「二人は、我愛羅が怖い？」

二人が頷く。

「どうして怖いの？」

「だって、守鶴が憑りついてるし…」

「砂が勝手に我愛羅を守るし、オヤジだってあいつはオレたちとは違うって言ってたし…」

「うん、でもね…それは我愛羅が怖いんじゃなくて、守鶴が怖いんだよね？
我愛羅は怖い子じゃないよ。すごく優しくて、いつも寂しい思いをしてる。
だから私は、我愛羅に寂しい思いをしてほしくないから、側にいるの…」

「それなら夜叉丸がいるじゃん！」

「夜叉丸さんは男の人だからね、女の人しかあげられない優しさがあるんだよ」

「なんだよそれ…」

カンクロウにはいまいち分からないらしいが、テマリには何となく理解できるものがあったのか、

口を出さなかった。

「そもそも、どうして我愛羅に守鶴が宿されたんだと思う？」

尚の言葉に、二人は困惑した。

「どうしてって…」

「我愛羅じゃないといけない理由があるのかな？」

問い掛ける声は優しいのに、その表情はどんどんと悲しみを増していく。

そんな尚に二人は固まるしかなかった。

「だって、最初に生まれたテマリちゃんでも可笑しくないよね？同じ『風影の子供』なんだから」

「！」

「女の子だから選ばれなかったんなら、最初の男の子だったカンクロウ君でも良かったはずだよね？」

「っ！」

尚の語る『可能性』に幼い二人の背筋が凍る。『自分が人柱力になっていたかも知れない』

そんな　あったかも知れない話。

「たまたま我愛羅が守鶴と同調出来ただけ。
もし二人が今の我愛羅と同じ人柱力だったら、二人は耐えられる？」

里の全員からの冷たい視線。

誰とも友達になれず、家族からも怖がられて、夜は満足に眠ることさえ許されない…。

そんな終わりの無い悪夢のような、永遠の地獄のような、孤独な日々を…。

「私なら、耐えられない…とても我愛羅のようには出来ないよ。
でも我愛羅はあんなに小さい体で耐えているなんて、スゴイよね…」

『………』

俯く二人の頭を、尚は優しく撫でる。

「今は怖くても、少しずつ我愛羅と仲良くなってあげて？二人は我愛羅のお兄ちゃんとお姉ちゃんなんだから…
いつか大きくなった時、『仲の良い三姉弟』であってほしいなぁ」

『じゃあ、おやすみ』そういって、尚は部屋へ戻って行った。

「我愛羅となかよくなんて、そんなんムリじゃん…なぁ？テマリ」

「………」

テマリは尚に、ある人の面影を見ていた。

（まるで、母さんみたいだ…）

今は亡き、大好きな母の面影を…。