『尾獣』

一から九本の尾を持つ魔獣の総称。強大なチャクラを持ち、災いの源とされる存在。

そして人間達は、尾獣の力を手に入れるために、人体の中に尾獣を宿し、コントロールしようと考え、

宿主を『人柱力』（じんちゅうりき）と呼んだ。

『尾獣』と『人柱力』の関係はお互いを己に『服従』『支配』させようとするもの。

『尾獣』を完全に制御した者は、莫大なチャクラを得るが、

反対に支配されれば暴走する危険性がある危うい存在である。

長い歴史に渡り、『尾獣』は人間の戦争のための道具になり、平和のための抑止力とされて来た…。




夜叉丸に我愛羅に宿されている、尾獣について教わる尚。

「………」

「我愛羅様に宿されているのは『一尾』と呼ばれる砂の化身です。
我愛羅様が眠りにつくと、人格を乗っ取ろうとするので、我愛羅様はご幼少の頃から不眠病で…」

「だから、目の下にあんなに隈があるんですね…」

尚の言葉に夜叉丸が頷く。

尚は話を冷静に聞きながら、内心では嘲りの笑みを浮かべていた。

（誰かの都合に振り回されて、利用され続ける存在の気持ちなんて、
考えた事も聞こうとしたこともないんでしょうね…貴方達は）

「お互いが、分かり合える事は…ないんでしょうか？」

尚の提案に、夜叉丸はぎょっとした。

「そ、そんな事は不可能です！守鶴に、尾獣に言葉など通じません！まして心を通わせるなどっ…！」

夜叉丸の反応に、尚は失望した。

彼も、決めつけるのか…と。

「…そうですか、やっぱり貴方も、そう言うんですね」

「え？」

ガタリと席を立つ尚を、唖然と見つめる夜叉丸に尚は我愛羅の寝室へ向かって歩き出す。

途中、足を止めて振り返った尚は、ひどく悲しい顔をして静かに言った。

「利用され続ける『化け物』の気持ち…貴方達には、分からないんでしょうね…」

「………」

そう言い残して、尚は寝室へと消えた。

夜叉丸の心には、疑問符ばかりが浮かぶのだった。

（彼女は、誰の事を言っていたんだ…？）

『やっぱり、"貴方も"、そう言うんですね…』

『"貴方達には"、分からないんでしょうね…』

自分と誰かを指した言い方だったが、夜叉丸には尚の言葉の真意を知る術は無かった…。