我愛羅SIDE

今日も他の子たちに話し掛けられなかった…どうしても勇気が出ない。

黄昏に染まる広場で、独りブランコに座る。

「ユウくーん？」

「あ！おかあさん！」

ボール遊びをしていた一人が、母親に駆け寄って抱き付く。

その子の頭を撫でながら、母親が優しく微笑んだ。

「さぁご飯よ。帰りましょう？」

「はーい！」

ばいばーいっと次々に、他の子たちも親に手を引かれて帰って行く…。

「今日のご飯なぁにー？」

「今日はユウ君の好きなものよ？」

「ほんと！？やったー！」

「………」

羨ましくて、途端に寂しくなって俯く。

ボクの母様は、ボクを産んですぐに死んじゃったから、お母さんと一緒にいられる子が純粋に羨ましい。

広場から自分以外いなくなる…皆、帰って行く。

ボクに背を向けて、遠ざかっていく…誰もボクを見ない。気にも留めない…

寂しさに呑まれそうになった時、声が響いた。

「我愛羅ー？」

「っ！」

弾かれたように顔を上げると、親子たちの視線を浴びながら、堂々とこちらに歩いてくる尚がいた。

ひそひそと、『誰あれ？』『あの我愛羅に近付いて行くわよ？』という親子たちの声に怯みもせず、

尚はボクを見付けて笑顔を浮かべた。

尚の周りから、皆が退いて道が出来た…。

「いたいた！我愛羅ー！」

「尚…」

尚はボクの前まで来ると、手を差し出した。

「帰ろう我愛羅、ご飯だよ？」

「っうん！」

ブランコから飛び降りて、尚の手を握る。

（あったかい…）

周りの親子たちが、信じられないものを見る視線も、ボクはぜんぜん怖くなかった。

隣で尚が笑っててくれるから。

「我愛羅　今日はご機嫌だね。良い事あったの？」

「えへへー　ないしょ！」

「えー？　教えてよー」

「だーめ！」

尚と手を繋いで帰路につく。

「尚ー今日のご飯なに？」

「ん？我愛羅の好きな砂肝だよ」

「ほんと！？わーいっ早く帰ろ！」

「我愛羅、走ると転ぶよ？」

「へーきへーき！はやくはやくー！」

「ふふっはいはい　待ってよー」

尚を引っ張って走るボクの心には、いつの間にか寂しさは無くなっていた。

（母様がいたら　こんな感じなのかな…）