「守鶴、他の誰を嫌っても良いから、我愛羅とはすぐには無理でも、仲良くしてあげてくれない？」

「あ？」

里の為にと、守鶴を宿され、母を失い、里の者達からは『化け物』と恐れられ、

友達も出来ずに孤独な日々を送る我愛羅。

長い間、人間の都合に振り回され、宿主を転々と変えられて『兵器』として

その大きなチャクラを利用され続ける守鶴。

『人間』に対しての不信感と疑心。

その半面で、『自分を理解してくれる誰か』を求めている二人。

孤独の痛みを知る者同士。分かり合えるはずだと尚は考えていた。

「人でも獣でも、喜びも悲しみも…痛みも分かる心があるのなら、種族にこだわる必要なんて無いはずよ？」

「！！」

『そもそも人間と獣…それらを分ける必要は無いのです』

（分福（ぶんぷく）…）

かつて、唯一自分を受け入れてくれた僧侶の人柱力の言葉が、姿が、尚と重なる。

「分かろうとしないと、分かってもらえない。愛そうとしないと、愛されないんだよ。守鶴…」

『人の心とは水鏡…本心とは裏腹に口を開き、揺れ動くものです。
ですが、元来人間の持つ『裏の心』は『受け入れ合う』ことを望んでいるのです…獣ともです』

「………」

この人間は本気で言っているのかも知れない。

だけど…と、長く人間に服従を強制されて来た守鶴は、簡単には尚の言葉を信用出来なかった。

「また来るね」

そう言って、尚は帰って行った。

守鶴の心に、小さな波紋を残して…。