羅を正気に戻したことで、事態は収拾した。

守鶴の手に囚われて軽傷を負ったが、生活に支障はなかった。

代わりに我愛羅が、尚を手に掛けようとしたことを気に病んで部屋に引きこもってしまった方が、尚は困った。

その後、なんとか説得していつも通りに過ごしている。

そして今、尚は守鶴のもとへ訪れていた。

「よく自分を殺そうとした奴の前に来る気になったな…」

「あの時、アナタ本気で私を殺す気なかったでしょう？
私が本当に、どんな状況になっても態度を変えないか試したんでしょうけど、アレはやり過ぎだよ。
アナタが良くても、あれじゃ我愛羅がますます皆から避けられちゃうじゃないの」

「はっ！知るかよ」

「もう、意地悪な狸さんね…」

今までも尚は何度も守鶴のもとを訪れている。

守鶴はいつもと違う尚に眉を顰めた。

「お前、いつもの威勢はどうした？　なんか暗ぇぞ」

「あれ、心配してくれるんだ？」

「誤魔化すな。オレ様に嘘は通じねぇぞ」

「…そうだね。私、もうすぐ里を出ていくの」

「！」

尚の言葉に、守鶴は耳をピクッと動かす。

「上役のジジババ共の仕業か…」

「鋭いね守鶴」

「まぁな」

しばらく、沈黙が二人を包む…。